若年寄の遺言

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大阪府の職員基本条例案雑感 ~ 法規ジャングルへようこそ ~

2011年11月10日 | 政治
○「教育基本条例案」「職員基本条例案」ようやく上程されました 大阪府立高等学校教職員組合

府高教ホームページの解説によると、大阪維新の会が9月21日に「教育基本条例案」「職員基本条例案」を提出したところ、この2議案は「議長預かり」になり、2週間経った10月5日に上程された。議案が上程された10月5日に、議案の全文が初めて府議会ホームページで公開された。

(議案として上程され、正式に公開されたのは10月5日。hamachan氏は、検討段階の全文を遅くとも8月18日に入手している。hamachan氏の入手の早さは際立っている。)

大阪維新の会が提出した、大阪府の「職員基本条例案」全文。
これに対する大阪府総務部の「『職員基本条例案』の内容について確認(質問)事項」。


この二つを眺めてみて思ったのが、
「国の法律や政令、地方公共団体の条例や規則が入り混じっている分野(税、職員人事、給与など)で、それぞれの整合性を保ちながら新規条例を制定するのは至難の業だ。」
ということ。

国に、法律があり、政令があり、各省の規則がある。こうした国の規定から、ある部分は地方公共団体の条例に委任され、別の部分は別の機関の規則に委任される。法律、政令、条例、規則が網の目のように張り巡らされている。

そういった分野で条例を新規に制定しようとすると、既存の法律に抵触したり、別に制定権を持つ機関が存在したり、同じことを別の条例で定めてあったりする。どの事柄がどの法規に定めてあるか等、その分野に精通した職員なり学者の全面的な協力がなければ、整合性を保つことはまず不可能だ。

府議が「職員人事に関する条例を作ろう!」と思い立っても、そこには既存の法規の壁が立ちはだかる。府職員の力を借りない(借りることができない)と、壁と睨めっこを続けることになる。

地方公共団体が独自に政策や事業を実施しようとした時、国の法律や政令は壁となって立ちはだかる。しかし、時と場合によっては、「議員、それは○○法に抵触するから、そういう職員の処分方法は条例化できませんよ。」と職員の身分保障を擁護する盾となる。

法律があるから自治体単独では変えられない部分と、議員提案条例で変えることのできる部分。詳しい人が精査をすれば、この二つをきっちり分けて、条例で変えられる部分だけを拾い集めて条例化することができるのだろう。

しかし、こと職員人事、身分保障に関する部分で、職員が手を貸すとは思えない。

税、給与、人事分野などでは、その分野の専門家の力を借りなければ、新規条例を制定することはできない。しかし、その分野の専門家は往々にしてその分野の既得権者なので、自己に不利益になるような条例化に手を貸すことはまずない。

大阪府の職員基本条例案は、処分基準の明確化(条例上での明文化)、相対評価による人事評価など、優れた点がいくつもある。知事の裁量に委ねられている部分を条例で制限するのは、自由主義の観点からは望ましいものと考える。

ところが、準特別職員制度と「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」との整合性や、地方公務員法上の人事委員会と人事監察委員会制度との整合性、他の任命権者の権限を知事が介入した点など、問題点も多い。

私としては、この条例案は可決・成立させてほしい。施行された上で、訴訟になって法律に抵触すると判断された部分だけ削ぎ落とされていけばいい。

もし、この条例案が、他法規との整合性がとれていないという理由で廃案、否決となってしまうとなると、「やはり専門家には敵わない。議員提案条例で職員の身分保障にメスを入れることはできない」ということになってしまう。

ちょっと乱暴な言い方になるが、他法規との整合性なんて、後から裁判官が判断すれば良いんだ。整合性を保つのが法制担当者の腕の見せ所なのだが、それはこの際置いておこう。

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