(有)妄想心霊屋敷

ここは小説(?)サイトです
心霊と銘打っていますが、
お気楽な内容ばかりなので気軽にどうぞ
ほぼ一日一更新中

欲たすご縁は女の子153 全員揃えば女子のターン

2007-05-07 21:05:13 | 欲たすご縁は女の子   七日目
「あれは仕方ないじゃないですかぁ。
 昨日は膝がガクってなっただけだし、今日の朝のはゴミ箱があったからだし……」
「はいはいそうですね」
不機嫌そうなセンはほっといて、食事を続ける。
「むぅ~」
するとより不機嫌さが増したようで、口がとんがってしまった。
「いやあお前が作った野菜炒めはやっぱり美味いな」
ご機嫌取りで褒めてみると、窓枠からセンが覗き込んできた。
多分足はギリギリの爪先立ちだろうな。
「……まだ一口も食べてないじゃないですかぁ。他のは食べてるのに……」
ばれた。
「そりゃあ切り方一つじゃそんなに味も変わらないですもんね。
 そんなに言うほど美味しくなんて……」
最後まで手をつけなかったのがそんなにショックだったのか、何やら卑屈気味。
だがそんなセンに、
「…センさん」
何かを頬張りつつも淀みのない声で語りかける寛。だからお前は腹話術師かっつーの。
あと話する時は相手を見なさい相手を。
「なんですか?」
「…明はいつも、好きな物は最後に取っておくんだそうです」
恥ずかしいことを言いやがったので、机の下で足を蹴ってやった。が、動じない。
さすが明日香の突っ込みを耐える男……
「本当ですか!? あ、でも実際味はそんなに変わらないし……」
機嫌がよくなったのも束の間、現実と向き合うセン。
「…好きなものというのはただ単に美味いだけじゃなく、楽しみってことじゃないでしょうか」
「楽しみ、ですか?」
もう一回蹴る。……やっぱり止まらねえ。
「…彼女の手作りというのは、やっぱり楽しみなんでしょう」
「そうなんですか? 明さん」
……センは解るとして、何故寛までこっちを向く。
「そんなんじゃねーよ。ただ普通に美味いから最後にしてるだけだ」
と言い訳してみたが、意味はあんまり変わってない気がする。
まあどっちにしたって俺がこれを最後に取っておいたのは事実だしな。
「えへへ。たんと召し上がれ」
「たんとって量じゃないだろ」
「…めでたしめでたし」
最後にもう一回蹴っといた。

飯も食い終わって一段落。あとの三人もそろそろ来るだろう。
「そう言えば結局晴れちゃいましたね。せっかく傘持ってきたのに」
そう言って持ち上げられたセンの手には、傘。
「そうだなぁ」
授業を受けてる間に、一度も雨は振らないまま天気は晴れに移行。傘いらなかったな。
「……って、なんでまだ持ってるんだよ。傘立てに置いときゃいいだろ」
するとセンは寛のほうをチラッと見た後、小声で答えてきた。
「だ、だって……靴箱のところは入らないほうがいいかなって……」
傘置くだけだったら別にいいだろ。と言おうとしたところ、
「…センさん、何故傘を」
それより先に寛が動いた。首から上だけ。
「あ、え、えっとこれは……」
まあ傘持ってるくらいでそんな大層なことにもならんだろうが、一応筋は通しておくか。
「前に『傘立てに置いてたら盗られた』って話したら、
 『そんなの嫌だから自分で持ちます』だとさ」
「…なるほど。…俺も盗られたことあるんです」
「え、そうなんですか? 大丈夫だったんですか?」
傘盗られたぐらいで大丈夫も何もないと思うが。……とそこで、後ろから肩を叩かれる。
振り返ると、眼鏡。眼鏡は人差し指を口にあててにっこりと微笑んだ。
「…はい。…結局、明日香の悪戯でしたから。
 …だから俺の場合は、自分で持つより傘立てに置いた方が安全なんですよ」
「寛さん、ちょっ……」
「んなガキみたいなこと今でもするわけないやろがぁっ!」
「…なんだ来てたのか」
ガキさんと寛の台詞の間に快音が響いたのは言うまでもない。
「大丈夫? 寛くん」
「これで大丈夫やなかったら今頃死んどるわ。いっそ殺したろか?」
一行目は納得できるけど、二行目は勘弁してあげてください。……それにしても、
「非道いな岩白。寛まで陥れるなんて」
「明日香さんにそうするように言われただけよ。それにしても、『まで』って何かしら?
 もし日永君のことだったらお門違いよ。いつもひとりでに何かしら陥っちゃうんだし」
にこにこ。

……どの口が言うか。一見自然で、実際は邪悪なその笑み口か?


コメントを投稿