働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

岸田内閣支持率下落と労働基準法見直し(改正)の関係性?

2023年12月16日 | 労働基準法改正
岸田内閣支持率下落で岸田政権は存続できるのか?
FNNプライムオンライン(2023年12月15日配信)が「週末に行われたFNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞の合同世論調査で『青木率』が50%を切った。『青木率とは青木幹雄元官房長官が唱えたとされる指標で、内閣支持率と政党支持率を足した数が50を切ると「その政権は倒れる」という恐ろしい数字だ。しかしまだその先があった。14日に出た時事通信の調査では内閣支持率が4.2ポイント下落して17.1%となり、ついに各社のトップを切って10%台に突入したのだ」と報じた。

内閣支持率はついに10%台に突入!「火の玉」ならぬ「火だるま」の岸田おろしはいつ始まるのか(FNNプライムオンライン)

来年(2024年)は働き方改革関連法(改正労働基準法を含む)施行後5年になり、働き方改革関連法(改正労働基準法を含む)の見直しの年となっている。厚生労働省は働き方改革関連法見直しに併せて労働基準法など労働法を見直し改正法案を国会に提出しようとする方針。

しかし、自民党政権が不安定だと、与野党対立法案になる働き方改革関連法や労働基準法の見直し(改正)議論は表立ってはしずらくなる。そのため今、厚生労働省労働基準局などは沈黙(?)しているように思える。

労働法政策における岸田政権(宏池会)と安倍政権(清和会)との違い
厚生労働省労働基準局が少しためらっているように思える理由は、労働法政策における岸田政権(宏池会)と安倍政権(清和会)との違いにあると(勝手に)推測する。

安倍政権では経営側の「経団連」一辺倒で経団連方針に基づいて労働法政策が動いていたように思えた。その中心が内閣総理大臣諮問機関「規制改革推進会議」での議論と結論だった。しかし、岸田政権では労働側の「連合」会長も委員として参加している内閣総理大臣諮問機関「新しい資本主義実現会議」の議論と結論が、労働法政策の中心となっている。

なお、労働法政策にかかわるワーキンググループ名称は規制改革推進会議では「働き方・人への投資ワーキンググループ」になる。

規制改革推進会議 働き方・人への投資ワーキング・グループ(働き方改革関連法ノート)

また、新しい資本主義実現会議における労働法政策にかかわるワーキンググループ名称は「三位一体労働市場改革分科会」になる。

職務給・ジョブ型人事 指針策定へ(新しい資本主義実現会議分科会)(働き方改革関連法ノート)

経営側「経団連」の労働同基準法見直し要望
経団連が今年(2023年)9月12日に公表した2023年度規制改革要望(日本経済にダイナミズムを取り戻す)には副業・兼業の推進に向けた割増賃金規制の見直しが要望の一項目となっている。

「現行法では、本業と副業・兼業の労働時間が通算される。そのため、例えば本業の所定労働時間が1日8時間、週40時間の場合、副業先における就労のすべての時間に割増賃金が発生する等の事象が多く発生する。これは、副業・兼業先にとって重い負担となり、国全体として副業・兼業を推進するうえでの大きなハードルとなっている。また、副業に従事している社員からも、割増賃金が適用されることで副業先の他の社員に気を遣ってしまうなどの声がある。

割増賃金規制は、法定労働時間制または週休制の原則を確保するとともに、長時間労働に対して労働者に補償する趣旨であるが、本人が自発的に行う副業・兼業について適用することはそもそもなじまない。

そこで、真に自発的な本人同意があり、かつ管理モデル等を用いた時間外労働の上限規制内の労働時間の設定や一定の労働時間を超えた場合の面接指導、その他健康確保措置等を適切に行っている場合においては、副業・兼業を行う労働者の割増賃金を計算するにあたって、本業と副業・兼業それぞれの事業場での労働時間を通算しないこととすべきである。

これにより、副業・兼業が促進され、働き手の主体的なキャリア形成や企業の多様な人材の確保などにつながることが期待される」(経団連『2023年度規制改革要望』より)。

副業・兼業の労働時間通算見直し(経団連と規制改革推進会議)(働き方改革関連法ノート)

労働側「連合」の労働者性判断基準見直し要望
新しい資本主義実現会議(第23回)議事要旨によると、芳野連合会長は「連合はこれまで文化芸能芸術分野で活躍されているフリーランスの方々と意見交換を重ね、課題の把握に努めてきた。コンテンツ産業に限らず、多くのフリーランスは発注者に対し弱い立場にあり、長時間にわたる就業時間の削減をはじめとする環境整備や報酬の引上げが重要課題となっている。来年(2024年)施行予定のフリーランス新法は、フリーランスの契約適正化には一定程度の効果が見込まれるが、フリーランス保護策についてはさらなる施策の強化が求められる」と発言している。

また、芳野連合会長は「特に1985年以降改正がなされていない『労働者性の判断基準』を見直し、労働者の範囲を拡大することは、この業界を含め、請負契約で働く者の保護に必要不可欠である。あわせて、コンテンツ産業だけでなく、日本で就業・就労しているフリーランスや労働者が公正に適正に評価され、安定した就業環境と創造性を発揮しやすくする場をつくる必要があり、政府にはこうした支援策を強化していただきたい」と述べている。

このように芳野連合会長は、労働者性の判断基準を見直して労働者の範囲を拡大すること、つまり労働基準法などの労働法における労働者定義の拡大を政府に求めている。

労働者範囲拡大を連合会長は求めたが岸田首相は無視(働き方改革関連法ノート)

労働基準法見直し(改正)に向けた厚生労働省方針
厚生労働省は「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書を2023年10月20日に公表している。

この報告書の「労働基準法制における基本的概念が実情に合っているかの確認」(報告書20頁)には、 労働基準法は「事業または事務所に使用され、賃金の支払いを受ける労働者を対象とし」「労働者が働く場である事業場を単位として規制を適用することで、労働者を保護する法的効果を発揮してきた」が、「一方で、変化する経済社会の中で、フリーランスなどの個人事業主の中には、業務に関する指示や働き方が労働者として働く人と類似している者もみられること、リモートワークが急速に広がるとともに、オフィスによらない事業を行う事業者が出現してきていることなどから、事業場単位で捉えきれない労働者が増加していることなどを考慮すると、『労働者』『事業』『事業場』等の労働基準法制における基本的概念についても、経済社会の変化に応じて在り方を考えていくことが必要である」と記載されている。

そして、この報告書が2023年11月13日に開催された労働政策審議会(労政審)労働条件分科会において(報告事項として)議題となったが、その内容については(育児休業給付金等を審議した労働政策審議会(労政審)職業安定分科会雇用保険部会と重なったためか)アドバンスニュースを除いて(私の調べた範囲では)」報道されることはなかった。

労基法見直し検討、年度内に「新たな研究会」設置 労政審労働条件分科会(アドバンスニュース)

アドバンスニュースには「多様化する働き方に対応した労働基準法の見直しを検討するため、厚生労働省は年度内(2024年3月末まで)に法務の学識経験者らによる研究会を設置する」と、また労働基準法見直しの方向性は「『新しい時代の働き方に関する研究会』の報告書を踏まえた動きで、次は具体的な法制度のあり方を含めて検討を進める」と記載されている。

そして厚生労働省は「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書の概要と要所に触れた後、「大きな方向性と考え方を示したもので具体的な法制度には言及していない。来年(2024年)、働き方改革関連法の施行5年の見直しのタイミングでもあり、より具体的な法制度を含めた研究を進めなければならない」と説明した、とアドバンスニュースは報じている。

労働基準法見直しのため厚生労働省が新たな研究会設置(働き方改革関連法ノート)


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