2021年はボナールで 2021-12-31 23:51:29 | アート 「手すりの上の猫」 (1909) やさしく穏やかな色合いのボナールで、今年を締めくくりたい。 総括としてではなく、希望として。 しかし、どこか寂しげで空虚感が漂っているのは、どうしても不安な感想を拭いきれないから。 今年も、このブログにアクセスしていただいてありがとうございます。 どうか皆様に、幸多きことを願っております。
チャーミングなウッチェロ 2021-10-16 21:13:16 | アート Adoration of the Christ Child with Saint Jerome, Saint Mary Magdalene and Saint Eustace パオロ・ウッチェロは、15世紀イタリアのルネサンス初期の画家で、遠近法を純粋に楽しみ駆使した絵が特徴的だ。 どの絵もどこかしら不思議な空間感と可愛らしさがあって、見飽きない。 特にこの下の「森の狩猟」は、彼の代表作に挙げられるだろう。 深く暗い森の手前で狩猟に耽る人や犬が、小気味よく奥に向かう集中線の上で跳ね回る。 深い緑、白、朱色の3つの色の配置や対比が、その効果をいっそう引き立てている。 十分に練られた画面の構成という磐石な土台が、安心して見るものの心を遊ばせているのだ。 子供のころ、ちょっとおもちゃの国を感じさせる画面に、「これが大人の描いた絵なのだろうか?」と戸惑いを感じたものだった。 けれど、今ではそのギャップがさらにこの作家を特異なものにしているのだと、羨ましく思える。 絵も音楽も文学も、向き合う年齢によって見え方感じ方が変わるもの、どんなときも偏見を持たず、更な姿勢で対峙したいものだ。 Hunt in the forest
好きなものの集合体 マグリット 2021-08-15 23:37:15 | アート Zeno's Arrow 1964 海(水)と空と月と岩と雲、好きなものの集合体な絵だ。 真夏の太陽のギラつく青空は苦手だけど、こうも連日の雨模様だと、雲の切れ間に青空がのぞいて欲しい。 この永遠にループするかのような、つまりある意味静止している状態が、心地いい。 激烈な自然災害、猛威を振るう見通しの立たない感染症の脅威、閉塞感が充満する社会状況などにより、心が疲弊してきている。 そのせいか無意識に、このところブルーを基調とした絵ばかりここに紹介していた。 鎮静効果のある青に、心を静めていただこう。
スクラムタイフーンNo9、No10 からのブルー 2021-08-08 16:35:05 | アート Trouville 1864 ウジェーヌ・ブーダン Rivage de Pontrieuy, Cote du Nord 1874 ウジェーヌ・ブーダン かつてこのブログに書いたことがあるが、フランスのノルマンディー地方オンフルールにある美術館に、ブーダンの絵が多く展示されていた。 それはつまり、地元の画家ということだ。 印象派に先んじて、自然光に魅せられた画家なのだろう、画面に空の占める割合が半分を超えている。 だから、低刺激で取り立てて印象強くないけれど、いつの間にか受け入れてしまうそんな絵だ。 いま、日本を台風の特に9号と10号がスクラムを組んで上空から攻撃を仕掛けてきている。 しかも、ことのほか熱い空気を間に挟みこんでの手の込みようだ。 そんな気象現象に意図的な悪意があるはずも無いけれど、やましさを持っている人間は恨めしく空を見上げてしまうのだ。 いやいや、勝手な思い込みだから。 美しく晴れやかな空を思い出そうよ。 ほうら、ブーダンの絵をここに進呈しよう。 青に浄化されたくなりはしないだろうか。
夏だもの海の絵を 2021-07-30 22:37:08 | アート プールヴィルの断崖の上 クロード・モネ 天気の移り変わりが過激すぎるのは日本だけではなく、全世界的に起きている。 ヨーロッパでは大雨により大洪水や、爆撃かと思うような雹に見舞われたり、かたや熱波があたりいったいを嘗め回す灼熱地獄になるところもある。 また、ジャングルといえば思い浮かべるブラジルに雪が降り積もり、何でも64年ぶりなのだという。 だから、従来に則った夏のイメージを体現している、このクロード・モネ作「プールヴィルの断崖の上」の絵を観よう。 真っ青な空に浮かぶ綿飴のような白い雲、エメラルドグリーンの海原、乾いた風がそよいでは草むらをなびかせる断崖の上は、正しい夏の光景だ。 100年前に描かれたこの風景が、この先も続いて欲しいけれど、いかなる変化を止めることは出来ないし、万物にとって変化はその宿命でもあるから、我々はそれを受容していかなくてはならないのだろう。 今にこの絵が古き時代のよき証人となるかと思いながら、先の世界がどう変化するのかを知りたい気持ちも湧いてくるのだった。