あるとき、正面からザトウクジラの親子が泳いできた。
ところが、この旅行中は水中カメラ(ニコノスⅤ)のフィルム巻き上げの調子が悪かった。
これは完全に私の責任で、手入れが悪かったために
内部のどこかに塩の結晶が噛んでいたのである
まったく、わざわざ南半球まで来る前に、どうして点検しておかなかったのか。
であるからして、せっかくのシャッターチャンスを目の前にして、
カメラをああでもないこうでもないといじり回すハメになったのであるが、
ふと前を見るとクジラがやけに近くまできていた。
なんでよけてないの?
まあ、急に動くと向こうが驚いてかえって危ないかと判断して、
じっとしていたらそのままぶつかった。
母クジラの巨大な胸ビレに激突し、擬音をつけると「ドゴォ」という感じ。
厚さ約7~8cmの木の板で殴られたようだった。
もちろん木の板の横の部分で殴られたということで。
かなりの衝撃だったが、ウェットスーツを着ていたので
衝撃が吸収されたので助かった。
私のウェットスーツは厚さ5mmのネオレーンゴム製で、
ネオプレーンゴムというのはゴムの中に細かい気泡が
無数に含まれていて弾力があるのだ。
更に続けて、次にはフジツボだらけの尾ビレが近づいてきたから、
今度はかなり必死によけたのであった
クジラは悠然と泳ぎ去っていった。
どうもクジラというのは、人間に激突したぐらいでは動じないおおらかな性格の持ち主であるらしい。
なんで避けないのかと書いたけど、あとで現像から上がってきた写真を見たら、
むこうはいちおう身をよじって避けているので、
残りは私が避けないといけなかったようである。
私はこの経験を通して、クジラには細かい配慮は期待できないという教訓を得たのであった。
ガイドによると、この母クジラは大きさ13mということであった。
撮影地 トンガ ババウ諸島
Vava'u Group, Tonga
(2001年9月)
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