かみいた落語塾

噺家さんの指導のもと、小咄から古典落語までしっかり学べる、老若男女うぇるかむの落語団体、上板橋落語塾のかわら版!!

山の雪(権助小噺)

2008年02月05日 | 課題小噺
<登場人物>
ある商店の旦那、奉公人の権助、町内の男A、町内の男B

「鵜(う)の真似をする烏(からす)水に溺れる」と言うたとえがありますが、
他人(ひと)の入れ知恵というものは、うまくいかないもんで・・・

旦那「おい、おい、権助や」
権助「はい、あんか用かね」
旦「お前いま、表で話をしていたが、お客さまかい?」
権「なぁ~に。オラが掃除ぶっとったら『権助どん、今日はえかく寒いだね』ちいから
  『オラのせいではねえ』って、そ言っただ」
旦「なぜそんな無愛想なことを言うんだ。お前は人間は素直だが、愛嬌がない。
  人様が寒いとおっしゃったら、お前は山国育ちなんだから『お寒うございます。この
  ぶんですと、山は雪でございましょう』ぐらいなことを言っときな。口のきき方には気をつけ
  なさい」
権「へい、わかりやした」

A「おい、見ろよ、権助が掃除してらあ。あんな無愛想な奴はないよ。俺が『寒いね』と
 言ったら、『オラのせいじゃねえ』って、こんな事言いやがる。おもしれから、からかってやろ
 うじゃねか。権助さん、お早う」
権「はい、お早うごぜえます(愛想よく)」
A「あれ、いつもと調子が違うね。今日は寒いね」
権「はい、えかく寒いでがす。このぶんじゃと、山は雪だんべ」
A「なんだい、愛想良くなっちゃったよ」

これから、毎日「雪だんべ」「雪だんべ」とやってましたが、寒い日がそうは続きませんで・・・

B「権助さん、お早う」
権「お早うごぜえます」
B「今日はやけにあったかいね」
権「はい、えかくあったけえだ。このぶんじゃと山は、、、火事だんべ」