烏鷺鳩(うろく)

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コロンビアのコロンビアナイト

2018-10-11 | 鉱物


透き通った深いグレー。小さなクレーターが表面を覆っている。さざ波が立っているようだ。
コロンビア産出の「コロンビアナイト」である。


これは石ではない。「ガラス」である。自然界でできたガラスであることは分かっているのだが、その誕生は謎に満ちている。





Pseudo-tektite (シュード・テクタイト)というカテゴライズをされていたりする。「疑似テクタイト」という意味だ。つまり、「まるでテクタイトのような天然ガラス」なのである。
テクタイトというのはどんなものか。

テクタイト
大型の隕石が地球に衝突したとき、地表の岩石はしばしば融解し、空気中の飛び散り急冷されてガラスをつくる。このガラスの破片はテクタイトとよばれる。典型的な大きさは、径数㎜~数㎝程度である。ダンベルや円盤の形をしている。テクタイトはこれまでに南極と南アメリカをのぞく、全ての大陸で発見されている。テクタイトはある特定の地域の比較的広い範囲(数百~数千平方㎞)から発見されるのが普通である。テクタイトの放出源となったクレーターが特定できることもある。たとえば、チェコ共和国で産出する美しい緑色のテクタイトは、その生成年代と化学組成にもとづいて、そこから数百㎞離れたドイツ国内にあるライスクレーターからもたらされたものであることが明らかになっている。(『岩石と宝石の大図鑑』p.75)


つまりは、隕石由来の天然ガラス、ということである。このコロンビアナイト、表面の凹凸といい、その形といい、実にテクタイトに似ているのだが、その成分を分析すると、なんと、「オブシディアン」、つまり黒曜石に近いのだ。

天然の火山ガラスである黒曜石は、溶岩が急速に鉱物が結晶化する時間がないときにできる。黒曜石という名前は、岩石の化学組成に関わらず、ガラス質の組織をもつものに対して用いられる。(『岩石と宝石の大図鑑』p.43)

それではなぜ、コロンビアナイトはテクタイトではなく、成分的にオブシディアン(黒曜石)に近いのかというと、その水分量である。
テクタイトのほとんどは、含まれる水分量は0.1%以下なのだ(トリニタイトとも考えられているリビアングラスで0.2%以下)。
それに対してオブシディアン(黒曜石)は、水分量が0.2%以上と2倍なのである。




コロンビアナイトが透過した光は、薄紫がかった灰色である。なんとも言えない微妙な色合いが、非常に魅力的だ。ちょっと言葉に表すのが難しい色合いである。そして、光を当てて透かしてみないと、その魅力的な色は見ることができない。


コロンビアナイトはまだ謎の多い鉱物である。私の調査もまだ始まったばかりで、参考文献や英語もしくは日本語で読むことのできるサイトも数少ない。これからも調査を続けていきたいと思うので、また新しい情報が入ったら是非ご紹介したいと思う。



【参考サイト・文献】
・Are volcanic glasses and tektites of the same origin ? http://www.b14643.de/Tektites/
・『岩石と宝石の大図鑑 岩石・鉱物・化石の決定版ガイドブック』 青木正博 翻訳 (誠文堂新光社 2007年4月10日)