路傍の露草 ~徒然なる儘、読書日記。時々、映画。~

“夏の朝の野に咲く、清廉な縹色の小花”
そう言うに値する小説や映画等の作品評。
及び生活の単なる備忘録。

小泉堯史監督『明日への遺言』

2008年04月12日 | Movie[映画]
仕事に追われて、なんやかやで、2月6日からブログ放置状態。もう4月。

なのに、テンプレートが「雪の華」(和装女性に降る雪)はないだろうと、
「アジアン」に変えてみた。土色に、浅葱色の文様。蓮の花はよい。
アジアへ旅行にいきたい今日この頃。

旅行はもちろん、興味があっても、金もないが時間もない(涙)ということで、
昨年秋から今年春にかけて、ひさびさに観たい映画が目白押しなのだが、
観られないうちに公開終了、なんてことも多々。

●観られた映画≪喜≫:
『ベティ・ペイジ』(12月公開)
『スウィーニー・トッド ~フリート街の悪魔の理髪師』(1月公開)
『エリザベス ゴールデン・エイジ』(2月公開)
『人のセックスを笑うな』(1月公開)

●観られなかった映画≪哀≫:
『4分間のピアニスト』(11月公開)
『レディ・チャタレー』(11月公開) →この2作はもう間もなくDVD発売。早い!
『レンブラントの夜警』(12月公開)
『PEACE BED ~アメリカVSジョン・レノン』(12月公開)
『シルク』(1月公開)
『ラスト、コーション』(1月公開)
『マリア・カラス最後の恋』(1月公開)
『眠れる美女』(2月公開)

パッと頭に浮かぶだけでもこれだけ。記憶から飛んだものも含めれば、
観れなかったものはまだまだあるはず。


そして、本題『明日への遺言』。
手帳を開いてみれば試写会は2月中、ロードショーは3月1日。
もしかしたら劇場公開も終わっているかもしれないが。。。



『明日の遺言』は、実話を元にした映画。
「岡田中将」という実在の人の、法廷での闘いを描く。

…というと、最近ではクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』を思い出す。
あれも、硫黄島の戦いを率いた「栗林中将」という実在の人を描いている。


『明日への遺言』は、第二次世界大戦中に無差別爆撃を行った米軍搭乗員を
処刑した罪に問われ、戦犯裁判にかけられた岡田中将が、逃げることなく
自ら全責任を負い、部下を守ろうとする潔い姿を描く。

その誇り高き姿に、敵国の検察官や裁判官まで心動かされていったというのは
信じがたい話だが、実話らしい。

この映画の狙いとしては、【誇りや品格を失った現代にこそ観て欲しい】とのこと。
確かに、「○○の品格」という言葉がブームになっている今の日本。
もともとは学者の著書で使われた言葉が、今では一般の女性ファッション誌の
ページタイトルにも使われいるのを目にし、自虐的だなぁ…と思う。
(お笑い芸人が話題の有名人を面白おかしくパロディーにするのと同じだが、その対象が「品格」なんだから、嘆かわしい。しかし、これが今の日本の現状だ)


さて。セットは法廷とせいぜい風呂、囚人部屋ぐらいでいいので、
そのあたりの経費がさぞ浮いただろう…なんて観ているときに思ってしまうほど、
場面展開がとにかくなく、ひたすら法廷で喋ってるだけ。
そして、重い空気がどーんと立ち込めているので、観る人を選ぶ映画である。
10~20代の、遊ぶことばかりに夢中の若者が観たら、確実に睡眠時間となるにちがいない。

比較すれば、激しいアクションと大きな感情表現で展開される『硫黄島からの手紙』のほうが、万人向けだろう。
ハリウッド映画と日本映画の違いか。

映画も重いが、試写会場では、60代以上と見受けられる人たちが多く、年齢層が高かったせいか、なおさら雰囲気が重かった。
終盤では、あちらこちらから、すすり泣く声が漏れ聞こえてきた。

私はというと、もちろん、戦争を描く文芸映画として、厳粛に受け止めたものの、
感情移入はなく、終始、冷静に客観的に「眺めて」いた。

それは、これが、前述の『硫黄島~』のように殊更感情に訴えるタイプの作品でなく、
淡々と見せる記録映画のように制作してあるから、ということだけではない。

軍人の誇り高い生き様から、いま失われた品格を見よ―と言われても、
二次大戦の日本の悪事を徹底的に叩き込まれて教育された世代にとっては、
攻撃「された」側でなく、「した」側を描いたところで、何を言われても見せられても、
ますます客観的になるだけで、同情も涙もない。


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