「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

聖ペテロ大聖堂 St Peter's Cathedral

2018-01-22 | ベルファストのスポット
今日は関東では2014年以来の記録的な大雪と伺いました。
子供の頃は、学校が休みになるので、雪が降ると嬉しかった思い出があります。空を舞う白雪を見て、心がとても躍ったものでした。しかし、大人になったら、降雪と聞けば「うわ、めんどくさ」と思うようになってしまいました。心が汚れた大人になってしまったものです。我ながら残念です。
とにかく、皆さん、雪道に足を滑らせたりしないように気を付けて頂きたいです。

さて、本日は午後から研究室を抜けて、大聖堂を訪ねました。
聖ペテロ St Peterの名を冠するローマカトリックの大聖堂です。街の中心部から北アイルランド紛争の傷痕が残る西ベルファストにつづくフォールズロード Falls Roadのすぐ脇道にあります。



上の写真はFalls Roadの周辺です。ピースウォール Peace Wallで有名な通りでもあります。Peace Wallについて正しく説明するのはすこし難しいのですが、簡単に言うと「アイルランド独立派とイギリス帰属派が住む地域を分断する壁」といったところでしょうか。対立する住民同士の争いを減らすために、お互いがお互いから守るために、彼らは街に壁を築いたのです。このように1998年のベルファスト合意から20年が経った今でも北アイルランド紛争が遺した傷は残っているのですね。
写真のように、様々なメッセージが込められた壁が延々と続いています。

ローマカトリックの大聖堂に何故足を運んだかというと、第一に、最近あまりにも運動不足であると感じたからでした。
明るくて暖かい昼間のうちに大聖堂を観に行こうと思いました。医学部キャンパスはMedical Biology Centre(MBC)がある地区とRoyal Victoria Hospitalがある地区に分かれていて、講義やセミナーなどでその2地区を歩いて往復する時に陸橋を通る必要があるのですが、そこから一望できるBelfastの光景がいつも面白くて私はすこし気に入っています。そして、その光景の中にある特徴的な二柱の大聖堂をいつか訪ねてみようとは思っていたのです。
第二に、実は、私は中学高校時代ローマカトリック系の学校に通っていたからです。当時は(今も?)その学校が県内で一番の進学校であったからで、宗教的な理由で進学先を選んだ訳ではありませんでした。私は、残念ながら、神という存在を信じていませんし、宗教家という人種に頼りたいとは思いませんが、「何かを信じたい」という気持ちだけは理解できます。何かにすがりたくなるような時は誰にでもあると思っていて、しかし、私はそういう行き詰まって時こそ「自分で突破したい」と願う性格でした。そういう人間ですから、思春期であったこともあって、私は常に母校やキリスト教を懐疑的に見てきたように思います。とはいえ、キリスト教を身近に感じてきたのも事実であり、この大聖堂のような施設に対してはいつも興味深さを覚えます。

いわゆるカトリック系の教育を受けたことについて、私はべつにある種の洗脳教育を受けたとまでは思っていないのですが、自覚している面とおそらくは無自覚な面の両方で、色々な影響を受けたのだろうと今は考えています。好奇心からローマカトリックの歴史や教義も自分で色々と調べたりした時期もありました。その在り方については色々と思うところもありますが、しかし、良くも悪くも母校で受けた教育が今の私を形成する要素の一つであることは確かです。原発事故被災地の福島にボランティアで行ったのも、その後そこでしばらく臨床に従事したのも、もしかしたら「母校で学んだ何か」の精神的発露だったのかもしれません。

とにかく素晴らしい大聖堂をじっと見上げていると、すこし心が晴れるような気がしました。最近、進退を含めて色々と思い悩んでいるのですが、ちょっぴり気分転換になりましたね。荘厳な大聖堂には、見る者の心に作用する、不思議な魔力があるのかもしれません。



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