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日本の新聞の見方

時事問題の視点ー今の新聞テレビの情報には満足できない人のために

「完敗でした…」将棋ソフトが現役アマ王者を撃破

2008-05-06 07:19:20 | 将棋
以下5月5日19時46分配信 読売新聞から引用

 将棋ソフトの強さを競う第18回世界コンピュータ将棋選手権(コンピュータ将棋協会主催)が3日から5日まで千葉県木更津市で行われ、「激指(げきさし)」(開発者=鶴岡慶雅氏など)が3度目の優勝を飾った。

 大会には国内外の40ソフトが参加していた。

 最終日の5日、恒例のソフト対アマトップの公開対局が行われたが、2005年アマ竜王でアマ名人の清水上徹さん(28)が激指に、04年アマ竜王で朝日アマ名人の加藤幸男さん(26)が大会2位の「棚瀬将棋」(開発者=棚瀬寧氏)にそれぞれ完敗した。
 プロレベルの実力を持つ現役アマタイトル保持者がコンピューターに敗れるのは初。
 鶴岡さんと棚瀬さんは「今回の結果でトップアマを越えたとは思わないが、展開に恵まれた」と声をそろえた。
 一方、敗れた清水上さん、加藤さんは「コンピューターの読みが上回っていた」「完敗でした」と悔しさをにじませた。

 コンピュータ将棋協会の滝沢武信会長は「持ち時間が各15分とプログラム側に有利なルールではあったが、コンピューター将棋史に残る結果となった」と話した。  以上引用

コメント:この二年あまり将棋界の話題が社会面をにぎわすことが多かったし、表記の問題は各紙で大きく取り扱われているので今日は将棋を取り上げてみることにする。
 今、プロ将棋界は二つの危機に直面している。
一つは経営的な問題。斜陽メディアである新聞(失礼)に運営経費の大部分を依存しているが、いつまでその制度を維持できるのかという問題。名人戦の毎日から朝日への移行問題(両社共催で決着)、女流棋士の独立問題(一部の女流棋士だけの独立で決着)が紙上をにぎわせたがその背景には棋士達のこうした危機感がある。
 大和証券をスポンサーとしてネット上の新棋戦が誕生したのも新時代に対応しようとする将棋界の努力の表れである。

 昔将棋ファンはプロの将棋といえば新聞の将棋欄で何日か前の棋譜を何回かに分けて見たものであった(今もそうした将棋ファンはある)。ところが今や名人戦以外のタイトル戦はリアルタイムでしかも無料で、プロの解説付きでネット上でみることができる。そうでなくても新聞の購読数と広告収入は減っているのだから、将棋欄が果たしてどれだけ読者の獲得に貢献しているのか新聞社は真剣に検討せざるを得ない。
 というわけで近年将棋が社会の話題となることが多かったのは決して将棋界が隆盛であるからではなく、逆に斜陽であることの証である。

 二つ目は表記の問題つまりコンピューターソフトからの技術的挑戦である。
およそ6年前だったか、この問題を何人かのプロ棋士が紙上で語っていた(チェスはすでに人間のトップよりコンピューターが強い)。彼らの予想はまちまちで、誰か忘れたが10年以内にコンピューター或いは将棋ソフトはプロのトップレベルに達するとする見方をする人がある一方で、米長(現日本将棋連盟会長)は、そんな時代は永遠に来ないと言っていた。「将棋は単なるゲームではなく総合的な人間力が試される」なんて言っていた旧世代としてはそんな時代が来てほしくないのだろう。
 今の将棋ソフトの進歩の速さを見ると、後数年で前者の予想は実現しそうである。つまり米長の予想が外れるのはほぼ確実と見られる。将棋はチェスよりあり得る場合の数がはるかに多くてチェスよりはるかに複雑である。だが所詮は計算の量と速度に行き着くのであり、この方面はコンピューターがもっとも得意とするところである。しかもコンピューターは人間と違って疲れを知らないし、心理戦も効かない。人間的なミスもない。
 昨日コンピューターに負けたのはアマトップであってプロではない。だがアマトップはプロの低段相手(トップクラスではない)に互角にとは言えないまでもそれに近い勝負をする人達である。このニュースにショック(将棋の内容共々)を受けたプロ棋士は多かったのではないか。そういう時代が到来した時のプロ棋士の存在意義とはなんだろう?(敬称略)