セリカ魂

「初代セリカに乗りたい!」
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あいちトリエンナーレ2019/喜楽亭

2019年08月30日 21時41分35秒 | つぶやき

豊田エリアでまだ行ってなかった喜楽亭を訪れました。産業文化センターの駐車場に停めたらすぐ目の前にあった。きらく亭といえば大食いに人気のお店が有名だけど、ここが元ネタ?


いかにもなステッカーを貼った車が入口に居て、斜めに停めてあったのでちょっと迷惑。ステッカーをアピールしたくて無理やり前向き駐車?紅葉だし、ホイールベース長いし、でも迷惑。


T04 ホー・ツーニェン「旅館アポリア」
文化財としての価値を持つ近代和風建築を一棟丸ごと使っての展示。アポリアとは「行き詰まり」「問題解決能力の欠如」「困惑」など哲学用語らしい。形而上学ってエヴァ以来だなw


玄関の造りは決して「豪華」な感じではありません。普通の料理旅館であって料亭ではないってことですね。戦前は養蚕業、戦時中は軍、戦後はトヨタで賑わったらしい。


玄関には駐車場の精算機が置かれています。これで3時間OKなので落ち着いて鑑賞出来ますね。


ここも無料らしくチケットの提示を求められなかった。つまり豊田市駅周辺はどこも無料で鑑賞出来るってことか。受付で順路が書かれた間取り図を貰いました。どうやら4つの部屋で上映しているらしい。


廊下は薄暗くて電球の色合いも相まっていい感じ。大勢のお客さんがこの廊下を行き来したのですね。時代を感じさせる雰囲気が作品にもマッチしています。


一ノ間「波」(12分)
ツーニェンとYoko・Tomoの文通として描かれていた。内容は喜楽亭の歴史と大島メモについて。ナレーションはマルチトラックで同じ台詞を一人は普通に語り、もう一人はほんの少しタイムラグを持たせて囁くように語る。それらが別々のスピーカーから聞こえるので妙な感覚に陥ります。
映像に出てくる人々は顔がぼかされていてノッペラボウ。編集のタイミングが上手でセンスの良さを感じる。


スピーカーの大音量で障子がビリビリと振動して、それが臨場感を増大させます。バラバラバラというのはヘリの音?いや、戦闘機のプロペラをイメージしているのでしょう。
豊田市の浄水町にはかつて草薙特攻隊の飛行場があり、隊員がここ喜楽亭に宿泊することもあったという。


映像はこのプロジェクターから。


二ノ間「風」(12分×2)
ここでは背中合わせに2つスクリーンを設置していて、一つ見終えたら日当たりの良い廊下を回り込んで部屋に入り直してから反対側を鑑賞します。
一つ目のスクリーンでは特攻隊員「栄」から家族へ宛てた手紙と草薙隊の「哀史」を、KazueとYokoから送られた手紙として紹介しています。
二つ目のスクリーンでは「神風」について。更には日本-ロンドン間を飛んだ飯沼正明の偉業とその最期にも言及。それらをTomoとの手紙のやり取りの形式で描いています。
最後に「プロペラ」が深層心理に刷り込まれた。


3つ目の部屋は階段を上がって二階にありました。お客さんやお店の人が行き交っていた当時の光景が目に浮かぶようです。勿論、その中には若い特攻隊員も居たはず。


三ノ間「虚無」(12分×2)
階段を上がろうとして余りの「闇」に躊躇した。「どうぞ、おあがり下さーい」の声に促されて恐る恐る上がるとまるで善光寺のお戒壇めぐり。右奥へ行くように案内され、漆黒の暗がりの中を摺り足で進むと廊下は行き止まりでその廊下に座って映像を鑑賞するシステムになっていた。
うっわ、奥に先客居たし!(;´Д`)

 

廊下から見えるよう、桟には障子紙が貼られていない。敢えて映像が無い「字幕のみ」の演出にすることで芭蕉の研究から「絶対無」の概念への到達を表現している?哲学的な分野に踏み込んでいて難解な内容でした。
ここもツーニェンとTomoの手紙のやり取り形式だけど、ん?スクリーンの向こうに「何か」透けて見えるぞ。

映像が終わると照明が点いて「何か」の正体が大きな送風機だと分かった。途端に前の部屋で刷り込まれたプロペラに対する恐怖心が襲って来て、気付くと怯えていた。

四ノ間「子どもたち」(12分×2)
最初の部屋は「故障で映像が出なくて音だけです」と案内された。なので目を閉じてナレーションに聞き入ることにしました。軍艦マーチを歌う人々、プロパガンダのためシンガポールに送られた小津安二郎、それらがYokoからの手紙として描かれる。


回り込んでもう一方の部屋で最後の映像を見ます。小津安二郎の映像だけでなく横山隆一のアニメも登場。小津はシンガポール、横山はインドネシアに派遣されて戦意高揚のプロパガンダ活動をした。「戦争とマンガ」「ジャカルタ記」を引用しつつ、YokoとTomoからの手紙のやり取りとして紹介されています。

戦時中に米軍は宣伝ビラで「フクちゃん」を無断使用した。戦後50年が過ぎた頃に米国大使館にシャレで原稿料を請求すると、大使館は喜んでそれを支払ったエピソードがあるそうです。

全ての映像を見終えた感想は「とにかくセンスがいい!」このトリエンナーレで初めて映像作品をいいと感じました。都合つけばもう一度見たいかも。機材トラブルで映像が出なかったのって実は演出?スタッフさんに尋ねてみたら「暑さでよく故障するんですよ」「この間なんて幾つも映らなくなって」。じゃあ見れなかった映像目当てにまた来なきゃですね。

作者のツーニェンはシンガポール出身。かつてはイギリスの植民地で第二次大戦では日本が支配した。祖国の歴史を意識した時に生じる感情は「反日」?日本人はそう考えてしまいがち。
「イギリスは我々を奴隷として扱った」「日本は我々を学校に通わせてくれた」戦時下を生きた現地の方々に意外と親日が多い話も聞く。

作品からは際立った反日も親日も感じられなかった。淡々とした描き方に潜む真意はどっちだ?

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追記です。9月3日に二度目の訪問をしました。


前回行った翌日はシステムメンテナンスで閉館したみたい。やはりプロジェクターが映らないのはマズイから?どうやら四ノ間の故障って本当に演出じゃなかったのねw


スピーカーの音に共振していると思ったけれど違いました。下の方に振動を生み出す機器が取り付けられている!これがタイミング良く作動していたのね。

 

三ノ間は一箇所で2つ上映するので他の部屋より時間が掛かるけれど狭くて一度に見れる人数が少ない。なので常に観客が滞留して満員状態が続いていました。するとスタッフさんから「先にこちらを見て下さい」と四ノ間に案内されたけれど、これって最悪ですよ?二ノ間と三ノ間は続けて見なきゃ!
作家の演出意図が崩れてしまうので、どれだけ待たせても見る順番を守らせるべきでは?スタッフさんは作品の本質を理解しているのだろうか?

改めて鑑賞してツーニェンの狙いが分かった気がする。シンガポール出身のツーニェンはYokoやTomoやKazueとの交流を通じて日本を知ろうと努力する。シンガポールはイギリスの植民地だったけれど独立するため日本に協力を求め、その後占領された。彼にとって祖国だけでなく日本の歴史を知ることは当たり前のこと。その当たり前のことを「日本人はやっている?」

第二次大戦に突き進んだ要因の一つが「西洋は行き詰まり東洋こそが中心たるべき」という大東亜思想。それを推進したのが京都学派だけど、当の日本人で京都学派を知る人ってどの位居る?日本の学校は近代史をちゃんと教えてる?
そんな皮肉を潜ませつつ、交流の大切さを提起しているのでは?



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