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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

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『愛、アムール』 (2012) / フランス・ドイツ・オーストリア

2013-03-11 | 洋画(あ行)


原題: AMOUR/LOVE
監督: ミヒャエル・ハネケ
出演: ジャン・ルイ・トランティニャン 、エマニュエル・リヴァ 、イザベル・ユペール 、アレクサンドル・タロー

公式サイトはこちら。



今までのハネケ作品、正直あまり好きではないのです。残酷すぎてしまったり言いたいことが観念的過ぎてしまったりで、いつも観終わった後に何とも言えない不快感が残ることが多かった。
ところがこれは先行で観た方の評判もよく、「今までのハネケとは違う」らしいということで早速行って来ました。



ここで描かれている老夫婦の介護の日々は何もこの映画だけに限った事ではなく、世界で共有できる出来事でもある。家族が要介護になれば当然としてその面倒を見ねばならない。人手がいるし、介護の内容も当人にフィットしたものでなければならない。
そしてこれは当然として日本でも大きな問題となっている。世間では何年も施設に申し込んでいるのに順番待ちで入れない、介護保険を使いたいけどいろいろな事情で使えない、金銭的に余裕がない、協力者がいないなど、介護を巡る問題は日本では非常に身近なのではないか。
なので本作に出てくる老老介護などは日本ではごく普通のことになってしまっている。フランスの介護のシステムや実態がどういうものなのかは詳しくは知らないのだけど、本作を見た限りでは、自宅介護をしたければ(できる条件さえあれば)積極的にできる体制のようにも思えるのだけど。在宅でのケアシステムは日本よりも整っているような感じ。

フランスの医療・介護システム

フランスの高齢者介護


そうは言っても、本作のように週3回介護に来てもらうとか、2人雇うなどということは余裕がある層でないと不可能だろう。ジョルジュとアンヌが音楽家の夫婦であり、それまでの日々が比較的恵まれて来ていたからできること。単に金銭的に裕福であるだけではなく、当然として文化的にもレベルが高く精神的にも自立していたであろうことは推察される。
互いに独立していた夫妻であっても一様に老いは訪れ、そしていつかは倒れる。その時に倒れた側が最期までプライドを維持したいと懇願して来たら、無茶な願いであってもそれを全て叶えてやれるのだろうか。

老老の在宅介護が多い日本では本作のような事例は多く存在するだけに、近い将来あり得ることと向かい合える観客も多そうな気がする。もう既に自分で自分が把握できなくなっている、長年連れ添った家族、愛する人のそんな姿を見るのが辛い。元気だったころの面影に永遠に寄り添っていたかったけどそれは最早不可能となった時、せめて願いを叶えてあげたいと思ってしまってもおかしくはない。
ここに2回登場する「鳩」の象徴的な動き、これは本当に偶然なし得たものとは思えないというか、監督は鳩の動きにまで細かく注文?をつけていたそうで、思う通りの動きになるまで絶対にOKを出さなかったとか。2回それぞれ違う動きに意味がある訳で、そこが監督のこだわりでもありテーマでもあった。簡単に解決できない世界に迷い込んだ鳩はアンヌであり、それに対して違う動きをするジョルジュ。迷い込んだ場所は窓が開いていた部屋と、出口のないホール。それだけでも後半の展開が息苦しくなってくる。

永遠に尊厳を保ってあげたいという願いに応えることそのものは日本でも残念ながら珍しくはないだけに、その過程を逐一見せていくこと自体がもう、ハネケ監督お得意の「不快感を与える」作風となっている。観客はこれを受け入れるのか、または拒絶するのか。その心の動きそのものを問うこと、それは一見「愛」という微笑ましいベールに包まれているから判断は簡単なようで、実はいつものごとく答えが出せない質問だった。何故ならそれを「愛」と呼ぶことはあまりにも議論の余地があり過ぎる。かと言って全く通り過ぎることはできない問いかけに、我々は再度、無言になり切るしかないのだろう。


★★★★ 4/5点




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16 Comments

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身近なテーマ (まっつぁんこ)
2013-03-15 11:17:41
私の母は自分の母(私の祖母)の介護をした。
兄嫁は役に立たず娘とはいえシモの世話はつらく「早く死ね」と思ったそうである。やむをえまい。
まっつぁんこさん (rose_chocolat)
2013-03-16 12:46:36
介護は綺麗事じゃないよね。
こればかりは、やったことないと本当の心理はわからないのかも。
特別養護老人ホーム (まっつぁんこ)
2013-03-16 22:14:06
「やったことないと本当の心理はわからない」確かに。
わからないけど、若いうちに一度は特別養護老人ホームを見ておくべきだと個人的に思う。東大は来年から秋入学にして半年間特別養護老人ホームにおけるボランティアを義務付ければ良い。その方がくだらない教養課程なんかよりよほど勉強になり世の中の役に立つ人間が育つと思う(笑)
まっつぁんこさん (rose_chocolat)
2013-03-17 09:45:08
「介護って大変ですねえ」なんて言葉はいつでも誰でも言える。
そういう場面になったらどんな気持ちが湧くのかってことでしょう。
他人事である間は、綺麗事しか言えないと思うよ。だからまっつぁんの身内の方の気持ちだってそれも真実だし。
介護が全て終わって、亡くなって見送って、その時に後悔がないと言えるかどうかでしょうね。いろいろ嫌なこともあったけどそれでも面倒見てよかったって言えるかどうか。それでもよかったって言えるほど達観できればいいとは思っていますけどね。

東大、秋入学なんてやる気あるんかいって思うけどねえ。
60年前 (まっつぁんこ)
2013-03-19 07:14:23
60年も前の話なんで本当にたいへんだったみたい。
とにかく自分の子供には迷惑かけずにピンコロリする。
それだけのようです。

東大秋入学は5年後に・・・とか言ってる段階でこりゃダメだと思いました。このスピード感じゃあ外国には決して勝てません。
 (オリーブリー)
2013-03-19 12:18:30
こんにちは。

自宅介護って厳しいですよね。
実家でも病院嫌いの祖母がおりましたが、うちの場合は、兄嫁(孫嫁)が献身的にやってくれたので母は助かったと思います。
それでも自分も歳を取るし、いつまでこうしているんだろうと言ったような愚痴もありました。

弱っていく家族を毎日見るのは辛いです。
娘にさえそんな姿を見せたくない。
最後の選択はともかく、妻に対する夫の愛と尊厳には頭が下がります。
わが身にひきつけると ()
2013-03-20 11:58:06
小生、前期高齢者世代で、もしかしたら近い将来のわが姿かもしれず、見ていて痛い映画でした。

ハネケ監督も身内の体験が映画をつくるきっかけになったようですね。そのせいで、いつものむきだしの過酷さはいくぶん柔らかくなっていたのでしょうか。
まっつぁんこさん (rose_chocolat)
2013-03-23 14:39:56
ピンコロリがいいですね。ああだこうだ周りに迷惑かけたくないし。
きっとケアされる側だって自分のことで周りがもめるのはイヤだと思う。

東大やる気ないだろ・・・って(笑) 日本ってなんでこうも遅いんだろう?
オリーブリーさん (rose_chocolat)
2013-03-23 14:42:50
ケアを嫌がる病人だと家族は難儀しますよね。
ケアする人との相性もあるのでしょうけど。あの看護師役(ヘルパー?)は嫌な感じでしたね。
金銭が介在するから余計にややこしくなるんだけどそれでも誰かを雇わざるを得ない。難しい話です。

家族以外の人は嫌、でも家族にみっともない所は見せたくない・・・ そこまでプライドが高くなっちゃうと誰にもお世話できません。
そうならないようにしないと、と思っています。
ただ、これは「愛」なのかなあ? これを愛とは呼びたくないです。
雄さん (rose_chocolat)
2013-03-23 14:44:18
年代の近い方だと身につまされてしまいますよね。
しかも徹底的に現実描いちゃってますから。
ハネケさんも、ご自分のこととなるとちょっと弱気なのかな。確かにいつものえぐい作風が薄かったようですね。
こんばんは (とらねこ)
2013-03-31 03:45:11
ハネケは私もそれほど好きではないのですが、何故かニュースで出てくる度に気になってしまい、なんだかんだいつの間にか楽しみにしてしまい、またしても新作を見てしまいます。
これを見ていて本当に辛いのは、連れ合いの居ない孤独な人たちだと思うんですよね。
とらねこさん (rose_chocolat)
2013-03-31 21:32:18
ハネケってとにかく後味が悪いでしょう? 私もどっちかというと好きじゃないんです。
けどついつい観るのは同じ(苦笑)

>これを見ていて本当に辛いのは、連れ合いの居ない孤独な人たちだと思う
言えてる。
私も周りにフツーに独身の人多いしね。彼らの多くは30代40代50代だけど、これから年取って独居老人になるかもしれないっていうことも考えて、老後のことを考えないといけないのは辛いと思います。
自分をケアしてくれる人が誰もいなかったらどうしよう?って、まだそこまで実感ないかもしれないけどね。
愛があるケアが受けられればそれが一番だけど、そうじゃなくお金で解決しないといけないかもしれないし。その時にお金がなかったら?って、考えるとぞっとするかも。
尊厳を (sakurai)
2013-04-10 15:49:34
守ることこそが人にとって、一番の尊厳なのかもしれませんが、現実はそうとばかりも言ってられませんからね。
老両親を二組抱えてる身としては、娘の立場で見てました。
娘も娘でしたが、父親の気持ちもわからないでもないけど、そこまで隔絶した世界にしてしまうのかなあ・・。
私には、愛を問う!というより、生きること、死ぬこと、そのたもろもろいろんなことに抵抗する人間の生き様・・・・みたいに見えてしまいました。
sakuraiさん (rose_chocolat)
2013-04-12 07:28:56
日本も介護の世界って、「愛を問いたい」という理由じゃなくてもただでさえ隔絶しがちですよね。
なので、自分たちの世界に入っていってしまうことへの恐ろしさを感じました。
誰が何と言っても止められない方向性。それを諭す人もいなければ、いたとしても言葉は届かなかったのでしょう。
そういう意味で哀しい話です。
考えちゃいますよね・・・ (latifa)
2013-10-09 11:07:02
roseさん、こんにちは。
この映画は、見る人が介護経験者か?、はたまた見た人の周りに介護した経験がある人がいるか?などで、感想が違ってきそうな映画ですよね。
私もこういった件については、昔身内でいろいろとあったことがあって、真剣に見てしまいます・・・。

>ただ、これは「愛」なのかなあ? これを愛とは呼びたくないです。
私もです。
latifaさん (rose_chocolat)
2013-10-13 15:33:14
>見る人が介護経験者か?
>はたまた見た人の周りに介護した経験がある人がいるか?
私はそのどっちでもないんだよね。だから尚更本当の所の気持ちってわからないかも。
ただねえ。愛じゃないよーこれ!! って思っちゃう、愛があるなら最後まで寄りそってほしかった。
いやいやこれが寄りそいですって言われたらそれまでだけどさ。。

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