Minor Swing @Room

ジョニー・デップ他日常あれこれ

『熱い恋』(フランソワーズ・サガン)

2009年01月16日 00時43分56秒 | 


裕福で寛大な五十代のシャルルと二年間同棲していたリュシール。
上流階級婦人ディアンヌの美しい情人アントワーヌ。
“囲われの身”である二人はそれぞれの相手との関係を断ち、情熱的な恋に飛び込むのだが…。

読書については、こういう恋愛ものから離れて久しいのですが、
本の整理中に何気なくページをめくったら面白くて止められず一気読み。

これ、良かったです。
自宅で掘り出し物発見。
イミテーションだと思ってたダイヤのネックレスが実は本物だったと知った感じ、と言えばいいかな?

ただね、タイトルで損してる気がしました。
『熱い恋』ってあまりにもシンプル過ぎというか、ストレート過ぎというか。
もうちょっと味わいが欲しかったですね。
だけど原題の『ラ・シャマード』にされても全然意味分かんないですけど。。
(降参の合図に打ち鳴らす太鼓の音、だそうです:あとがきより)
『降参の太鼓』ではサガンに悪いし…(笑)
『悲しみよこんにちは』なんてステキじゃないですか。
タイトルって重要だと思います。

さて話を続けて関係を図式で表すと、

金持ち熟年ダンディ:シャルル(♂)×自由奔放30歳:リュシール(♀)
上流階級熟女:ディアンヌ(♀)×美貌のアマン:アントワーヌ(♂)

という組み合わせだったものが、

恋に落ちた二人=リュシール(♀)×アントワーヌ(♂)
単品=愛と寛大さで待つ男シャルル(♂)
単品=捨てられた年上の女ディアンヌ(♀)

こんな感じになります。

パリの上流階級の夜会で出会った『連れ』である若者同士が惹かれ合い、
熟年の恋人を蹴って新しい恋に走る。

これを初めて読んだのは10代の終わり頃かな…値段を見たら320円なのでお察し下さい。
おそらくこういう話は上の空で、ただぼんやりと文字を追っていただけなのは間違いないと思います。

記憶にあるのはリュシールがシャルルに別れを告げる場面。
大人の男はこんなにも寛大で、哀しみを愛で包むことができるのかと感心したものです。
その割に現実的とは思えず、もっと素直に『離したくない』と言えばいいのに、
なんて、今思えばシャルルの痛みの深さなどを窺い知ることもできない私なのでした。
一方熟女ディアンヌに至っては、年増女の“傲慢な痛さ”ばかり感じていた記憶が。

ところがこの度の再読で心境が一変。

熟年チームの、背筋を伸ばして耐えなければならない哀しみに、
人生の哀愁と、生きる美学と、相手への限りない愛を感じて泣けてきた、
というのだから私も年をとったものです。

ありきたりな内容ではあるけれど、サガン独特の残酷な美しさ、
それと、忘れて久しい(笑)立ち昇る恋の激情を、さりげなく、それでも的確に鮮やかに綴る文面に唸りました。

理想と現実の狭間で揺れ動く心理を、ナイフのように正確に切り抜く描写がキリキリと胸に刺さる。
それぞれの苦しみ、それぞれの嘆きは哀切極まりなく、
対照的に、それぞれの愛、それぞれの喜びは華やぐ生命の在処を訴えているようでした。

“恋”とは自分の欲求と欲望を満たしたいという激情であり、
“愛”とは相手の望みを叶え、ただひたすら相手の幸せを願う心。
“恋”と“愛”の違いについて、その真実をきめ細かい巧みな描写で表現するのはさすが。

恋は《心》が下にあるから下心、愛は《心》が真ん中にあるから真心、
というのを目にしたことを思い出しました。

(本文より)
シャルルはそれをどうして耐えることができるのか、この恋愛を、彼の寛大さを、あまりにも報われない彼の愛情を育てるのに必要な成分を、彼はどこから見つけてくるのだろう。


これは愛を貫くシャルルに対するリュシールの疑問。
私もそう思います。
こういうのって親の愛情に限りなく似ている。
だからドキドキしないし、愛情が大きすぎて目には見えないことが多い。

男女ならばキレイごとを一切振り棄てて、
『あなたが欲しい』と訴える眼差しに心震えるのもまた真実だと思うけれど。

結局それぞれが辿り着いた結末を知って、
“愛”って“哀”かもしれないな~と思うアラフォーでした。

若気の至りで読みこなせなかった本が、まだまだ自宅に眠っているかもしれません。
面白かったので昔の本をちょっと読み漁って味わい直してみようかと思ってます。
時間があれば(笑)


【追伸】
高校の時の読書感想文の課題が、有吉佐和子の『花岡青洲の妻』だったんだけど、
あんなの高校生に分かるわけないよね~ってよく友達と話してました。
内容というのが、嫁姑のうわべは上品な、それでいて腹黒いドロドロの愛憎劇なんだけど、
結婚してから読み直したら面白いのなんの。

その時の自分の状態によって、本はこんなにも味わいが違って来るものなんですね。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
るみりんさん (Rei)
2009-02-06 16:20:33
>発表は控えます・爆
発表して欲しかった!!

『熱い恋』はベタ過ぎます。
・・・・・・・・・・・かなり真剣に考えたけど思い浮かばない
文句を言いつつこのザマです(笑)

>当時難しく感じても、今は年を重ねて(か、かなしい…)
>あの頃とは感じ方が違って、きっと楽しめることでしょう^^
ホントそうなんだよね~。
意外と新鮮で面白いの。
やっぱりだてに歳を重ねているんじゃないね!(笑)

>「花岡青洲の生家」
へぇ~~~!!すご~い!!
あの怖くて偉大なお母様のご霊前によろしくとお伝え下さい
なんだか色んな怨念が立ち込めていそうで行ってみたいわ(笑)

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熱い恋 (るみりん)
2009-02-06 00:56:08
面白そうですね~!読んで見たくなりました^^
「熱い恋」、どんなタイトルがいいのかな?
どうしましょ?そんなことを真剣に考えて
私はどうしようとしているのでしょうか?
書き出している…バカです・笑
発表は控えます・爆
わたしも実家で掘り出し物を探してみよ^^
当時難しく感じても、今は年を重ねて(か、かなしい…)
あの頃とは感じ方が違って、きっと楽しめることでしょう^^
ところで、うちの娘たちの小学校では遠足で
「花岡青洲の生家」に行きます。有吉さんの本を
読んでから行くと、また感じることが違うかも
知れませんね・・・笑
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まめ太郎さん (Rei)
2009-01-18 20:54:53
まめさん、こんばんは~♪

>本のジャンルの幅が「ドンと来い」ですね。
常に“何でも来い”ではないんだけどね
偏食を食いつないで生きてきた、って感じでしょうか。

>読後の感想も違うだろうなと
そうだね~!同じだったら逆に大変だよね(笑)
その感想の変化が自分の感受性の変化、ととらえればいいんだね。
どっちがいいと言い切れない部分もございますが…(爆)

>老化と言うより、印象が薄かったのですかね
うん、そういう場合もあるね。
強烈に印象的なものは今でもはっきり覚えてるもんね

まめさん、何か面白い本があったら教えてね
返信する
幅が広い (まめ太郎)
2009-01-17 10:32:12
おはようございます。

本のジャンルの幅が「ドンと来い」ですね。

青春時代のど真ん中と
おばちゃんにどっぷりとの今では
読後の感想も違うだろうなと
(あ!これは私めのことですから)

読んだ事さえ忘れて、読み進んで
気がつくこともありますが
老化と言うより、印象が薄かったのですかね
返信する
コンちゃんさん (Rei)
2009-01-17 09:38:26
コンちゃんさん、おはようございます
毎日寒いですね~

>本や映画って読み返してみるとか年代によって
>また違った感じを受けることあるよね
ホントにそうなの!
味わいつくしてないことがもったいないな~って。

>最初ただのお遊び恋愛のくだらないものだと思ってた
うんうん。
こちらの思考がその深みまで届かないっていうこと、
よくありますよね。

>あの時何でこれがわからなかったんだろうと思った
私、しょっちゅうそれがあります
ああ、こういうことだったのか~って思えると、
何か自分の変化まで感じ取れるような。。
基本的な部分は変わらないかもしれないけど、
間口が広がるって楽しいことかもしれませんね

>本なんかでも結構見落としたりしてる箇所があるかもね
絶対ありますよね~。
それどころか初めて読む気分の本もざらです(笑)
10年とか20年前に読んだ本、イメージとして残っていれば良い方ですよね。

本棚の本が全部新刊に思えてきました!(爆)
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ジェニさん (Rei)
2009-01-17 09:27:48
ジェニさん、おはようございます
こっちは今朝雪が積もってますよ

>よく結婚式のスピーチでの【思いやり】(重いヤリ)みたいな~ (違うかっ)
いや、違わないと思う(笑)
おんなじ感じだね♪
私もなるほど~って思ったんだけど、
すぐ忘れちゃうからここに書いておきました

>私は腹まわりが豊かですが・・・・
ハハハ耳が痛いっす
腹の上のポニョとか二の腕のポニョとか…イヤですわねぇ。。

>【悲しみよこんにちわ】は読んだ記憶があります。
>やっぱり恋すること自体に憧れる年代だったので、内容はうろ覚えだけど。。。
うんうん、そうなのよね~。
若い頃の関心って恋愛ものが中心だもんね。当然と言えば当然なのかな。
だけどきれいさっぱり忘れるものなんだねー(爆)

ストラップの件もありがとう

>パパラッチのごとく、覗いてきました!!
あははは!!ご足労おかけしました!(笑)
チバさんと二人、愛の巣で気だるい夜を過ごしてます(爆)
返信する
そうね~ (コンちゃん)
2009-01-16 22:43:47
本や映画って読み返してみるとか年代によって
また違った感じを受けることあるよね
私の場合ある映画なんだけど
最初ただのお遊び恋愛のくだらないものだと思ってた
しかし10年後にまた同じものを見たら
最後のシーンで男女のどうにもならない心の葛藤が
描かれててとってもかわいそうな映画だったわ
思わず涙。。。あの時何でこれがわからなかったんだろうと思った
本なんかでも結構見落としたりしてる箇所があるかもね

返信する
なるほど~♪♪ (Jennifer)
2009-01-16 15:27:30
恋は《心》が下にあるから下心、愛は《心》が真ん中にあるから真心

な~るほど!! 感心しました(*・∀・*)
よく結婚式のスピーチでの【思いやり】(重いヤリ)みたいな~ (違うかっ

Reiさん、感想の文章の表現がとても豊かですね~
私は腹まわりが豊かですが・・・・

【悲しみよこんにちわ】は読んだ記憶があります。
やっぱり恋すること自体に憧れる年代だったので、内容はうろ覚えだけど。。。

ところで、下の記事のももちゃんからのストラップ、良かったですね!!
愛podに良く似合ってる!!

チバさんとの愛の別宅も完成されたんですね~
パパラッチのごとく、覗いてきました!!
2008年11月からなんですね!! チバさんLOVE

夢中になれることがあると、毎日が充実!! ですよね
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