デパートから外に出て、俺達は駅へ。広瀬姉妹は自転車置き場へ向かう。
「ほなまたなー!」
と明日香は大きく手を振り、今日香は無言で頭を下げた。
対してこちらは、
「ああ! じゃあなー!」
と返事だけする俺と、
「さよーならー!」
と明日香に負けないくらいぶんぶん手を振りまくるセン。
ついさっきまで全員泣いてたと思うと少し可笑しかった。
振り返って前を向くと、少し前方で俺達が渡るべき横断歩道の信号が点滅している。
しかし別に急いでいるわけでもないのでゆっくり歩いてそこまで行き、
着いた頃には既に赤くなっていた信号の前で止まる。
そのまま待っていると電車が近づく音が聞こえてきた。
線路が駅の二階部分と高い位置にあるため電車そのものは見えないが、
どうやら駅に電車が止まったようだ。
音がした方角からして俺達が乗る方面への電車だろう。
「電車、来ちゃったみたいですねぇ」
センが駅の二階部分を見上げる。
「走って信号渡ってれば間に合ったかもな」
走ってまで一本速いだけの電車に乗る気などさらさらないが。
「それはちょっと残念でしたね」
その言葉とは裏腹に少し笑みを含んだ声と表情だった。
こいつもさして残念とは思ってないのだろう。
信号が青になり、道路を渡って駅に入る。
「この時間だとさすがに人多いな」
この駅は一階部分が通り道にもなっているため、
電車の乗客以外にも結構な数の人が通る。
ましてや今は帰宅時間。
都会のようにラッシュとまではいかないものの、それなりに人は増える。
「いくらなんでもここで消えるのは無理があるか……」
「そうですねぇ……人気のない所探します? トイレとか」
「残念ながらこの駅のトイレは改札の向こうだ。
まあそんなに無理して探すくらいなら出すよ。切符代程度なら」
「『一駅代くらいでケチ臭いとか言うなよ。これでも主夫やってんだからな』
……って言ってませんでしたっけ。明さん」
うわ、すっごい言った覚えある。いちいち憶えてるなよそんなこと。
「あーっと、つまりな」
言い訳開始。
「問題なし、もしくはちょっと場所探したくらいでなんとかなりそうだったら消える。
無理そうだったら諦めるってことでどうだ」
最後が問いかけになってる辺り今考えました臭がプンプンだが、どうだ。
実際、今この周辺で大丈夫そうな所などなさそうだし。
「うーん……まあ仕方ないのかもしれませんけど、
やっぱり勿体無いと言うか申し訳ないと言うか……」
俺の財布の心配をしてくれるのはありがたいが、言い訳を始めた以上引くわけにはいかんな。
「じゃあこうしよう。切符代はジュース代の代わりだ」
「ジュース?」
「ああ。映画見るときお前だけジュースなかっただろ?
それで浮いた分を切符代に回すってことで」
何故俺は今、金を払う為に必死になっているんだろうか。とふと思う。
「チンケなプライドの為じゃよ。ふぉっふぉっふぉ」
頭の中を雲に乗った爺さんが……いや、誰だよあんた。
「……解りました。ありがとうございます」
とは言うものの、しぶしぶといった感じ。悪いね、色々気を使わせて。
切符を買って改札を通り二階へ行き、時刻表を見る。次の電車まであと十分ぐらい。
見ると椅子が空いていたので、二人並んで腰掛けた。
「いやーまさか一日潰れるとは思わなかった」
「もしかして、何か予定とかあったんですか?」
「いんや。全く何もない」
あったとしてもあいつは帰らしてくれそうになかったが。
「それならよかったですね。明日香さんと今日香さんに会って。
今日香さんとは今回初めて会ったんですよね?」
「ああ。明日香とも初めて知り合ったようなもんだがな。話をしたのは初めてだし」
「そうなんですか? 仲良さそうだったのに」
あれ、言ってなかったっけ。確か思考を読まれた辺りで『今初めて知り合った』って……
そうか、こいつあの時には既に暴走準備中だったんだな。
「そういう奴なんだろ。誰とでも仲良くできる、みたいな」
『で、でもセンちゃんかて明日香と似た感じですやん』……か、確かに。
「ほなまたなー!」
と明日香は大きく手を振り、今日香は無言で頭を下げた。
対してこちらは、
「ああ! じゃあなー!」
と返事だけする俺と、
「さよーならー!」
と明日香に負けないくらいぶんぶん手を振りまくるセン。
ついさっきまで全員泣いてたと思うと少し可笑しかった。
振り返って前を向くと、少し前方で俺達が渡るべき横断歩道の信号が点滅している。
しかし別に急いでいるわけでもないのでゆっくり歩いてそこまで行き、
着いた頃には既に赤くなっていた信号の前で止まる。
そのまま待っていると電車が近づく音が聞こえてきた。
線路が駅の二階部分と高い位置にあるため電車そのものは見えないが、
どうやら駅に電車が止まったようだ。
音がした方角からして俺達が乗る方面への電車だろう。
「電車、来ちゃったみたいですねぇ」
センが駅の二階部分を見上げる。
「走って信号渡ってれば間に合ったかもな」
走ってまで一本速いだけの電車に乗る気などさらさらないが。
「それはちょっと残念でしたね」
その言葉とは裏腹に少し笑みを含んだ声と表情だった。
こいつもさして残念とは思ってないのだろう。
信号が青になり、道路を渡って駅に入る。
「この時間だとさすがに人多いな」
この駅は一階部分が通り道にもなっているため、
電車の乗客以外にも結構な数の人が通る。
ましてや今は帰宅時間。
都会のようにラッシュとまではいかないものの、それなりに人は増える。
「いくらなんでもここで消えるのは無理があるか……」
「そうですねぇ……人気のない所探します? トイレとか」
「残念ながらこの駅のトイレは改札の向こうだ。
まあそんなに無理して探すくらいなら出すよ。切符代程度なら」
「『一駅代くらいでケチ臭いとか言うなよ。これでも主夫やってんだからな』
……って言ってませんでしたっけ。明さん」
うわ、すっごい言った覚えある。いちいち憶えてるなよそんなこと。
「あーっと、つまりな」
言い訳開始。
「問題なし、もしくはちょっと場所探したくらいでなんとかなりそうだったら消える。
無理そうだったら諦めるってことでどうだ」
最後が問いかけになってる辺り今考えました臭がプンプンだが、どうだ。
実際、今この周辺で大丈夫そうな所などなさそうだし。
「うーん……まあ仕方ないのかもしれませんけど、
やっぱり勿体無いと言うか申し訳ないと言うか……」
俺の財布の心配をしてくれるのはありがたいが、言い訳を始めた以上引くわけにはいかんな。
「じゃあこうしよう。切符代はジュース代の代わりだ」
「ジュース?」
「ああ。映画見るときお前だけジュースなかっただろ?
それで浮いた分を切符代に回すってことで」
何故俺は今、金を払う為に必死になっているんだろうか。とふと思う。
「チンケなプライドの為じゃよ。ふぉっふぉっふぉ」
頭の中を雲に乗った爺さんが……いや、誰だよあんた。
「……解りました。ありがとうございます」
とは言うものの、しぶしぶといった感じ。悪いね、色々気を使わせて。
切符を買って改札を通り二階へ行き、時刻表を見る。次の電車まであと十分ぐらい。
見ると椅子が空いていたので、二人並んで腰掛けた。
「いやーまさか一日潰れるとは思わなかった」
「もしかして、何か予定とかあったんですか?」
「いんや。全く何もない」
あったとしてもあいつは帰らしてくれそうになかったが。
「それならよかったですね。明日香さんと今日香さんに会って。
今日香さんとは今回初めて会ったんですよね?」
「ああ。明日香とも初めて知り合ったようなもんだがな。話をしたのは初めてだし」
「そうなんですか? 仲良さそうだったのに」
あれ、言ってなかったっけ。確か思考を読まれた辺りで『今初めて知り合った』って……
そうか、こいつあの時には既に暴走準備中だったんだな。
「そういう奴なんだろ。誰とでも仲良くできる、みたいな」
『で、でもセンちゃんかて明日香と似た感じですやん』……か、確かに。
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