原題: HERB & DOROTHY 50X50
監督: 佐々木芽生
出演: ハーバート・ヴォーゲル 、ドロシー・ヴォーゲル
観賞劇場: 新宿ピカデリー
映画『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』 公式サイトはこちら。
・お給料で買える値段
・小さなアパートに収まるサイズ
を基準に、5000点近くもの(本当にこれがアパートに収蔵できたのだろうか。)アートコレクションをしてきたハーブ&ドロシーの夫妻。そのハーブが亡くなったというニュースは昨年耳にしていた。なのでたぶんそのことを踏まえた上での内容になるだろうという予測はついた。
「ハーブの死から10日」(佐々木芽生監督のブログより)
ずっと夫妻を追いかけていた監督にとっては本当に寂しかったのだろうと推測される。いつまでもアートに対して情熱を持ち、仲の良かった2人。ずっとずっと一緒にいるような気がした人が去って行くのは辛いはず。それでもこの物語の続編を作って下さったことに感謝したい。
前作は、この夫妻はどんな生き様だったのかを語る作品だった。(前作の日記はこちら)
今回は、2人の増え過ぎてしまったコレクションを一体どうしていくのか、そのことに焦点を当てている。
さすがに5000点ものコレクションをアパートの一室で管理していくのは難儀なことだろうし、夫妻の今後を考えればそのままコレクションを放置する訳にもいかない。今のうちにしかるべき場所に移すのが、どう考えても自然の成り行きであろう。
ということで、「Vogel 50×50」(→リンク先は英語サイト)というプロジェクトが結成された。これは全米50州から1か所ずつ美術館を選定し、そこに彼らのコレクションのうち50点を選んで寄贈しようという試みである。
この不景気の中、50点もの美術品が寄贈されるのはたぶん有難い話だと思うが、50州それぞれの美術館が一様な反応を示した訳ではない。美術館の立地条件、経営状況や、美術館が目指すコンセプトとの兼ね合い具合、客層が異なれば観客の反応などが違う訳だから当然として反応も様々である。彼らの収集してきたものはコンテンポラリーが中心で、しかも審美眼は夫妻が基準なだけに、夫妻がいいと自信を持って送り出した作品であっても、一般客にとってはその良さが分からないという現象も発生してしまう。
そしてその反応の多様さはアーティスト側にとっても同じだった。無名のアーティストが彼らのコレクションによって発掘されて安定した収入を得ることができた、あるいは世に出たことには非常に感謝しているものの、今回自分の作品が全米に寄贈されることについては、意見は必ずしも1つとは行かなかった。自分の作品は全て揃って公開されることに意義があるので散逸されることに反対の者、逆に非常に喜ばしいこととして受け止める者。アートに対しての臨み方が異なる以上はこういった意見の相違が起こるのは無理もないが、今や作品の所有者は夫妻なので、その決定には従わねばならない。
それでも自分の作品が美術館に所蔵されることは、基本的に恐らくアーティストにとっては名誉なことであり、多くの人に見てもらう機会も増えて知名度が上がる。取り上げられることはプラスの要素も多い分、自分の信念に反する部分も受け止めなくてはいけないから、アーティストたちの中には夫妻にピックアップされることについても単純じゃない想いを持った者もいたであろう。
ポリシー面では心にそんな葛藤も抱えつつ、夫妻を目の前にすると、ひたすらにアートが好きという熱意に絆されて、アート関係者は夫妻のことがやはり好きなことを再認識させられてしまう。夫妻のアートに対しての姿勢が今回のプロジェクトを生んだことは間違いがないからだ。
本来であればもしかしたら無名で終わってしまったかもしれないアーティストたち。目に留まるもスルーされるも、どれも「運」だと思うが、その運に恵まれた作品たちをこの目で見れる環境を作ってくれた夫妻に対してのリスペクト作品が本作である。
そして映画は夫妻の永遠の別れを描くことによって、さらにアートコレクションに対しての結末をも示している。その答えは「夫婦としてのコレクター」だった夫妻の生き方をそのまま映し出したようなものだった。彼らが自分たちの生き甲斐にどう幕引きをしていくのか。前作をご覧の方なら尚のこと本作を観ていただき、それしかあり得ないという結論にうなずいていただきたい。
そしてこれは単にアートとの関わり方ではなく、最終的には「夫婦であるということは一体何なのか?」を指し示している。最近では『愛、アムール』と双璧をなす作品なのではないだろうか。見比べて、夫婦とは何かを語るのも面白い。
★★★★ 4/5点
間違いなく人気薄のはず。(笑)
先生や学芸員のじいさんの若者への問いかけが興味深かった。
「何にみえますか?」
「題名がないけど何とつける?」
イマジネーションをふくらませるといかけ。
感性の豊かなうちに多くのアートにふれて心豊かになれるような教育がなされている。
しかるに日本の美術教育は?
点数つけて、逆の方向に向けるようなことやってる。
アートは点数つけるようなもんじゃない。
ハーブ&ドロシーの「夫婦であるということは一体何なのか?」にはあまり目がいかなかった。(笑)
それでも結構お客さん入ってたと思うけど。
アメリカのアートに対しての接し方は見習うものがありますね。
>あまり目がいかなかった。
このラストの締め方なんて、まさにそんなこと表現してましたけど、おわかりになれなかったということで残念でした。
あの部屋が、あんなになるんだもんね。
ドロシーの10年後、どうなるんだろう?
元気でいて欲しいと思います。
ドロシーさんって何気にハーブを立てて来たように見えたから、最初は寂しく思うかもしれないけど、アートの整理をしていくうちにだんだんそれにも慣れていくような気もする。
矍鑠とされてたからお元気だと思うよ。
ものすごく若返っていて、夫婦とは一体何なのかさらに深く考えさせられたりして(笑)