烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

カンボジア 恐竜切手 1995年:多彩な角竜類(2)

2018-06-19 | 切手


セントロサウルスは、多彩な角竜類の中でも際だって複雑な、凝った作りのフリルを備えている。推定全長は4~5m、体重1~2トンである。

平均的な大きさの中型種である。フリルの縁がとげとげしている。また、フリル中央上端にある2対4本の突起(とげ)は曲がっている。目の上の角はごく小さい。(『ニュートン』p.127)

切手の図案だとちょっとわかりにくい部分なので、こちらの図を紹介したい。


『恐竜学入門』p.122

フリル中央部にある2対のトゲのうち、下側にある1対が手前に向かってくるりとカールしているのである。上側のもう一対が中央で上向きにとがっているのだ。
こうしたフリルの多様化については、次のような説がある。

より派生的なケラトプシダエ類になると、派手なフリルに加えて鼻角や後眼窩角まで発達させた。例えばカスモサウルスやペンタケラトプス、トロサウルスのように長いフリルをもったケラトプシダエ類であるカスモサウリナエ類では、フリルのディスプレイ機能がより強調されていただろう。対照的に、セントロサウルスやアヴァケラトプス、そしてパキリノサウルスのようなフリルの短いケラトプシダエ類であるセントロサウリナエ類はもっとサイのような外見をしており、おそらく対戦相手と互いに鼻角で組み合うことで、目や耳、吻部など体が被る損傷をなるべく減らすように闘争を行ったのだろう。(『恐竜学入門』p.122)




さて続いては、スティラコサウルスとトリケラトプスである。スティラコサウルスは推定全長4~5m、推定体重は1~2トンである。生息していたのは約7600万年前頃である。フリルの縁に、長いトゲが並んでいる。見た目がとっても派手である。かっこいい。

一方のトリケラトプスは推定全長5~9m、推定体重は4~8トンにもなる。角竜類で最も大きい部類である。6600万年前に生息していたので、恐竜絶滅の直前の時代に生息していたのである。
トリケラトプスは角竜類で最も進化した、容姿の洗練された種であったのではなかろうか。完璧とも言えるその形の美しさは、種として完成された美しさではないかと思ってしまうのだ。


ところで、角竜類は、アジアでプシッタコサウルスのような原始的な種類が生まれ、プロトケラトプスのようなネオケラトプシア類が生まれる。そしてこのネオケラトプシア類の段階で角竜類は北アメリカ大陸へと渡ったと考えられているのである。北米へと渡った種類は大きく2つのグループに分かれて発展した。

北米に渡った仲間のうち、祖先種のもっていたやや原始的な形態的特徴を保持していた系統はごくわずかであった。その他の仲間は、豪華で多様な、もっと大型で派手なケラトプシダエ類に含まれる二つのグループへと分岐していった。それはカスモサウルスを模式属とするカスモサウリナエ類と、セントロサウルスを模式属とするセントロサウリナエ類である。カスモサウリナエ類は巨大で幅広いフリルを発達させる傾向にあったことから、“長いフリルをもったケラトプシダエ類”ともよばれる。一方のセントロサウリナエ類はフリルが短い傾向にあったことから、“短いフリルをもったケラトプシダエ類”ともよばれている。(『恐竜学入門』p.121)

カンボジアの切手のうち、セントロサウルスとスティラコサウルスは「短いフリルをもった」セントロサウリナエ類である。トリケラトプスは「長いフリルをもった」カスモサウリナエ類に属するのである。


というわけで、このカンボジア切手、額面順に図案を並べてみると、角竜類の進化の歴史が辿れるようになっているのである。
ジュラ紀に現在のアジアで生まれた角竜類は、大陸の分岐にあわせたかのように北米へと渡り、めざましい進化を遂げたのである。現在でも新種の角竜類が相次いで発見されているようである。どんな個性的な姿をした角竜類が出てくるか、今後も非常に楽しみなのである。



【参考文献】
・『恐竜学入門』Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)
・『世界恐竜発見地図(ちしきのぽけっと 18)』 ヒサ クニヒコ 絵・文 (岩崎書店、2017年5月31日)
・『ニュートン(2015年10月号)』(2015年10月7日、ニュートン プレス)