「ごめんね持田君。言われたからとは言え」
先程の笑み口のままだが、多少眉をひそめて明日香の手伝いをしたことを詫びる岩白。
微妙な変化だが俺と対応が違うのは明らかだった。
「…いえ、春菜さんが何かしていたとしても同じことでしょうから」
こちらは毎度の如く多少の変化すらない。無理矢理にでもこじつけるなら、言葉使いだろうか。
「ああ、それはそうかもね。どう? 明日香さん」
向かい合う二つの邪悪な笑み。今は寛の話なのに、見てるだけで何故か不安になる。
「にゃははは。そらもちろんや。何かしら口実作って殴るくらい簡単やからな」
……言ってることは確かにいつものことなのだが、言葉にすると怖いな。
いじめとか虐待に近いものがあるぞそれ。なので、
「…たまには俺の身にもなってくれ」
寛がそう言いたくなるのも頷けた。けどそんなこと言ったらまた……
「前にも言うたやろ? そういうんは今日香の役目や」
ほら。
「へ!? う、うち? 前にもこんな無茶振りあったような……」
「前にも言ったって言うたやろー。ほれ頑張り。ご注文は『俺の身にもなってくれ』やで」
「む、難しいな……」
腕を組んで真剣に考え込む今日香。
なんでわざわざ言いなりになるんだろうか? それについて、俺も腕を組んで考える。
「どうかしたんですか?」
「ん、いや大したことじゃないけど」
窓の外からの問いかけにもただ曖昧な返事をし、更に考える。
そして出た答えは、『それがいつもの流れだから』 ……まあ外れではないだろう。
「あらセン、あんた傘持ったままだったの?」
俺に問い掛けた際に窓枠にかけられたセンの手には、傘の柄。
「あ、はい。すっかり晴れちゃいましたよね~。
わたしとしては降ってくれてもよかったんですけど」
「あんた雨の日好きだもんね。そうだ、日永君はどうなの? 雨の日」
視界の隅で明日香に可愛らしげなチョップを繰り出す今日香を捉えつつ、
今朝もした話題を再び。
「朝お前に会う前にもそんな話になったんだけどさ、俺は興味なし。
ついでに明日香は嫌いで、今日香は気分による。そんでセンはお前が今言った通り」
「ふふっ。四人も居て全員バラバラってのも凄いわね」
そう言えばそうだな。全員バラバラだ。
「じゃあお前はどうなんだ? 雨の日」
「私? 私も好きよ。センと同じくね」
「ですよね! 雨の日ってにぎやかで楽しいですよね!」
同意者が居たのがそんなに嬉しかったのか、セン大喜び。
「うーん、理由は違うんだけどね」
「あれ」
冷や汗たらり。
「にぎやかって言うよりは、落ち着くのよなんだか。
家の中でぼ~っとしながら雨音聞いてるとね。センの場合は外に出たいんでしょ?
もし自転車に乗ってたらわざと水溜りに突っ込んだりしたくなるんじゃない?」
「み、水溜りに突っ込むのは……と言うか、雨の日に自転車はまだちょっと……」
本人はそう言っているが、条件が揃えば突っ込むだろうな確実に。その時岩白が、
「持田君はどうなのかしらね?」
とのことなので残る一人のほうを三人揃って見てみると……
「よーするにお前はうちのこと殴り返したかったっちゅうわけかいな!」
「…なんでそうなる」
「あ、明日香ストップ! 別に寛くんにそうしろ言われたわけやないんやから!」
引き続き、先程思いついた『いつもの流れ』が繰り広げられていた。
「微笑ましいわねぇ」
「ですねぇ」
「俺は笑えない……」
それから暫らくその様子を眺めていると、
明日香の両脇を固めている今日香がこちらに気がついた。
「あ、ごめんななんかもうグダグダで……ほら明日香! そろそろ落ち着いて!」
「……ん? どしたんや三人とも」
いやどうもしないんだけどね。
「また雨の話になって、寛さんはどうなのかなってなったんです」
あ、そうだったけ。すっかり忘れてた。
「…おかげで助かりました、春菜さん」
なんで岩白に……もしかしてこいつ、あの状況でこっちの話聞いてたのか?
「いえいえどういたしまして」
そんでこいつはあっちの状況を見越した上で寛に話を振ろうとしたのか?
だったら微笑ましく思う前に止めろよって話だが。
「で、どうですか寛さん。雨の日好きですか?」
「…特に感想を持たないと言うか興味がないと言うか……」
「男は皆こうなんかいな? 好きか嫌いかくらいはっきりせえっちゅうねん」
皆ったってサンプルが俺とこいつの二人だけなんですけど……
先程の笑み口のままだが、多少眉をひそめて明日香の手伝いをしたことを詫びる岩白。
微妙な変化だが俺と対応が違うのは明らかだった。
「…いえ、春菜さんが何かしていたとしても同じことでしょうから」
こちらは毎度の如く多少の変化すらない。無理矢理にでもこじつけるなら、言葉使いだろうか。
「ああ、それはそうかもね。どう? 明日香さん」
向かい合う二つの邪悪な笑み。今は寛の話なのに、見てるだけで何故か不安になる。
「にゃははは。そらもちろんや。何かしら口実作って殴るくらい簡単やからな」
……言ってることは確かにいつものことなのだが、言葉にすると怖いな。
いじめとか虐待に近いものがあるぞそれ。なので、
「…たまには俺の身にもなってくれ」
寛がそう言いたくなるのも頷けた。けどそんなこと言ったらまた……
「前にも言うたやろ? そういうんは今日香の役目や」
ほら。
「へ!? う、うち? 前にもこんな無茶振りあったような……」
「前にも言ったって言うたやろー。ほれ頑張り。ご注文は『俺の身にもなってくれ』やで」
「む、難しいな……」
腕を組んで真剣に考え込む今日香。
なんでわざわざ言いなりになるんだろうか? それについて、俺も腕を組んで考える。
「どうかしたんですか?」
「ん、いや大したことじゃないけど」
窓の外からの問いかけにもただ曖昧な返事をし、更に考える。
そして出た答えは、『それがいつもの流れだから』 ……まあ外れではないだろう。
「あらセン、あんた傘持ったままだったの?」
俺に問い掛けた際に窓枠にかけられたセンの手には、傘の柄。
「あ、はい。すっかり晴れちゃいましたよね~。
わたしとしては降ってくれてもよかったんですけど」
「あんた雨の日好きだもんね。そうだ、日永君はどうなの? 雨の日」
視界の隅で明日香に可愛らしげなチョップを繰り出す今日香を捉えつつ、
今朝もした話題を再び。
「朝お前に会う前にもそんな話になったんだけどさ、俺は興味なし。
ついでに明日香は嫌いで、今日香は気分による。そんでセンはお前が今言った通り」
「ふふっ。四人も居て全員バラバラってのも凄いわね」
そう言えばそうだな。全員バラバラだ。
「じゃあお前はどうなんだ? 雨の日」
「私? 私も好きよ。センと同じくね」
「ですよね! 雨の日ってにぎやかで楽しいですよね!」
同意者が居たのがそんなに嬉しかったのか、セン大喜び。
「うーん、理由は違うんだけどね」
「あれ」
冷や汗たらり。
「にぎやかって言うよりは、落ち着くのよなんだか。
家の中でぼ~っとしながら雨音聞いてるとね。センの場合は外に出たいんでしょ?
もし自転車に乗ってたらわざと水溜りに突っ込んだりしたくなるんじゃない?」
「み、水溜りに突っ込むのは……と言うか、雨の日に自転車はまだちょっと……」
本人はそう言っているが、条件が揃えば突っ込むだろうな確実に。その時岩白が、
「持田君はどうなのかしらね?」
とのことなので残る一人のほうを三人揃って見てみると……
「よーするにお前はうちのこと殴り返したかったっちゅうわけかいな!」
「…なんでそうなる」
「あ、明日香ストップ! 別に寛くんにそうしろ言われたわけやないんやから!」
引き続き、先程思いついた『いつもの流れ』が繰り広げられていた。
「微笑ましいわねぇ」
「ですねぇ」
「俺は笑えない……」
それから暫らくその様子を眺めていると、
明日香の両脇を固めている今日香がこちらに気がついた。
「あ、ごめんななんかもうグダグダで……ほら明日香! そろそろ落ち着いて!」
「……ん? どしたんや三人とも」
いやどうもしないんだけどね。
「また雨の話になって、寛さんはどうなのかなってなったんです」
あ、そうだったけ。すっかり忘れてた。
「…おかげで助かりました、春菜さん」
なんで岩白に……もしかしてこいつ、あの状況でこっちの話聞いてたのか?
「いえいえどういたしまして」
そんでこいつはあっちの状況を見越した上で寛に話を振ろうとしたのか?
だったら微笑ましく思う前に止めろよって話だが。
「で、どうですか寛さん。雨の日好きですか?」
「…特に感想を持たないと言うか興味がないと言うか……」
「男は皆こうなんかいな? 好きか嫌いかくらいはっきりせえっちゅうねん」
皆ったってサンプルが俺とこいつの二人だけなんですけど……
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