(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子23 二つの三人、門の外へ

2006-12-25 23:19:06 | 欲たすご縁は女の子   二日目
掃除で少し遅れた分、既に人通りは少なくなっていた。
まばらに通る帰宅部の方々以外見るものはない。
そういえば岩白って……
「そういやお前さ、部活とか入ってないのか?」
「ん? 見た通り帰宅部だけど。何で?」
「いや、木刀持ってたから剣道とかやってんじゃないかなって」
「あんなの見た目だけよ。あの木刀はお父さんが昔使ってた奴。
 それっぽく見せるために構えだけ教えてもらったの」
「賽銭泥棒対策にか?」
「そう。あの時の日永君の様子だと効果的面みたいね」
確かにあの時は激しくビビった。あれが見た目だけって、情けないな俺……
と言うか、よくそれだけで不審者に向かっていけるな。
「ところで、今日センは大人しくしてた?」
「さあな。ずっと一緒に居たわけじゃないから解らん。
 まあ心配ないだろ。消えてるんだし」
俺の見てないところでも消え続けててくれたらの話だが。
……更衣室から俺の所に来るまでの間はアウト確実なんだけどね。
「何もなかったの? 面白くないわね」
面白がるなよ。
「何もなかったってこともないんだがな」
ホントに面白くなさそうなので、とりあえず報告しておくか。
つまらん報告になりそうだが。
「なになに? 何があったの?」
興味津々だ。何も起こらないように努力した自分が悲しくなった。
昼食が少し遅れる程度の努力だったが。
「更衣室で食事は確保できたらしい。で、ここの制服着てた」
「ふーん。物好きも居るものね。わざわざ制服なんか欲に出すなんて」
「体育するぐらいなら教室に戻りたいってことなんじゃないか?」
俺は更衣室に入るといつもそう考えている。面倒臭いし。
「うーん……まあ、体育は何するかによっては全然おもしろくなかったりするしねぇ」
「単純に制服が気に入ってるってこともあるかもな」
「……そういう趣味なの? 日永君」
「どういう意味だ」
「制服マニアとか、もしかしたら女装とか……」
なんで俺の話になってんだよ。
「え、明さんってそうなんですか?」
「ぬおっ!?」
真後ろから予想外の声。
「あらセン。いつからそこに?」
門の柱と俺達の間、その狭い隙間にいつの間にかセンが立っていた。
「たった今来たばかりです。
 消えたまま来たので、お二人の陰に隠れて実体化しようと思いまして……」
「ずっと消えっぱなしだったの?」
「いえ、制服着てからは暫らく見えるままで歩き回ってました」
「何か面白いことあった?」
さっき俺にしたのと同じ質問。
「はい! 明さんのお友達と知り合いになりました!」
「ふーん。どんな人?」
「えっと……こんな感じの……」
目を細める。
「なんか怖いわね……」
俺も最初はそう思った。
「でもいい人でしたよ。明さん梅干貰ってたし」
それはいい人、と言うにはあまりに微妙な情報だな。
「……まあ、とにかくよかったじゃない。学校来て正解ね」
「はい!」
とにかくって、何か引っかかる言い回しだな。……おっと、忘れるとこだった。
「忘れないうちに言っとくけどな」
「なんですか?」
「何?」
「俺は制服マニアじゃないし、女装癖もない」
「ああ、そう言えばそんな話だったわね」
「あ、やっぱりそうなんですか? 面白そうだったのに……」
どうでもよさそうな岩白と、残念そうなセン。
全く逆の反応だが、どっちも腹が立つのはなんなのだろう。

すっかり人通りがなくなった校門に、三人組がやって来た。
外へと向かうその三人組を見て、もうここに居る必要がないことを思い出す。

「じゃ、そろそろ帰るか」


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