余暇
真っ青な空の下、健康そうな家族の散歩の途中の一コマといった絵。
20世紀前半活躍した、フランスの画家フェルナン・レジェの代表作”余暇”。
世界第二次大戦が終結してまだ日も浅い頃の1948年あたりの作品だが、暗い時代が終わったことで人々の希望に満ち溢れる様を描き出しているようだ。
レジェに初めて出会ったのは、小学1年の頃か、国立西洋美術館に展示されていた「メロンを持つ人」だった。
大きな画面に単純化された形と色で描かれたもので、漫画のような印象で、軽いショックを受けた。
その絵の前には、アカデミックなヴァン・ダイクの肖像画や印象派の明るく光に満ちた風景画などを見ていたので、極端にデフォルメされた子供ながらにふざけているように見えた絵が同列に飾られていたから、驚きと混乱があった。
しかし、不快感はまったく受けず、むしろ楽しそうで、絵が笑っているかに思えたのだ。
以来、レジェは、自分にとって幸福感を得られる絵の代表格になった。
今回、レジェの絵を採り上げたのには、今の気持ちの反動がある。
幸福に輝く未来を想像しにくいこと、人々のもちろん自分も、毎日一回は心の底から笑うことが難しいと思えるから。
だから、レジェの幸せそうな絵を観たくなったのだ。
何もレジェが、まったくの能天気だったわけではないだろう。
第一次世界大戦に従軍した経歴もある。
それでも、まだ、人と機械・科学技術の蜜月を、信じることができた時代だった。
当時よりずっと進んだテクノロジーと、仲良く歩んでいるのか人類。
使うはずの人の心の成熟度は、ほとんど進まない実情で、歪があらゆるところに蓄積され、噴出している。
幸せって、なんだろう。
時には、絵に描いた幸せを観て、心を癒そう。
健康な体、家族、笑顔、青い空。
”余暇”を過ごせる幸せの構図だ。