若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

社会保障と自由は反比例

2010年08月05日 | 政治
社会保障の適正さを保とうとすると、役所は個人の生活状態の把握を徹底しなければならなくなる。年金、医療保険、介護、生活保護、これらを漏れがないように厳格に実施しようとすると、世帯構成、本人の所得、家族の所得、職業、病状などを、事細かに、場合によっては強制的に調べなければならなくなる。

「天網恢恢疎にして漏らさず」なんて言葉があるが、実際に制度を作って運用するのは「天」ではなく「人」。人が作るものなのだから、把握されるべきが把握され、踏み込むべきでないところは踏み込まず、過剰でなく、不足もなく、誰もが納得の形で把握される・・・なんてわけがない。「疎にして漏らさず」な制度が出来あがることはない。

制度には穴があるのが常。その穴を防ぐために制度を被せ、制度と制度の継ぎ目にまた制度を被せ、気づいたら制度が重複し、よく分からない役所の部署ができ、縦割り行政が肥大化し、天下り先ができ、出る杭は打たれ、行政に介入されて個人は息苦しくなる。


さてさて。


社会保障の穴が見つかりました。介入の足音が近づいてまいりました。

<高齢者不明>全国で100歳以上の男女18人 所在不明に(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
 東京都内で住民登録がある高齢者が死亡していたり、登録地に住んでいないことが判明した問題で3日現在、全国で100歳以上の男女計18人の所在が確認できないことが、毎日新聞のまとめで分かった。なぜこうした事態が相次ぐのか。
     ------------(中略)------------
 淑徳大の結城康博准教授(社会保障論)は「家族が高齢者を助けるという性善説だけでなく、公的機関が適切に現場介入できるような仕組みを構築しなければ」と制度改正の必要性を訴える。
 足立区の担当者は言う。「高齢者を監視したり、家庭の中に入る権限は行政にはない。今回の事件は民生委員などの人手が足りないとかいう以前の問題だ」
8月3日21時10分配信 毎日新聞



「高齢者を監視したり、家庭の中に入る権限は行政にはない」
              ↓
「公的機関が適切に現場介入できるような仕組みを構築しなければ」

役所から公務員がやってくる。居留守を使って鍵をかけていても、鍵を壊して入ってくる。世帯の状況を確認するためだ。社会保障給付の適正さを維持するという理屈からいけば、100歳以上だけが介入調査の対象ということにはならない。65歳以上の老齢年金受給者、障害年金や遺族年金の受給者、デイサービスに通う人、保険証を使って病院に通う人、母子手当を受けている人など、相当な数の人が

  コウムインの 「突撃!隣の社会保障受給者」

の対象になりうる。

逆に、
「年金を窓口支給にして、役所に出頭させればいい。そこで本人確認すればいい。」
なんて意見も出てきそうだ。
2か月に1度、自治体に住む全ての高齢者が役所で列を作る。おじいさんは杖をつき、おばあさんは手押し車で、ひいおじいさんはタクシーで、ひいおばあさんはひ孫に連れられて役所へやってくる。
立ったまま窓口の前で2時間、3時間と待たされ、
「はい、○○さんですね。今回も生存確認、と。」
と端末に入力され、年金を手渡され、えっちらおっちら帰ってゆく。

そうそう、1泊2日の旅行であっても、国民は役所に届出を怠らないように。誰がどんな格好で何を持ってどこへ出かけたを事前に把握しておかなければ、行旅死亡人となって戸籍と実態が合わなくなり、やはり社会保障給付の適正を保てなくなるから。

いっそのこと、江戸時代の五人組の制を復活させ、異動の届出や納税の義務を連帯して負わせるか。


・・・・書いてて吐き気がしてきた。

なんという無駄なコスト。
なんという過酷さ、煩わしさ、息苦しさ。
自由もプライバシーもあったもんじゃない。

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