前回記事の続編となります。
副市長人事案に市議会が不同意 行橋市 /福岡 毎日新聞2020年7月31日 地方版
そもそも、副市長って何なのでしょうか。
○お知らせします 行橋市職員の給与
======【抜粋ここから】======
■特別職の報酬等の状況(平成31年4月1日現在)
副市長
給料・報酬月額 708,000円
期末手当 6月期 1.675月分
12月期 1.675月分
計 3.35 月分
======【抜粋ここまで】======
行橋市の場合、副市長の給料は期末手当を合わせて年間10,867,800円となります。
加えて、副市長は常勤の特別職であるため、市町村職員共済組合に加入します。共済組合は一般企業で言うところの厚生年金・健康保険と同じものであり、労使折半ということで、事業主(地方自治体)が保険料の半額を負担金として支払います。社会保険の自治体負担をざっくり15%程度と考えたとき、計算すると約160万円。
給料と社会保険の事業主負担を合わせると、年間で約1,250万円かかる試算になります。
副市長一人の人件費が、年間約1,250万円。
二人置けば年間2,500万円です。
全て税金です。
○地方自治法
============
第百六十一条 都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。
2 副知事及び副市町村長の定数は、条例で定める。
============
副市長を何人置くか、そもそも置くか置かないかについては、自治体ごとに判断し条例で規定する仕組みです。
実際、各自治体はどのくらいの人数を置いているのでしょうか。
○副知事・副市町村長の定数に関する調 (平成30年4月1日現在) 総務省
都道府県の場合、副知事の定数は平均で2.1人。
1,741ある市町村では、副市町村長の定数は平均で1.2人。ほとんどの市町村では副市町村長を一人置き、指定都市などの大きな所では複数置く傾向にあります。また、条例定数を一人としているが実際には副市町村長を置いていないケースや、条例定数を二人としているが実際には一人しか置いていないケースなどもあります。
そんな中、福岡県にある人口7万人程度の自治体・行橋市は、副市長の条例定数を二人としていました。
それを前回、利権副市長を解職して副市長一人体制とました。
今また二人体制にしようとしたわけですが、二人にすることで年1,250万円の追加費用が生じるのですから、その金額に見合うだけの具体的かつ明確な理由を聞きたいところです。
さて、行橋市の田中純市長はどう答えるのでしょうか。
そのため、選任しようとする市長としては、議員に対し
を説明しなければいけません。
特に今回の場合、
という背景があるため、人事案に同意を求める市長としては、平身低頭、
「副市長が一人だったこの期間中、具体的に~~~の面で業務に支障や不都合がありまして、そこで今回、再び二人体制にしたいと思います。皆さんご同意お願いします。」
という説明をするのが筋です。
では、実際にどういう説明をしたのかを見てみましょう。
======【テキスト起こし】======
36:30~
鳥井田幸生議員
「全国に1,500か1,700かあります自治体でですね、人口73,000人の自治体の中でですね、二人副市長制を採っているところはありません。我々も、前回まで21人の議員でやっておりました。一人欠が出ました、死亡によってです。区長連合会から、それで十分できるじゃないかという指摘の下に、20人という形で4月12日の選挙を迎えました。私が感じるところは、先ほどから言ってますけど、『市長の補佐』『市長の補佐』『忙しい』と。過去ずっと、市長・副市長は1名体制でやってきたわけです。私は、それだけ業務が多くなったとは全く思っていません。逆に問いたい、能力不足ですか。捌けないんですか。補佐、補佐、言葉は良いです、しかし、市民は何なんでしょうか。この議会に対して20人という定数削減を求めています。執行部側は、頑としてそれを実行しようとしません。これは市民が望んでいる姿なんでしょうか。そのあたりを踏まえたところで、市長は、今回提案されたものですけど、どうなんでしょうか市長、そのあたりの考え方をお聞きしたいと思います。」
田中純市長
「お答え申し上げます。議員定数の問題と、副市長2名制とは、次元の全く違う議論だという具合に感じております。したがって、鳥井田議員の質問に対しては、次元の違う話だというお答えで申し上げさせていただきます。」
======【テキスト起こし】======
・・・これ、同意を求める人の答弁じゃないですよね。
こんな不誠実な説明をして、議員達が同意をすると思ったのでしょうか。
この田中純市長の議会軽視は今に始まったことではありませんが、これはひどい。
歳出の見直しは自治体に常に課されている至上命題であり、議会側は議員定数削減という形でひとつの成果を出しています。
これに対し、市長側は、副市長2名体制、人件費1,250万円増という施策を打ち出したわけです。市長の能力不足なのか、前にいた二人の副市長の能力不足なのか、市長が徒に業務量を増やして対処できなくなったからなのか、いずれにせよ1,250万円の人件費を投じるのですから、定数削減をし人件費抑制に努めた議会側と対比されるのは当然のことです。
「次元の違う話だ」と言うこの市長の頭の次元が低いと言わざるを得ません。
この市長の説明で、年間1,250万円、4年任期で5,000万円のヘッドハンティングにGOサインを出せる人が居たら、その人は金銭感覚が狂っています。
もし、この田中純市長が、
「議員おっしゃる通り、仕事の捌けない私の能力不足を補うために副市長が二人必要なので、是非ご理解ください。」
って言っていたら、まだ可愛げがあったんですけどね。
======【テキスト起こし】======
44:00~
瓦川由美議員
「市長にお尋ねをしたいと思いますが、今回の副市長に、どのようなことを要望し、どのようなことを期待をされているのかを教えていただきたいと思います。」
田中純市長
「お答え申し上げます。何度も先程来、えー執行部の方から答弁させていただいておりますけど、副市長職とは市長の補助機関ということで明確に法に定められております。つまり、市長を補助する機関でありますので、所管は、大雑把には所管は決めておりますけれども、具体的には、都度都度、まして今現在の我が行政当局の方はいわゆる縦割りをできるだけ排する形で、プロジェクトごと、あるいは全体を総括しながら俯瞰しながら問題を解決していく指針を基本的に強く持っているつもりでございますので、組織図に書いたとおりに全部縦割りでやっていくという考えは持っておりません。したがって、二人の副市長の間では、問題が起きた都度、どちらかの所管であると、この案件では6割一人の副市長で4割ぐらいのウエイトでもう一人の副市長ということがありえるわけでありまして、縦割りでルーティーン的にいけるところは縦割りで組織図のままで分担していただこうと思っておりますけど、問題によっては共同しながら、あるいは私も入れてもらって三者で共同しながらやっていくということでございます。」
======【テキスト起こし】======
「縦割りを排す」と言いながら、基本的には副市長二人に組織図にあるいくつかの部をそれぞれ分担させる、これは縦割りそのものですどうもありがとうございました。
副市長一人が全ての部の業務を総括・監督し、市長を補佐するのであれば、縦割りは排されることになります。ところが、副市長が二人いて組織図に沿った所管を有しているのであれば、問題が起きた都度、これはどちらの副市長が担当するかを調整しなければなりません。調整役の調整が必要になってきます。
年間1,250万円の人件費を費やして、一人の副市長の下に総括されていた市役所の業務をわざわざ縦に割るという愚挙。全国的に見て中小規模の自治体であれば副市長一人体制のところがほとんどであり、この自治体においても過去一人体制だったのですから、二人にしなければいけない明確な理由を市長は示すべきです。
「縦割りを排す → 副市長は二人必要」
という市長のロジックは破綻しています。
どうしても新しい人を副市長にしたいのなら、今いる副市長も解職して、新しい人で副市長一人体制を敷くべきです。
『平成の大合併』の後、少子高齢化・人口減少社会を見据えて、多くの自治体で行政組織のスリム化、事務の効率化に取り組んできました。税収や地方交付税が減少しても自治体財政が持続できるよう、各自治体で様々な取組がされてきました。
その一つとして挙げられるのが、「部制の廃止」です。
○村上市 組織再編計画(案)(前期計画)
======【引用ここから】======
① 部制の廃止
行財政改革の計画期間である今後8年間の中で、356人の職員が定年退職し3割の補充に留めることから、全体で249人の減を予定しており、市の人口についても今後減少が予測される中で、組織規模、人口規模に見合った組織を作るため、また、いわゆる頭でっかちな組織を避けるためにも管理職を減らし、スリム化を図るために平成23年度から部制を廃止します。
======【引用ここまで】======
○銚子市 平成30年6月 市議会定例会 市長あいさつ
======【引用ここから】======
行政組織再編、部制から課制へ
4月から部制から課制に移行し、市役所の組織が大きく変わりました。この議会から新たに答弁に加わる課長も多くいますが、よろしくお願い致します。課制移行に伴う効果と課題を検証しながら、組織改変の目的であるスピード感をもった意思決定、コミュニケーションの円滑化、業務の効率化、市民サービスの向上に繋げてまいります。
======【引用ここまで】======
多くの市町村では、市町村長、副市町村長の下に部、課、係という組織が置かれており、その中で
部長 ー 課長 ー 係長 ー ヒラ職員
という職員の階層、稟議のラインが設定されています。
ここで、部という枠組みを無くしてしまえば、職員の階層が
課長 ー 係長 ー ヒラ職員
とシンプルになり、稟議書に印鑑を押す人数が減るので意思決定がスムーズになります。また、部長は職員中で最も高給になっているのが常なので、このポストを廃止すればその分人件費の削減、抑制につながります。
行橋市では部制を廃止した、かと言えばそうではありません。各部長ポストは健在。
しかも・・・
○平成30年6月第10回行橋市議会 定例会会議録(第1日)
======【引用ここから】======
最初に、機構改革について、でございます。
本定例会に条例改正案を上程させていただいておりますが、8月に機構改革に着手したいと考えております。
主な内容といたしましては、政策実現しやすい体制づくりのため、政策部署の充実を図るとともに、各種政策・各部間の調整役及びまとめ役も担う市長公室を新設する予定でございます。
======【引用ここまで】======
○行橋市事務分掌条例
============
(部の設置)
第2条 市の内部組織として、次に掲げる部を置く。
(1) 市長公室
(2) 総務部
(3) 市民部
(4) 福祉部
(5) 都市整備部
(6) 産業振興部
(7) 環境水道部
============
○行橋市職員の職の設置に関する規則
============
別表1 事務職員及び技術職員の職
1 公室長及び部長
============
と、わざわざ、調整役・まとめ役の部を新設しているんです。
各部間の調整・まとめを行う市長公室の長を部長級ポストとして追加し、さらに、
○行橋市事務分掌条例施行規則
============
(役付職員)
第5条
4 前3項のほか、市長公室秘書課に市長が推進する政策に関する事務及び各部との調整を図る者として、政策調整監を置くことができる。
============
と、その下に調整役の役付職員を別枠で置いています。
各部を横断的に統括する副市長を二人置き、
各部のまとめ役の部長級ポストを新設し、
その下に各部との調整を図る役付職員を置く。
調整役ばかり、こんなに要らないでしょう?
村上市で問題視されていた、管理職の多い「頭でっかちな組織」そのものです。もし仮に、この副市長二人、市長公室長、政策調整監の仲が良くないなんて事になれば、銚子市長が言っていた「スピード感をもった意思決定、コミュニケーションの円滑化」を妨げることになってしまいます。「船頭多くして船山に登る」状態です。
※ちなみに、宮若市では、部制の廃止に伴い従来の部次長を調整監としています。
二人目の副市長を置くことで追加費用1,250万円がかかっていますが、それだけでなく、この市長公室長と政策調整監の人件費も含めたら、田中純市長になってから追加で幾ら増えたことでしょう。
団塊世代の退職のタイミングに合わせて職員のポストも見直し、新規採用数も絞り、使用頻度の低い公共施設を廃止したり地元に払い下げたりして、固定費の削減に努めていたんです。
そんな中、真逆の方向に突っ走る自治体があったんです。
ポストを増やす、職員採用一次試験で受験者全員を合格させる、新規施設を建てる、おまけに民間の美術館を今のタイミングでわざわざ市営にしてたんです。
走る方向が逆なんです。
おかしいなー、逆の方向に走っていってるなー、そうしたら背中がぞぞぞーっときたんで、ふと振り返って見ると、その自治体の姿が見えないんです。
よく見ると、財政の崖から転落してたんです。
副市長人事案に市議会が不同意 行橋市 /福岡 毎日新聞2020年7月31日 地方版
そもそも、副市長って何なのでしょうか。
【副市長にかかる人件費】
○お知らせします 行橋市職員の給与
======【抜粋ここから】======
■特別職の報酬等の状況(平成31年4月1日現在)
副市長
給料・報酬月額 708,000円
期末手当 6月期 1.675月分
12月期 1.675月分
計 3.35 月分
======【抜粋ここまで】======
行橋市の場合、副市長の給料は期末手当を合わせて年間10,867,800円となります。
加えて、副市長は常勤の特別職であるため、市町村職員共済組合に加入します。共済組合は一般企業で言うところの厚生年金・健康保険と同じものであり、労使折半ということで、事業主(地方自治体)が保険料の半額を負担金として支払います。社会保険の自治体負担をざっくり15%程度と考えたとき、計算すると約160万円。
給料と社会保険の事業主負担を合わせると、年間で約1,250万円かかる試算になります。
副市長一人の人件費が、年間約1,250万円。
二人置けば年間2,500万円です。
全て税金です。
【副市長の人数】
この副市長の人数については、地方自治法に規定があります。○地方自治法
============
第百六十一条 都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。
2 副知事及び副市町村長の定数は、条例で定める。
============
副市長を何人置くか、そもそも置くか置かないかについては、自治体ごとに判断し条例で規定する仕組みです。
実際、各自治体はどのくらいの人数を置いているのでしょうか。
○副知事・副市町村長の定数に関する調 (平成30年4月1日現在) 総務省
都道府県の場合、副知事の定数は平均で2.1人。
1,741ある市町村では、副市町村長の定数は平均で1.2人。ほとんどの市町村では副市町村長を一人置き、指定都市などの大きな所では複数置く傾向にあります。また、条例定数を一人としているが実際には副市町村長を置いていないケースや、条例定数を二人としているが実際には一人しか置いていないケースなどもあります。
そんな中、福岡県にある人口7万人程度の自治体・行橋市は、副市長の条例定数を二人としていました。
それを前回、利権副市長を解職して副市長一人体制とました。
今また二人体制にしようとしたわけですが、二人にすることで年1,250万円の追加費用が生じるのですから、その金額に見合うだけの具体的かつ明確な理由を聞きたいところです。
さて、行橋市の田中純市長はどう答えるのでしょうか。
【杜撰な市長答弁】
副市長の解職は市長の専権事項ですが、副市長の選任には議会の同意が必要です。そのため、選任しようとする市長としては、議員に対し
・二人目の副市長ポストが必要であること
・選任しようとする対象者を選んだ理由
・選任しようとする対象者を選んだ理由
を説明しなければいけません。
特に今回の場合、
・条例改正して副市長の定数を二人に増やしたのはこの市長。
・二人いた副市長のうち一人を解職して一人体制にしたのもこの市長。
・二人いた副市長のうち一人を解職して一人体制にしたのもこの市長。
という背景があるため、人事案に同意を求める市長としては、平身低頭、
「副市長が一人だったこの期間中、具体的に~~~の面で業務に支障や不都合がありまして、そこで今回、再び二人体制にしたいと思います。皆さんご同意お願いします。」
という説明をするのが筋です。
では、実際にどういう説明をしたのかを見てみましょう。
======【テキスト起こし】======
36:30~
鳥井田幸生議員
「全国に1,500か1,700かあります自治体でですね、人口73,000人の自治体の中でですね、二人副市長制を採っているところはありません。我々も、前回まで21人の議員でやっておりました。一人欠が出ました、死亡によってです。区長連合会から、それで十分できるじゃないかという指摘の下に、20人という形で4月12日の選挙を迎えました。私が感じるところは、先ほどから言ってますけど、『市長の補佐』『市長の補佐』『忙しい』と。過去ずっと、市長・副市長は1名体制でやってきたわけです。私は、それだけ業務が多くなったとは全く思っていません。逆に問いたい、能力不足ですか。捌けないんですか。補佐、補佐、言葉は良いです、しかし、市民は何なんでしょうか。この議会に対して20人という定数削減を求めています。執行部側は、頑としてそれを実行しようとしません。これは市民が望んでいる姿なんでしょうか。そのあたりを踏まえたところで、市長は、今回提案されたものですけど、どうなんでしょうか市長、そのあたりの考え方をお聞きしたいと思います。」
田中純市長
「お答え申し上げます。議員定数の問題と、副市長2名制とは、次元の全く違う議論だという具合に感じております。したがって、鳥井田議員の質問に対しては、次元の違う話だというお答えで申し上げさせていただきます。」
======【テキスト起こし】======
・・・これ、同意を求める人の答弁じゃないですよね。
こんな不誠実な説明をして、議員達が同意をすると思ったのでしょうか。
この田中純市長の議会軽視は今に始まったことではありませんが、これはひどい。
歳出の見直しは自治体に常に課されている至上命題であり、議会側は議員定数削減という形でひとつの成果を出しています。
これに対し、市長側は、副市長2名体制、人件費1,250万円増という施策を打ち出したわけです。市長の能力不足なのか、前にいた二人の副市長の能力不足なのか、市長が徒に業務量を増やして対処できなくなったからなのか、いずれにせよ1,250万円の人件費を投じるのですから、定数削減をし人件費抑制に努めた議会側と対比されるのは当然のことです。
「次元の違う話だ」と言うこの市長の頭の次元が低いと言わざるを得ません。
この市長の説明で、年間1,250万円、4年任期で5,000万円のヘッドハンティングにGOサインを出せる人が居たら、その人は金銭感覚が狂っています。
もし、この田中純市長が、
「議員おっしゃる通り、仕事の捌けない私の能力不足を補うために副市長が二人必要なので、是非ご理解ください。」
って言っていたら、まだ可愛げがあったんですけどね。
======【テキスト起こし】======
44:00~
瓦川由美議員
「市長にお尋ねをしたいと思いますが、今回の副市長に、どのようなことを要望し、どのようなことを期待をされているのかを教えていただきたいと思います。」
田中純市長
「お答え申し上げます。何度も先程来、えー執行部の方から答弁させていただいておりますけど、副市長職とは市長の補助機関ということで明確に法に定められております。つまり、市長を補助する機関でありますので、所管は、大雑把には所管は決めておりますけれども、具体的には、都度都度、まして今現在の我が行政当局の方はいわゆる縦割りをできるだけ排する形で、プロジェクトごと、あるいは全体を総括しながら俯瞰しながら問題を解決していく指針を基本的に強く持っているつもりでございますので、組織図に書いたとおりに全部縦割りでやっていくという考えは持っておりません。したがって、二人の副市長の間では、問題が起きた都度、どちらかの所管であると、この案件では6割一人の副市長で4割ぐらいのウエイトでもう一人の副市長ということがありえるわけでありまして、縦割りでルーティーン的にいけるところは縦割りで組織図のままで分担していただこうと思っておりますけど、問題によっては共同しながら、あるいは私も入れてもらって三者で共同しながらやっていくということでございます。」
======【テキスト起こし】======
「縦割りを排す」と言いながら、基本的には副市長二人に組織図にあるいくつかの部をそれぞれ分担させる、これは縦割りそのものですどうもありがとうございました。
副市長一人が全ての部の業務を総括・監督し、市長を補佐するのであれば、縦割りは排されることになります。ところが、副市長が二人いて組織図に沿った所管を有しているのであれば、問題が起きた都度、これはどちらの副市長が担当するかを調整しなければなりません。調整役の調整が必要になってきます。
年間1,250万円の人件費を費やして、一人の副市長の下に総括されていた市役所の業務をわざわざ縦に割るという愚挙。全国的に見て中小規模の自治体であれば副市長一人体制のところがほとんどであり、この自治体においても過去一人体制だったのですから、二人にしなければいけない明確な理由を市長は示すべきです。
「縦割りを排す → 副市長は二人必要」
という市長のロジックは破綻しています。
どうしても新しい人を副市長にしたいのなら、今いる副市長も解職して、新しい人で副市長一人体制を敷くべきです。
【部制の廃止】
話は変わりますが、行革に目を向けてみましょう。『平成の大合併』の後、少子高齢化・人口減少社会を見据えて、多くの自治体で行政組織のスリム化、事務の効率化に取り組んできました。税収や地方交付税が減少しても自治体財政が持続できるよう、各自治体で様々な取組がされてきました。
その一つとして挙げられるのが、「部制の廃止」です。
○村上市 組織再編計画(案)(前期計画)
======【引用ここから】======
① 部制の廃止
行財政改革の計画期間である今後8年間の中で、356人の職員が定年退職し3割の補充に留めることから、全体で249人の減を予定しており、市の人口についても今後減少が予測される中で、組織規模、人口規模に見合った組織を作るため、また、いわゆる頭でっかちな組織を避けるためにも管理職を減らし、スリム化を図るために平成23年度から部制を廃止します。
======【引用ここまで】======
○銚子市 平成30年6月 市議会定例会 市長あいさつ
======【引用ここから】======
行政組織再編、部制から課制へ
4月から部制から課制に移行し、市役所の組織が大きく変わりました。この議会から新たに答弁に加わる課長も多くいますが、よろしくお願い致します。課制移行に伴う効果と課題を検証しながら、組織改変の目的であるスピード感をもった意思決定、コミュニケーションの円滑化、業務の効率化、市民サービスの向上に繋げてまいります。
======【引用ここまで】======
多くの市町村では、市町村長、副市町村長の下に部、課、係という組織が置かれており、その中で
部長 ー 課長 ー 係長 ー ヒラ職員
という職員の階層、稟議のラインが設定されています。
ここで、部という枠組みを無くしてしまえば、職員の階層が
課長 ー 係長 ー ヒラ職員
とシンプルになり、稟議書に印鑑を押す人数が減るので意思決定がスムーズになります。また、部長は職員中で最も高給になっているのが常なので、このポストを廃止すればその分人件費の削減、抑制につながります。
【船頭多くして船山に上る】
話は行橋市に戻ります。行橋市では部制を廃止した、かと言えばそうではありません。各部長ポストは健在。
しかも・・・
○平成30年6月第10回行橋市議会 定例会会議録(第1日)
======【引用ここから】======
最初に、機構改革について、でございます。
本定例会に条例改正案を上程させていただいておりますが、8月に機構改革に着手したいと考えております。
主な内容といたしましては、政策実現しやすい体制づくりのため、政策部署の充実を図るとともに、各種政策・各部間の調整役及びまとめ役も担う市長公室を新設する予定でございます。
======【引用ここまで】======
○行橋市事務分掌条例
============
(部の設置)
第2条 市の内部組織として、次に掲げる部を置く。
(1) 市長公室
(2) 総務部
(3) 市民部
(4) 福祉部
(5) 都市整備部
(6) 産業振興部
(7) 環境水道部
============
○行橋市職員の職の設置に関する規則
============
別表1 事務職員及び技術職員の職
1 公室長及び部長
============
と、わざわざ、調整役・まとめ役の部を新設しているんです。
各部間の調整・まとめを行う市長公室の長を部長級ポストとして追加し、さらに、
○行橋市事務分掌条例施行規則
============
(役付職員)
第5条
4 前3項のほか、市長公室秘書課に市長が推進する政策に関する事務及び各部との調整を図る者として、政策調整監を置くことができる。
============
と、その下に調整役の役付職員を別枠で置いています。
各部を横断的に統括する副市長を二人置き、
各部のまとめ役の部長級ポストを新設し、
その下に各部との調整を図る役付職員を置く。
調整役ばかり、こんなに要らないでしょう?
村上市で問題視されていた、管理職の多い「頭でっかちな組織」そのものです。もし仮に、この副市長二人、市長公室長、政策調整監の仲が良くないなんて事になれば、銚子市長が言っていた「スピード感をもった意思決定、コミュニケーションの円滑化」を妨げることになってしまいます。「船頭多くして船山に登る」状態です。
※ちなみに、宮若市では、部制の廃止に伴い従来の部次長を調整監としています。
二人目の副市長を置くことで追加費用1,250万円がかかっていますが、それだけでなく、この市長公室長と政策調整監の人件費も含めたら、田中純市長になってから追加で幾ら増えたことでしょう。
(以下、稲川淳二風に)
全国的にですね、人口が減るのだから職員数や施設数もそれに合わせて減らしていかなきゃいけないと、多くの自治体は合理化に取り組んでいたんです。団塊世代の退職のタイミングに合わせて職員のポストも見直し、新規採用数も絞り、使用頻度の低い公共施設を廃止したり地元に払い下げたりして、固定費の削減に努めていたんです。
そんな中、真逆の方向に突っ走る自治体があったんです。
ポストを増やす、職員採用一次試験で受験者全員を合格させる、新規施設を建てる、おまけに民間の美術館を今のタイミングでわざわざ市営にしてたんです。
走る方向が逆なんです。
おかしいなー、逆の方向に走っていってるなー、そうしたら背中がぞぞぞーっときたんで、ふと振り返って見ると、その自治体の姿が見えないんです。
よく見ると、財政の崖から転落してたんです。