働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

働き方改革関連法 時間外・休日労働指針議論

2018年08月12日 | 働き方改革関連法
働き方改革関連(一括)法案が2018年4月6日に国会に上程され、6月29日に可決成立、7月6日に公布されました。しかし、働き方改革関連法は省令や指針に委ねられている箇所が多く、具体的な内容については未だ明確ではないとも言い得ます。

2018年7月10日と18日に開かれた厚生労働省の労働政策審議会・労働条件分科会は、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について」が議題となりましたが、これは働き方改革関連法の政令・省令・指針案を審議するということです。この審議は今後も続けられることになります。

労働政策審議会・労働条件分科会の議論
まず、7月10日に開かれた厚生労働省の労働政策審議会・労働条件分科会では、働き方改革関連法の政令・省令・指針案について、石橋みちひろ議員のホームページに記載された議員秘書報告によると「総論的なやり取り」がなされたそうです。また同報告には、18日からは「長時間労働規制を中心に、個々の項目についての議論が始まりました。」と記載されています。

なお、全国社会保険労務士連合会は、7月18日に開かれた厚生労働省の労働政策審議会・労働条件分科会は「働き方改革関連法の省令等を議題にして時間外労働の上限規制等にかかる省令案の審議し、原則の限度時間を超えて就業した労働者に対して実施する健康確保措置は、指針で例示された内容をもとに36協定で定めることなどが確認されました」とツイッターで審議内容を報告しています。

時間外労働に関する新たな指針の策定
働き方改革関連法(新労働基準法36条7項)によると、厚生労働大臣は時間外労働に関する新たな指針を策定することになっていますが、この指針には時間外・休日労働の抑制に関する努力義務、36協定で定める健康確保措置などを規定することになっています。7月18日の労働条件分科会の配布資料には、次のように記載されています。

条文
<新労働基準法>第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代 表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条に おいて「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

平成29年建議1(1)(3)
・(略)。併せて、省令で定める協定の様式において1年間の上限適用する期間の起算点を明確化することが適当である。
・また、36協定の必要的記載事項として、原則の上限を超えて労働した労働者に講ずる健康確保措置を定めなければならないことを 省令に位置づけたうえで、当該健康確保措置として望ましい内容を指針に規定することが適当である。

健康確保措置の内容
平成29年建議によると、上記配布資料の記載につづけて、健康確保措置の内容は、「企画業務型裁量労働制対象者に講ずる健康確保措置として労働基準法第38条の4の規定に基づく指針に列挙された内容(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの相談窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を基本として、長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル等を追加することが適当である」と書かれています。

限度時間を超えて就業した労働者への健康確保措置が、この建議が示した内容で十分なのかどうか、働き方改革関連法案は「過労死促進法案」とも揶揄されましたが、今後、労働政策審議会・労働条件分科会などで丁寧に議論していただきたいと願います。

時間外・休日労働指針案
2018年8月9日に労働政策審議会・労働条件分科会が中央労働委員会講堂で開催されましたので、傍聴しました。

この日の労働条件分科会では事務局から時間外・休日労働指針案<正確には「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針案」>(イメージ)が資料として配布されました。

時間外・休日労働指針案(イメージ)には、まず目的として「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他必要な事項を定めることにより、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものにすることを目的とする」と記載されていました。

つづいて「労使当事者の責務」「使用者の責務」が書かれていますが、使用者の責務では労使とも意見が述べられ、使用者の責務は健康確保措置の内容とともに時間外・休日労働指針案議論のポイントになりそうです。

使用者の責務(指針案イメージの2)
(1)使用者は、時間外・休日労働協定において定めた労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間の範囲内で労働させた場合であっても、労働契約法第5条に基づく安全配慮義務を負うことに留意しなければならない。
(2)使用者は、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について(平成13年12月12日付け労働基準局長通達)において、1週間当たり40時間を超えて労働した時間が、1箇月においておおむね45時間を超えて長くなるほど業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まる評価できるとされていること(略)に留意しなければならない。

追記:厚生労働省の新事務次官は働き方改革関連法について「皆さんが納得する形で丁寧な施行がしたい」と発言されましたが、そのためにはまず都道府県労働局で経営側だけでなく労働側も参加できるセミナーを早急に開き、働き方改革関連法の丁寧な説明が必要ではないでしょうか。


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