原題: BIUTIFUL
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: ハビエル・バルデム 、マリセル・アルバレス 、エドゥアルド・フェルナンデス 、ディアリァトゥ・ダフ 、チェン・ツァイシェン
公式サイトはこちら。
こういう感じの作品って予告からすごく惹かれるものがあって。
公開初日に行ったんですが書くのが遅くなっちゃった。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ作品は『バベル』しか観てないのですが、
こちらも大好きです。
今回はハビエル・バルデムも起用しているし、内容としてもずっしり感いっぱいでしたので、
ラテンビート映画祭あたりでかかってもおかしくはない作品だったかなと。
主人公のウスバル。
彼の人生は、懸命に生きようとしているのに報われないことの連続のように端からは見える。
決して楽とは言えない仕事も、理不尽とも言える元妻の要求を呑んで支えることも、
全てが子どもたちのためだったから。
普通なら金にまみれて精神までもを堕落させてしまうところなのだけど、
それをせずに、あくまでも不法入国者たちに対しても温かい視線を注ぎ続ける。
この部分で悪に染まりきってしまうのがたぶん一般的な姿なんだろうと思うんだけど、そうさせない所に、
この話をファンタジーとして位置付けたい姿勢が見える。
そして彼は、己に振りかかってくる一切の理不尽なことに対して、受け入れ続ける。
中国人・セネガル人の不法滞在者に対しての一貫した心配りも、
実は痛い目に遭っている自分に対して、鏡で見るような感覚があり、
本来なら悪役のポジションにも関わらず、出来る限りのことを尽くして接しているのかもしれない。
全編を通じて、特に結論めいたものはない。
こうなるんだ、という教訓めいたものもない。
淡々とウスバルに降りかかってくる出来事について語っている。
でも実際に、一般人の生活ってこういうものなんだと思います。
「市井の人」としての人間を描くということです。
特別ではない普通の日常、例えその中で辛いことがあっても人に裏切られても逃げられない、何をどうあがいたって変わるものではない。
その中で生きていくために見出す精一杯の喜びがあるとしたら。
ウスバルにとってはそれが「BIUTIFUL」だった。
間違っているかもしれない、しかしそこから逃れる術がどこにあると言うのだろう。
その想いを抱えた人ならきっと、ウスバルの決意、この映画の本質に触れることができるに違いない。
★★★★ 4/5点
劇的なエンディングは用意されてない、でもそこに真実があった気がしました。
少なくとも父の子供たちを想う気持ちは、変にハッピーエンディングを迎えるよりも、余計に際立ったように思います。
ハビ様の演技がとにかく好きで、個人的には『ノーカントリー』よりこっちの方がいいです。
127時間的な苦痛はエンタメであったなぁ、と今なら思えてしまうほど、本作の日々生きることの切実さには胸をしめつけられましたー。
これまでコンビを組んでた脚本家アリアガお得意の、複数の舞台の物語を並行して展開したり、時間軸入れ替えたり、という構成をやめたことで、ストレートに響く味わい深い人間ドラマに仕上がったと思えますー。
あれは完全にフィクションの世界(であってほしい。)だしね。
実際に、本作のような境遇にある人は多いと思うし。
最後まで救われないけど、苦境にある人たちでも光を見出して誇りを持って生きることの素晴らしさでした。
現実そのものだからね。
中国人、セネガル人とのエピソードは見ていて辛いものがありました。
誰もが生きなければならないから、裏切ることなんて想定の範囲内なんでしょうね。
時間軸入れ替えるのもうまくいけばそれなりにいいけど、
こうしてじっくりと語るスタイルはやっぱり落ち着きました。
でも、この映画は後々まで、しっかりと良かった~って思っていられるような気がします。
ズッシリ重い映画でしたが、ラストに光も見えてほっとしました。
イヘが空港に向かうシーンとか、上手いですよね~。
これも過去記事どっかにあったなあ(笑)
セネガル人、中国人との力関係はかなりリアルで、
厳しい現実を見ましたね。