赤ちゃん、
あなたは今、私の中にいる。
すごく不思議な気持ちなんだよ。
私たちはいつも一緒。
私がつい、あなたの存在を忘れて以前と同じ動きをしているときも、
あなたは、私の中にいる。
時々、知らせてくれるね、
ほら今みたいに、私のおなかをくすぐって。
ずっと前、まだ、私があなたどころか、結婚さえ考えられなかったころ、
私は、私にしがみつく幼い子をしっかりと抱いて、
私に守るべき存在がいれば、と心の底から願ったことがある。
そのときに、初めて、
母になりたいっていう気持ちを持ったんだよ。
私はその時も、それからも、母にはならず、いろんな町に行っていろんな人と会って、精いっぱいがんばって、いろんな経験を得た。
そして、結婚をして、
巣づくりをして、大好きなひとと、赤ちゃんを迎える準備ができるのを待っていた。
赤ちゃん、あなたはしまじろうのことを知っているかな。
私は、あなたの前にいちど、お腹が膨らんでいたことがあるの。
あなたとは違って、ぽこぽことお腹はつつかなかったけど、悪いものではなかった。
そのしまじろうが悪いものを全部引き受けて、私のおなかから出て、
そして、赤ちゃん、あなたがこの世に命を得たんだよ。
赤ちゃん、まめちゃん、
だから、あなたは大丈夫。
私も大丈夫。
あなたのパパも大丈夫。
ゴマ家はいつも平和です。
赤ちゃん、いつか、しまじろうのお話をしてあげる。
すべてのわるいものを引き受けて行ってくれた、
あなたのおにいちゃんだよ。
赤ちゃん、私はあなたを守ります。
守らせてね。
あなたが大人になって私とあなたのパパの手を離れるまで。
守るべき存在がいると、
ひとはね、強くなれるんです。
私は過保護なほうじゃないと思います。なんでも自分でやれるように、あなたが望めば、あなたの人生の決断を応援するつもり。
ただね、そのためには、
あなたが、どうしてそうしたいか、私とあなたのパパを納得させることが必要よ。これはちょっと手ごわいかも。
あなたなら、きっとできるよ。
赤ちゃん、
私はあなたを大切にそっと思い続けます。
あなたが振り返ったら、
そこに愛を見つけられるように。
世の中は完璧じゃなくて、
思い通りにならないことがたくさんある。
でも、赤ちゃん、
あなたがそれを知る前に、
あなたに素敵なものをたくさん、
できるだけたくさん紹介したい。
朝の太陽さんの光。
私やあなたのパパがつくる美味しくて幸せな食卓。
あたたかな笑い声。
そこらじゅうにある、冒険のもと。
心踊る音楽。
世界がひろがっている宝の本棚。
道ばたの草や花。
山や、川や、農園や、畑や、草原。
さまざまな種類の虫たち、動物たち。
海、果てしなき憧れの、海。
多種多様なひとたち。
いろんな場所に沈んでいく夕陽の最後の光の筋と、そのあとにまた刻々とその色をかえていく、空。
遠く、遠くから届く星たちの光と、おりなすかたち。
気持ちのよい、楽しいお風呂。
幸せな安心な、おふとん。
わくわくする物語と、無限大の夢。
みんな、みんな、
あなたのパパとママが今までに好きなだけ与えられて受け継いできたものなんだよ。
赤ちゃん、あなたはそれを好きなだけ楽しめる。
そして、心の奧にしまっておける。
だって、世界が美しいから。