(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子85 治療、そして決意

2007-02-28 21:53:22 | 欲たすご縁は女の子   五日目
今日香が凍りついた。それは俺達三人にも伝染し、動くものは居なくなった。
冗談だと言い出さない辺り、マジなのだろう。これは……今日香がいたたまれなさ過ぎる。
そのまま十秒ほど経っただろうか。俺達と同じく動かなくなっていた明日香に動きが。
と言ってもその表情は俺達と違い、怒っているようだった。
姉妹に対してあの返しじゃあそれも無理のないことか。……どっちが姉なんだろうか?
「なあぁぁん! でえぇぇや! ねえぇぇぇぇん!」
典型的ツッコミボイスにたぎる感情を惜しむことなく上乗せし、
拳とともに寛のミゾに叩き込む! 言ってやれ言ってやれ!
「うちん時は考えとったくせに今日香ん時は即答って、どういうこっちゃねんな!」
「そこかよ!」
「え!? そこ!?」
「そこなんですか!?」
その時俺達三人は一つになった。
「…ん゛ん。…だから冗談だと」
「冗談も糞もあるかい。失礼なやっちゃで」
一発入れたら落ち着いたのか、それとも最初からじゃれ合いのつもりだったのか、
表情は既にニヤニヤ笑いに戻っていた。今日香はもちろん(と言うのも失礼かもしれんが)
寛もこいつに遊ばれているだけなのではないだろうか。
もしかしたらそれを見てはらはらしている俺達三人も。
「じゃあそろそろ帰ろかいな。悪かったな寛。時間取らせてもうて」
明日香が来るまで待つだけのつもりが、結局色々と見せられる羽目になってしまった。
「…時間は別にいい。…殴られたことに比べればな」
もっともだ。自業自得な面も無きにしも非ず、だがな。
「じゃあもっと時間が気にならんようにもっっっと殴ったるわ」
非道い発想だ。非道すぎてむしろ感心する。何故そんなことが笑顔で言える。
笑顔で言った明日香と無表情で聞き流した寛は二人で歩き出す。
俺も一緒になって歩き出したが、
あとの三人が動かないのに気付いて、すぐにこちらの三人も立ち止まる。
「どうした? もう行くぞ」
「行くってよ今日香さん。今日香さん? おーい」
岩白は依然固まったままの今日香の目の前で手を振っていた。
しかし反応はない。
気絶でもしてるんじゃないのか?
「重症ね……」
「ですねぇ……」
センが心配そうに今日香の顔を覗き込む。それでも無反応。
すると岩白が両の手の平を今日香の前で向かい合わせた。
「えー……私が手を叩いたらあなたは目を覚まします。はいっ」
ぱちん。
っておいおい、それは催眠療法とかそういう……
「……はっ! い、いやあの、鉄分は間に合ってますんで! ってあれ?」
気がついた!
「……あれ、なんかできちゃった」
「春菜さん凄いです!」
今日香は何か悪い夢を見ていたようだった。

そして寛と別れて、やっと帰路に着いたわけだが……
「…………」
無言のプレッシャーと言うか悪い気と言うか黒いオーラと言うか、とにかく今日香が暗い。
肩を落とすわけでも溜息をつくわけでもないのだが、なんか暗い。
理由は……恐らくあれなんだろうけど。
「け、見当違いだったら聞き流してくれればいいんだけど……
 その、あんまり気を落とすなよ」
「何言ってんの明くん。気ぃなんか落としてへんよぉ。うふふ」
怖い。なんか怖い。
「な、ならいいんだ」
「あー、今度サプリメントでも買ってみよかいなぁ。あはは」
鉄分だ。どう考えてもラベルに鉄分って書いてあるやつだ。
「じゃあそれ買う時に寛連れてったらええやん。デートやデート。
 冗談やゆうて、本気やったんやろ? ほならやったったらええねん」
明日香がいつもの意地悪スマイルで言い出した。……火に脂っぽくないかそれ。
「うちがいくら殴ってもあいつピンピンしとるからなあ。
 そろそろ別の手ぇ使ったってもええやろ。頑張ってけちょんけちょんにしたりや?
 柔よく剛を制す、や。いっしっしっし!」
この一件すらこいつにとっては寛いじめの手段になるのか!
恐ろしいと言うか、ちょっと非道すぎるような。
「明日香……」
しかし今日香は怒るでも呆れるでもなく、明日香に何か訊きたそうな……

「……解った。うち、頑張るわ」


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