rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

解放するミケランジェロ

2014-04-08 23:08:02 | アート

ブリュージュの聖母子


瀕死の奴隷

ミケランジェロは、眠れる美を解放する。
石の中に壁の中に潜在する美を見出して在らしめる能力を持っている。
彼がまだ若い頃に制作した「ブリュージュの聖母子」にはどことなく窮屈さを感じるが、「瀕死の奴隷」はうねり上昇するような螺旋のムーブマンがあって、死して生の頚木から解放されようとする魂のように目には見えないものまでも表現できるのだ。
自分としては、表面処理がなされた彫刻よりも鑿あとがしっかりと残る見ようによっては荒削りまたは未完成のような後期の作品が好みなのは、そこに気の流れを感じるから。
それはわたしの無意識の領域に浸透している日本的美的感覚の作用かもしれない。
どこかで流し、匂わせて、余韻を持たせることを良しとする感覚だ。

西洋画的手法を用いて絵を描く日本人にとっての命題の一つに、文化的背景を備えたオリジナル性の追求というのがある。
安直に和のテイストを取り入れては何かに阿るようでいやでたまらなく、かといって生まれも育ちも日本の自分がイタリア人やフランス人の描く絵をそのままやっていいものでもないと思っていた。
生真面目に描き続けてもいないくせに、それでもつらつらと考え自問自答してきたら、自分の趣向も合わせておぼろげながら進む先が見えてきたような気がする。
そのきっかけを与えてくれたのが、ミケランジェロの後期の彫刻群だ。
ただし、上手くいくかどうかは、神のみぞ知る・・・というところだろう。