「ああ、そういえばそんなことが書いてあったような……では、もう一度行ってきます!」
そう言うと、長い髪を宙に浮かせながら走って行ってしまった。
「あんまり走り回るなよー」
言ったところで既に声が届く範囲には居なかったが。
「ふう……」
まあこうなることは予想していたが、それでも精神的に疲れる。
動き回るのはあいつだから体のほうは全く疲労などしていないのだがな。
「えーと、彼女?」
センが走り去ったほうを見たまま、明日香……えー、『さん』をつけるべきか否か……
明日香でいいか。俺も呼び捨てされてるし。というわけで。
明日香が俺に尋ねた。
「違う。いとこだ」
「あ、そうなん? 土日で遊びに来てはるってことかいな」
「いや、色々事情があって今は俺ん家に住んでる」
「ふーん。……あれ。っちゅうことは二人暮らし? 明って確か一人暮らしやったやろ?」
「なんで知ってんだ?」
あんたに教えた憶えはないのだが。
「おもろそうな噂なんか、あっちゅうまに広まるもんやで?
知られたないんやったら一切誰にも言わんこっちゃな」
別に一人暮らしの頃は知られたくないことでもなかったんだがな。
まさか後になって二人暮らしになるなんて思わなかったし。
「ま、それはええとして。センちゃんほっといてええん?」
俺もそろそろ気になってたところだ。
「そうだな。そろそろ行くわ」
じゃあな、と付け加えようとした時、
「うちも行くで」
遮られた。
センが走り去ったほうに二人で向かう。
「うちの用事もあっちやねん」
ということは。
「犬飼うのか?」
「ちゃうちゃう。猫飼い始めたからな、必要なもん買いに来てん。
多分犬も猫も同じらへんやろ」
まあそうかもしれんな。ペットショップなんか来たことないからあまり知らんが。
「その猫買った時にまとめて買わなかったのか?」
「店で買ったんやなくて、拾ってん。っちゅーか、勝手に家までついて来たんやけどな」
「野良猫が懐くなんて珍しいな」
俺もちょくちょく見かけるけど、近づくといつもすぐ逃げるぞ?
「やろ? せやし飼うことにしてん。かわいいでぇ。
ゴロゴロ~ってしたったら、暫らくもがいてから死んだみたいに力抜けるんとか。
にゃにゃにゃーっ! にゃああぁぁぁぁ……みたいな」
もがくってなんだよ。どんなゴロゴロやってんだあんたは。
普通気持ちよさそうに目を閉じるとかそんな感じじゃないのか?
「ホントに死なないように気をつけろよ」
「大丈夫やて。怖いこと言いなやぁ」
笑顔で返された。その猫に幸あれ。
到着してみれば、センは犬が入った箱に張り付いていた。
「おーい」
こっちに気付いてなさそうなので呼んでみる。
「あ、明さんに明日香さん。ほら、この犬ですよ」
ミニチュアなダックスフンドだな。
「飼うのん?」
「いや、見に来ただけだ。今日はこいつの暇潰しに付き合ってるだけだからな」
「なんか買うてるやん」
俺が持ってるビニール袋に視線を落とす。
「ついでだこんなもん。これだけの為にわざわざこんな所まで来くるのは面倒だしな」
袋を広げて中を見せる。掃除機のフィルターが一セットだけ。
「うっわ、おばちゃんやん。大変やねぇ親おらんって」
「すいません。ただでさえ忙しいのに連れて来てもらっちゃって……」
謝られてしまった。別に休日が一日潰れるほど忙しいわけではないのだが。
「俺の暇潰しも兼ねてるから気にするな」
「ん? ってことは、二人とも暇なん?」
「そうだな」
「ですね」
こいつはここに居るだけで暇が潰せるだろうがな。で、なんだね。
「ほならこの後うちらと映画見に行かへん?」
……映画? ……うちら?
そう言うと、長い髪を宙に浮かせながら走って行ってしまった。
「あんまり走り回るなよー」
言ったところで既に声が届く範囲には居なかったが。
「ふう……」
まあこうなることは予想していたが、それでも精神的に疲れる。
動き回るのはあいつだから体のほうは全く疲労などしていないのだがな。
「えーと、彼女?」
センが走り去ったほうを見たまま、明日香……えー、『さん』をつけるべきか否か……
明日香でいいか。俺も呼び捨てされてるし。というわけで。
明日香が俺に尋ねた。
「違う。いとこだ」
「あ、そうなん? 土日で遊びに来てはるってことかいな」
「いや、色々事情があって今は俺ん家に住んでる」
「ふーん。……あれ。っちゅうことは二人暮らし? 明って確か一人暮らしやったやろ?」
「なんで知ってんだ?」
あんたに教えた憶えはないのだが。
「おもろそうな噂なんか、あっちゅうまに広まるもんやで?
知られたないんやったら一切誰にも言わんこっちゃな」
別に一人暮らしの頃は知られたくないことでもなかったんだがな。
まさか後になって二人暮らしになるなんて思わなかったし。
「ま、それはええとして。センちゃんほっといてええん?」
俺もそろそろ気になってたところだ。
「そうだな。そろそろ行くわ」
じゃあな、と付け加えようとした時、
「うちも行くで」
遮られた。
センが走り去ったほうに二人で向かう。
「うちの用事もあっちやねん」
ということは。
「犬飼うのか?」
「ちゃうちゃう。猫飼い始めたからな、必要なもん買いに来てん。
多分犬も猫も同じらへんやろ」
まあそうかもしれんな。ペットショップなんか来たことないからあまり知らんが。
「その猫買った時にまとめて買わなかったのか?」
「店で買ったんやなくて、拾ってん。っちゅーか、勝手に家までついて来たんやけどな」
「野良猫が懐くなんて珍しいな」
俺もちょくちょく見かけるけど、近づくといつもすぐ逃げるぞ?
「やろ? せやし飼うことにしてん。かわいいでぇ。
ゴロゴロ~ってしたったら、暫らくもがいてから死んだみたいに力抜けるんとか。
にゃにゃにゃーっ! にゃああぁぁぁぁ……みたいな」
もがくってなんだよ。どんなゴロゴロやってんだあんたは。
普通気持ちよさそうに目を閉じるとかそんな感じじゃないのか?
「ホントに死なないように気をつけろよ」
「大丈夫やて。怖いこと言いなやぁ」
笑顔で返された。その猫に幸あれ。
到着してみれば、センは犬が入った箱に張り付いていた。
「おーい」
こっちに気付いてなさそうなので呼んでみる。
「あ、明さんに明日香さん。ほら、この犬ですよ」
ミニチュアなダックスフンドだな。
「飼うのん?」
「いや、見に来ただけだ。今日はこいつの暇潰しに付き合ってるだけだからな」
「なんか買うてるやん」
俺が持ってるビニール袋に視線を落とす。
「ついでだこんなもん。これだけの為にわざわざこんな所まで来くるのは面倒だしな」
袋を広げて中を見せる。掃除機のフィルターが一セットだけ。
「うっわ、おばちゃんやん。大変やねぇ親おらんって」
「すいません。ただでさえ忙しいのに連れて来てもらっちゃって……」
謝られてしまった。別に休日が一日潰れるほど忙しいわけではないのだが。
「俺の暇潰しも兼ねてるから気にするな」
「ん? ってことは、二人とも暇なん?」
「そうだな」
「ですね」
こいつはここに居るだけで暇が潰せるだろうがな。で、なんだね。
「ほならこの後うちらと映画見に行かへん?」
……映画? ……うちら?