(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子37 喋りかた、呼びかた、説明のしかた

2007-01-11 22:35:37 | 欲たすご縁は女の子   三日目
いや、あれが何者かは解ってる。
あの茶色掛かったショートヘア。
俺はほとんど毎日それを左斜め後方四十五度から見ているのだから。
何者かは解ってはいる。解ってはいるのだが……
などと考えているうちに、向こうもこちらに気がついたようだ。
見慣れた誰かが見慣れた髪を僅かに上下させながら近づいてくる。
ちなみにセンはここに着くなり小走りで俺の視界から消えた。故に一対一。
「いやぁこんなとこで会うなんてえっらい偶然やねぇ日永君!」
「ああそうだな」
何者かは解っている。授業毎の号令でお馴染みの、
「クラス委員さん」
しかし名前が出てこない。
なんとか思い出そうとするも、思い出す以前に一度も憶えたことがない気がする。
つーか、確実にない。
「む。その困った顔は……」
クラス委員さんに見詰められる。と言うよりも睨まれる。
「あれやろ! うちの名前憶えてないんやろ!」
ズビッと顔を指差される。
「申し訳ないが正解だ」
「あかんでぇ同じクラスの人の名前くらい憶えとかな」
腕を組み目を閉じるという、いかにも説教らしい姿勢で説教された。
「悪いな。教室じゃいつも隅っこでロボの相手してるもんで」
「ロボ? ああ寛か。そーかロボか。おもろいこと言うなぁ日永君」
自分で言っといてなんだが、そんなに面白くはないと思うぞ。……いや待てよ?
「寛と知り合いなのか?」
「ん? ああ、そやで。まああの辺田舎やしな。嫌でも世間は狭なるわ。
 ……っと、忘れるとこやった」
「なんだ?」
「うちの名前、教えとくわ。ちゃんと憶えや?」
ああ、そんな話だったな。
「広瀬明日香や」
「解った。憶えとくよ」
憶えたところで使いやしないだろうが。
「ほなら次や。あんたの番」
腕を組んだまま、あごで促す。
「へ? 俺の名前は知ってるんだろ?」
「苗字だけや。下は知らへんねん」
普通はそんなもんか。……だとするなら俺、普通以下だけどね。
「明だ。日永明」
「ふーん。ほな明でええかな。呼び方」
……いきなり名前で呼ぶか?
「あかん?」
「いや別に「まあ嫌やゆうても決定やけどなー! にゃはははは!」……じゃあ訊くなよ」
俺だって逃走中のあいつのことは名前で呼んでるしな。名付け親とは言え。
「あー。ちなみにな、うちのことも名前で呼んでや。ややこしいからな」
「ややこしい?」
「うちな……」
言いかけたその時、
「明さん明さん! あっちに何やら長くて短い犬が!」
興奮しすぎて言ってることが意味不明なあいつが帰ってきた。
「……あれ。お友達ですか?」
俺の隣に人を確認したセンが尋ねる。当たらずとも遠からずってとこだな。
「クラスメイトだ」
それを聞いて、そのクラスメイトの方に向き直った。
まあクラスメイトだろうが友達だろうがどっちでもいいんだろうけど。
「はじめまして! 岩白センです!」
ぺこりと頭を下げる。
「ちなみに神社は関係ないからな」
どうせ訊かれるだろうから先に言っておいた。
「うちまだなんもゆうてへんやん……まあええわ。うちは広瀬明日香。
 明日香でええで、センちゃん」
センちゃん……
「明日香さんですね。了解しました」
自己紹介、終了。
「で、長くて短い犬ってのはなんなんだ」
「あのですね、胴が長いんですよ。それで足がすごく短いんです。もう可愛くて可愛くて」

「ダックスフンドちゃうん?」


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