ケロロ小隊はペコポンを侵略し、
僕以外のメンバーはケロン星に帰っていった。
僕はというと、身寄りのない小雪殿の傍に残りたい、と本部にお願いして、
小雪殿が高校を卒業するまでという期限付きで、なんとかペコポンに残らせてもらった。
今日が、小雪殿の卒業式である。
「小雪殿…」
「ん?どうしたの?ドロロ」
「あっ…いや…何でもないでござる。
いってらっしゃい」
「ドロロ…」
「何でござるか?小雪殿」
「なっ…何でもないよ、ごめん。行ってきます!」
数日前から別れを意識してからか、こんな調子の会話しかできてなかった。
長い間一緒に暮らしていた少女は、少女から女性に変わっていった。
随分と大人になったもんだ。
小雪殿だけじゃなく、夏美殿や冬樹殿、桃華殿、サブロー殿も、みんな大人になっていった。
尻尾があるかないか、顔の色が白が多いか自分の色が多いかしか違いのない僕たちケロン人には、まず経験できないこと。
あと数時間で、さよならだと思うと、やはり悲しい。
でも、他のメンバーよりはペコポンに長く滞在できただけでも、いいことだって思わなくちゃ。
まとめた荷物の中には、ケロン星へ先に帰ったメンバーからの手紙がたくさんある。
【冬樹殿は、どうしてるでありますか?】
【夏美に変な虫は付いてないか?】
【モモッチに逢いたいですぅ~】
【サブローのことが気になるなんて言ってねえぜぇ~】
それぞれいかにも「らしい」手紙。
僕はいつの間にか、みんなに情報を与えるのが使命みたいになっていた。
その使命も、今夜で終わってしまう。
------------------------------
「ただいま」
「おかえりなさいでござる、小雪殿」
それ以上の会話が続かない。
あと数時間で、私はドロロのことを忘れてしまうんだ。
地球を発つときには、接触した地球人の記憶から、ケロン人の記憶をすべて消す。
それが、ケロン軍で定められた規定なんだそうな。
ドロロが残ってくれたお陰で、なんとか夏美さんたちの記憶から、
ケロン人の記憶が消えることは阻止できていたのだが…。
今夜、全てを消されてしまうのだ。
「ドロロ…」
「如何なされた?小雪殿」
「ドロロは…他のみんなが先にケロン星に帰った後、寂しくなかった?」
目を瞑って首を振る。
「全然寂しくなかったでござるよ。
だって、拙者には小雪殿がいたから。
寂しかったのは、先に帰ったケロロくん達や、その友達の方なんじゃないかな?」
「恋人…クルルさんと離れても、寂しくなかった?」
「小雪殿…。寂しくなんかなかったでござる。
クルルくんは、待っててくれるって言ってくれたから」
「私は…明日からがすごく寂しくなりそうで怖いの…。
ドロロの顔、声、感触、ドロロのもの、ドロロの記憶、全て忘れてしまうんだから…」
「小雪…殿…」
「私、ドロロのこと忘れたくない!忘れたくないよ…」
「拙者も、小雪殿に、忘れられたくないでござるよ…
でも、それはどうしようもないことなんだ…
みんなより長くペコポンに居られただけでも幸せなのに…
覚えていてほしいなんて願うのは、ワガママなのかな?」
「ううん…そんなこと言ったら、みんなより長くドロロといれた私も、ワガママだよ…」
「小雪殿…」
「忘れたら、ドロロのことで泣くことだって、寂しく思うことだって出来くなっちゃうんだよ?
それが一番寂しいことだよ…」
「ありがとう、小雪殿。
拙者、小雪殿に逢えて、本当によかった…」
どちらからともなく、きつく抱きしめあった。
------------------------------
「ドロロ兵長、迎えに来たぞ。ただちに宇宙船下まで」
非情にも、本部の船が僕を呼ぶ。
「もう、行かなくちゃ…」
「ドロロ…これ持っていって」
小雪殿から差し出されたのは、かつてジララ大尉との戦いの際に、
僕を救ってくれた御守りだった。
「私がドロロのことを忘れちゃうんだったら…
せめて、ドロロには私のことを覚えていて欲しいの…。」
「ありがとう、小雪殿。大事にするでござるよ」
小雪殿に助けてもらったあの日からの記憶が、
今、鮮明に蘇る。
でも、小雪殿は全て忘れてしまうんだ…。
だったら、僕が小雪殿の分まで覚えていよう。
君の代わりに。
泣かずにサヨナラを言うつもりだったのに、今にも涙が溢れそうだ。
「ドロロ…最後のお願い聞いて」
小雪殿も、瞳を潤ませて、今にも涙が溢れそうな顔だ。
「私のファーストキス、ドロロにあげたいの。」
「えっ…えぇ…!?」
「どうせ忘れてしまって、また違うファーストキスが出来るんだから…。
だからお願い。本当のファーストキス、受け取って」
僕の返事も聞かないうちに、小雪殿の唇が、僕の唇に重なってきた。
それは、とてもぎこちなくて、優しくて、軽くて、心地よくて…。
だけど、別れという名の、冷たい口づけだった。
Fin
【あとがき】
小雪とドロロがぁ!!(叫っ)
キス手前までの関係で留めておきたかったけど、
このタイトルでの組み合わせが小雪とドロロしか思いつかなかった。
ちなみに同じタイトルの曲を、ドロロ役の草尾っちが歌ってます。
この小説とは内容は異なりますが
「恋人が、昔の彼の面影を求めていて、主人公は恋人の為に別れを選ぶ」
みたいな内容。
でも、小雪とドロロはそれとは違うだろう、と…。
聴いてみたい方は今ニコニコに上がってるので聴いてみて(「草尾毅」で検索してアルバム集の中に入ってます)
僕以外のメンバーはケロン星に帰っていった。
僕はというと、身寄りのない小雪殿の傍に残りたい、と本部にお願いして、
小雪殿が高校を卒業するまでという期限付きで、なんとかペコポンに残らせてもらった。
今日が、小雪殿の卒業式である。
「小雪殿…」
「ん?どうしたの?ドロロ」
「あっ…いや…何でもないでござる。
いってらっしゃい」
「ドロロ…」
「何でござるか?小雪殿」
「なっ…何でもないよ、ごめん。行ってきます!」
数日前から別れを意識してからか、こんな調子の会話しかできてなかった。
長い間一緒に暮らしていた少女は、少女から女性に変わっていった。
随分と大人になったもんだ。
小雪殿だけじゃなく、夏美殿や冬樹殿、桃華殿、サブロー殿も、みんな大人になっていった。
尻尾があるかないか、顔の色が白が多いか自分の色が多いかしか違いのない僕たちケロン人には、まず経験できないこと。
あと数時間で、さよならだと思うと、やはり悲しい。
でも、他のメンバーよりはペコポンに長く滞在できただけでも、いいことだって思わなくちゃ。
まとめた荷物の中には、ケロン星へ先に帰ったメンバーからの手紙がたくさんある。
【冬樹殿は、どうしてるでありますか?】
【夏美に変な虫は付いてないか?】
【モモッチに逢いたいですぅ~】
【サブローのことが気になるなんて言ってねえぜぇ~】
それぞれいかにも「らしい」手紙。
僕はいつの間にか、みんなに情報を与えるのが使命みたいになっていた。
その使命も、今夜で終わってしまう。
------------------------------
「ただいま」
「おかえりなさいでござる、小雪殿」
それ以上の会話が続かない。
あと数時間で、私はドロロのことを忘れてしまうんだ。
地球を発つときには、接触した地球人の記憶から、ケロン人の記憶をすべて消す。
それが、ケロン軍で定められた規定なんだそうな。
ドロロが残ってくれたお陰で、なんとか夏美さんたちの記憶から、
ケロン人の記憶が消えることは阻止できていたのだが…。
今夜、全てを消されてしまうのだ。
「ドロロ…」
「如何なされた?小雪殿」
「ドロロは…他のみんなが先にケロン星に帰った後、寂しくなかった?」
目を瞑って首を振る。
「全然寂しくなかったでござるよ。
だって、拙者には小雪殿がいたから。
寂しかったのは、先に帰ったケロロくん達や、その友達の方なんじゃないかな?」
「恋人…クルルさんと離れても、寂しくなかった?」
「小雪殿…。寂しくなんかなかったでござる。
クルルくんは、待っててくれるって言ってくれたから」
「私は…明日からがすごく寂しくなりそうで怖いの…。
ドロロの顔、声、感触、ドロロのもの、ドロロの記憶、全て忘れてしまうんだから…」
「小雪…殿…」
「私、ドロロのこと忘れたくない!忘れたくないよ…」
「拙者も、小雪殿に、忘れられたくないでござるよ…
でも、それはどうしようもないことなんだ…
みんなより長くペコポンに居られただけでも幸せなのに…
覚えていてほしいなんて願うのは、ワガママなのかな?」
「ううん…そんなこと言ったら、みんなより長くドロロといれた私も、ワガママだよ…」
「小雪殿…」
「忘れたら、ドロロのことで泣くことだって、寂しく思うことだって出来くなっちゃうんだよ?
それが一番寂しいことだよ…」
「ありがとう、小雪殿。
拙者、小雪殿に逢えて、本当によかった…」
どちらからともなく、きつく抱きしめあった。
------------------------------
「ドロロ兵長、迎えに来たぞ。ただちに宇宙船下まで」
非情にも、本部の船が僕を呼ぶ。
「もう、行かなくちゃ…」
「ドロロ…これ持っていって」
小雪殿から差し出されたのは、かつてジララ大尉との戦いの際に、
僕を救ってくれた御守りだった。
「私がドロロのことを忘れちゃうんだったら…
せめて、ドロロには私のことを覚えていて欲しいの…。」
「ありがとう、小雪殿。大事にするでござるよ」
小雪殿に助けてもらったあの日からの記憶が、
今、鮮明に蘇る。
でも、小雪殿は全て忘れてしまうんだ…。
だったら、僕が小雪殿の分まで覚えていよう。
君の代わりに。
泣かずにサヨナラを言うつもりだったのに、今にも涙が溢れそうだ。
「ドロロ…最後のお願い聞いて」
小雪殿も、瞳を潤ませて、今にも涙が溢れそうな顔だ。
「私のファーストキス、ドロロにあげたいの。」
「えっ…えぇ…!?」
「どうせ忘れてしまって、また違うファーストキスが出来るんだから…。
だからお願い。本当のファーストキス、受け取って」
僕の返事も聞かないうちに、小雪殿の唇が、僕の唇に重なってきた。
それは、とてもぎこちなくて、優しくて、軽くて、心地よくて…。
だけど、別れという名の、冷たい口づけだった。
Fin
【あとがき】
小雪とドロロがぁ!!(叫っ)
キス手前までの関係で留めておきたかったけど、
このタイトルでの組み合わせが小雪とドロロしか思いつかなかった。
ちなみに同じタイトルの曲を、ドロロ役の草尾っちが歌ってます。
この小説とは内容は異なりますが
「恋人が、昔の彼の面影を求めていて、主人公は恋人の為に別れを選ぶ」
みたいな内容。
でも、小雪とドロロはそれとは違うだろう、と…。
聴いてみたい方は今ニコニコに上がってるので聴いてみて(「草尾毅」で検索してアルバム集の中に入ってます)
ケロロたちと地球人の別れを思うと、涙が出てきます。
ケロロたちが地球に帰ってしまったら、私達の楽しみまでなくなってしまう!!
なんてことも、改めて思いました;
あのシーンは何度見ても泣けます!
映画のアンチバリアリング後の二人は、あの短いシーンだけで小雪とドロロの関係をすべて語ってると思います。
何でだろう・・・・
普通なら、小ドロがキスするの嫌なのに・・・
許せちゃう・・・!?
クルドロファン失格ですか・・・?!
BLに目覚める前は雪ドロプッシュしてましたし(笑)。
なんせ二人きりで同棲してますし、この二人(笑)