(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子170 足と小石と、異常

2007-05-24 20:28:06 | 欲たすご縁は女の子   七日目
「相変わらずねぇ、日永君」
笑いを含んだ声で岩白が言う。ほっとけ。性分だ。
「明日で一週間か……あっという間だか長かったんだか」
と言われて何が明日で一週間なのか考える。
その答えは……そうか、まだ一週間しか経ってないのか。
「凄く長い一週間でしたよ。凄く長くて……」
そこまで言うと、後ろのやつ……その一週間の主役が、ぽすんと俺の背中にもたれてきた。
「凄く、幸せな一週間」
はいはい。
「あらあら」
こいつもお前の言う通り相変わらずだよ。御覧の通りな。

振り払うのも疲れるのでそのまま気にせず自転車を漕いでいると、
「ところで日永君の家ってどの辺なの?」
「ん? もうすぐ着くけど」
「じゃあ家の前までついて行っちゃおっと。遠回りってわけでもなさそうだし。
 あ、中まで入るつもりはないからお構いなくね。場所を知っときたいだけだから」
前もそんな感じで家に来て、家の前で泣き出したやつが……
あいつ、まだ姉抱いて寝転んでんのかな。と重なった二人の様子を思い出していると、
「あれ……?」
背中の感触が離れ、怪訝そうな声。
「どうした?」
「あ、いえなんでもないです」
ふむ……ならいいんだけど。背中に虫でもついてたとか?

「はーい到着ー。ここが日永家だよー」
人気のない寂しい我が家の前で自転車を停めると、
あとからついて来ていたもう一台の自転車も停止する。
「へえ、結構大きいのね。二人しか住んでないのに二階建てなんだ」
二人暮しを想定して建てられた家じゃないと思うが。
「二階は全く使ってないけどな。たまに掃除しに上がったらそこら中埃だらけだし」
「そう言えばわたし、二階に上がったことないです」
と、自転車に乗ったまま今更なことを。
そう言えば俺、お前を二階につれてったことないです。
それはいいとして、お前が乗ったままの自転車を手で支えるのは辛いんだが。早く降りて。
「そうなの? 開いてる部屋がもったいないわね。掃除して使わせてもらったら?」
「そ、そんな。自分の部屋を頂いて、これ以上部屋を使わせてもらうなんて……」
とセンが手を振ると、振動が自転車を通して俺に伝わる。手が辛い。
「自分の部屋あるの? てっきり二人で同じ部屋かと思ってたんだけど」
「はい。あ、でも今は同じ」
「セン! 今すぐ自転車降りろぉ!」
いらんことをぺらぺら喋らないの! めっ!
「あ、すいません。話に夢中になっちゃって」
ホントに悪いと思ってんのかお前は。
って言うか、もしかして俺の言葉をその意味のまま受け取ったのか?
自転車どうこうが本音じゃないよ? 全くないわけじゃないけども。
……そこ。こっそり笑うな眼鏡。
「よい……しょっ……」
俺に言われて、ゆっくりゆっくりと自転車を降りるセン。
しかし、降りるならスッっと降りてしまえばいいのに。
なんでそんなゆっくりゆっくり? ここ、別に地雷原とかじゃないぞ?
それでもセンはゆっくり降りる。手だけの力で体重を支え、少しずつ少しずつ。
逆けんすいか? 筋トレか?
なんて思ってる間に足が地面に到達。そしてセンが手を離すと、
ドサッ。
……とアスファルトに勢い良く膝をついて、ぺたんと座り込んでしまった。
「何やってんだ?」
「どうしたの?」
周りの二人が声をかけるも、センは下を向いたまま反応なし。様子がおかしい。
なので自転車のスタンドを立てて、腰を落としてもう一回聞いてみる。
「おい、どうした?」
「あ……」
下を向いたまま、センが震えた声を出す。
「足が……動かないです」
「はぁ?」
何を言ってんだこいつは、とその動かないらしい足を見てみると、
膝をついたときに小石が刺さったらしい。ちょっとだけ血が出ていた。
「おいおい、また足怪我してるぞ。ばんそうこう剥がれかかってるし……」
学校で保健室に忍び込んだ時につけたのであろうそれが、半分ベロンと垂れていた。
するとセンが顔を上げた。そしてまた震えた声でこう応える。

「ぜ……ぜ、ぜんぜん痛くないです。それどころか、何も感じない……!」


3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2007-05-25 20:38:21
セン、どうしたんだぁあ!
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Unknown (Unknown)
2007-05-26 01:27:18
セ…セン

え…?





うわぁぁぁぁ
返信する
Unknown (代表取り締まられ役)
2007-05-26 21:48:09
どうしちゃったんでしょうねぇ。

なんてお茶を濁すような真似はさっさと切り上げて。
とにかくシリアスっぽくなってまいりました。
しかしわたくし、そういう表現は苦手であります。
さあこれからどうなることやら……
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