今の農林水産省事務次官を井出道雄という。彼の振る舞いを見ると役人の性向がよくわかる。
農林中央金庫理事長は長らく同省次官経験者の指定席であった。今年3月上野理事長が退任すると井出さんは後任に同じく次官経験者の小林芳雄氏を押し込もうとした。だが農林中金は今期巨額赤字に転落し1兆円の資本増強で何とか破綻を免れた。それも代々金融のド素人の農林省次官経験者がトップを務めたからであるというのが同社内外の一致した認識であった。
そうした中で再び次官経験者を理事長に据えようとする井出さんの目論見が挫折したのは当然であった。次いで副理事長に押し込もうとしてこれもダメ。
それでも井出さんは諦めず、定款にない農林中金総合研究所理事長ポストを要求した。農中はわざわざ定款を変更して理事長ポストを新設し小林さんを据えることでほぼ話がまとまった。ところがこれがマスコミの嗅ぎつけるところとなり首相官邸がストップをかけた。この件に関する限り麻生さんはいいことをした。
関係者によると「農中を見下した井出氏の態度は恫喝まがいだった」。
去年の暮WTOドーハラウンドが山場に差し掛かり外務省や経済産業省が対策に大わらわであった時期、彼は自らの次官就任祝賀会を催し、日付が変わるまで酔いしれていた。石破農水大臣がめざした減反緩和を葬り去ったのも彼。
民主党政権が誕生すれば霞が関改革のシンボルとして真っ先に粛清の対象となりそうなのが彼。 以上 FACTAの記事から要約
ところで現職官僚はなぜOBの就職の世話にあれだけ熱心なのだろう?
それはこの例で言えば、一つは農林中金理事長ポストが農林水産省事務次官経験者の指定席であるという既得権を維持したいという組織エゴであり、もう一つは井出さんがOBの小林さんに貸しを作っておけば退任する時、後任に自分を推薦してくれるだろうという期待である。情けは他人(ひと)の為ならず。
話変わって今日午後衆議院が解散される。
麻生さんは「経済が大変な時、政治空白を作ってはいけない」と言ってずるずると解散を先延ばしした。そうであればなぜ投票日を来月30日に設定し40日も政治空白を作るのかな? 麻生さん、総選挙も惜敗を期すつもり?
前の総選挙をやった人は「自民党をぶっ壊す」と言った。麻生さんのためにいいコピーを思いついた。「自民党を葬送する」はどうだろうか。
麻生さんは挨拶の最後で涙ぐんでいた。彼のあんな顔は初めて見た。
尚全衆議院議員は今日身分を失うが首相を含む全閣僚は総選挙後の最初の国会で内閣総理大臣が指名され新首相が組閣するまでその地位を保つ。
首相官邸で麻生さんを中心に全閣僚がそろってテレビカメラに写される。実はあの部屋は閣議室ではなくて控室。隣接する閣議室では一つの丸テーブルを全閣僚が囲んで着席する。閣議室は公開されない。
それにしても自民党はあれだけ大げんかをやっても血の一滴も流れない。みなさん平和憲法の申し子だから?
河野洋平氏引退
彼の最大の罪は新自由クラブを作って自民党の延命に手を貸したことと小選挙区制を導入したことであると思う。功は思い浮かばない。
議員歴は父一郎より長かったが政治家としては父にはるかに及ばなかったというのが私の評価である。父一郎は鳩山一郎を担いで自由党を結成し、その後吉田内閣を打倒して鳩山内閣を作り日ソ国交回復を果たした。日ソ国交回復の目的は四つあった。シベリア抑留者帰還、国連加盟(常任理事国のソ連が反対すれば加盟できない)、北方漁業の安全、北方領土問題である。最後の北方領土問題はその時棚上げしたまま今に至っている。
父一郎は一農林大臣でありながら執権(将軍代行職)と謂われるほどの権勢をふるった。吉田茂は彼を蛇蠍の如く嫌った。