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野田佳彦元首相、下野して偉業達成!(再掲)

2024-09-03 | Weblog

 野田佳彦元首相、下野して偉業達成! (再掲)
 野田佳彦元首相(民主党)は、2月19日の衆院予算委において質問に立ち、
安倍首相に対し、議員定数削減について2012年11月の予算委での約束を未だに実現しておらず、国会、国民に対する約束違反だと迫った。
2012年11月の予算委において、当時の野党だった自民党の安倍総裁が衆議院解散を迫ったのに対し、野田首相(当時)は、2013年の通常国会までの“議員削減に応じれば衆院を解散してもよい”と発言し、安倍首相(当時野党自民党総裁)が“いいですね、いいですね、約束ですよ”と迫り、「今この場でしっかりやると約束する」として次の国会での議員定数削減に同意し、解散、総選挙となった。しかしそれを受けて実施された総選挙で自民党が勝利し、安倍内閣が誕生したが、安倍首相(自民党総裁)は、意味のある議員削減を実施していない。
 2012年12月の選挙で政権に返り咲いた安倍自・公連立政権は、2014年12月に再度の無意味な選挙を繰り返したが、議員削減約束の実現に努力しなかったばかりか、14年4月に議員報酬の事実上の引き上げを行った上、最高裁より1票の格差問題で‘違憲状態’の判決を受けている。‘違憲状態’と言われ、あたかも‘違憲’ではないなどと意味の分からない解釈を行っている向きもあるが、違憲が継続している‘状態’を表現しているだけで、違憲は違憲である。
 それでも自民党は議員定数是正に消極的であるので、野田佳彦元首相の今回の国会での追及により、意味のある定数是正が実現すれば、戦後の選挙制度の是正における大きな成果を達成することになろう。
 野田民主党政権は、この他、一般的に不人気な消費増税、及び農業団体に不人気なTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加という難しい課題に道筋をつけ、次の通り、自・公連立政権では達成出来なかった3つの大きな成果を下野して達成したことになる。
 1.選挙制度の是正を約束させた
 議員定数の是正については、衆議院議長の下に有識者調査会が設けられ、議員定数を10減(小選挙区6減、比例4減)などの答申が提出されている。
 与党自民党は、2020年に実施される大規模国勢調査以降に先送りする意向を明らかにしていたが、安倍首相は前倒し実施を支持し、2月19日の予算委で、2015年に実施された中間的国勢調査に基づき小選挙区の区割り見直しが行われるので、答申を尊重し、これに合わせて定数削減を実現したいとの意向を明らかにした。そもそも定数削減を総裁が約束していた自民党が実施を‘2020年の国勢調査以降に先送りする’などとしていることは、国会、国民に対し不誠実であるし、2020年以降に自民が政権の座にあるかも分からないので、また空約束となる可能性が強い。やるやると言いながら、ジェスチャーだけで、政治的な見識と意志が欠如しているように見える。
 これが実現すれば、選挙制度の是正に向けて大きな前進となるが、10減しても衆院定数の2%余りの減にしかならない。これでは議員経費削減の上でマージナルな効果しかないので、意味のある更なる削減を目指すか、議員歳費を諸手当を含め全体で3割減とするなどの措置が必要であろう。歳費を削るか定数を削るかは議員自身が決めればよい。
 有識者答申には、各国との比較で日本の議員数はそれ程多くは無いなどとの記載があるが、議員定数を含む選挙制度の是正については次の3点が主な理由と見られており、見識に欠けるおざなりな答申内容となっている。
 議員定数削減は、消費増税関連法案採択の過程で、国民に負担を掛けるのだから定数削減や議員歳費の削減を行い、議員自身が身を切る努力をすべきというのが、野田首相(当時)の強い意向によるものであった。それに安倍氏が自民総裁として同意したものであり、納税者としては野田元首相の姿勢を評価出来る。
また1票の格差については、長年に亘り最高裁より違憲の状態が指摘されていたのにも拘らず、12年12月に再帰した安倍政権が14年12月に再び総選挙を行ったが、最高裁に違憲の状態とされ是正勧告を行われている。
自 ・公政権は、1票の格差についても、安保法制についても、また昨年秋に臨時国会開催の要請があっても開催しないなど、憲法違反、憲法軽視の政権、政党というイメージが強くなっている。民間活動で法令順守(コンプライアンス)の重要性が指摘されているが、法律を作る側、それを執行する内閣が国の基盤である憲法に違反し、或いは軽視するようでは、全く説得力に欠ける。民間活動でコンプライアンスが軽視されても仕方がないのかも知れない。
また少子化、人口減の中で、議員の質を維持できるかという現実的な問題がある。議員になったはいいが、育休・育メン不倫の議員が出たり、主要閣僚の金銭授受、担当分野の初歩的な知識もない大臣やオバマ米大統領は黒人奴隷の血筋と委員会で述べる議員など、単なる議席を埋めるために議員になったような議員は税金の無駄使いであり、不要である以上に有害だ。地方の声が届き難くなるとの意見もいただけない。東京都など大都市の人口も多数が地方出身であり、また候補も落下傘が多い。そもそも首相は地方出身が圧倒的に多い。1票の格差は、日本の政治を著しく歪めて来ているのではないか。
いずれにしても有識者調査会の答申に従って10議席削減しても、2%余りの削減にしかならず、インパクトは小さい。それさえ実現できないのであれば、政治的意思とリーダーシップが無いと見られても仕方がない。
国会、国民の前で安倍首相(自民総裁)が約束したことを守っていないことは明らかであり、何故これをマスコミや評論家・有識者等が強く指摘しないのだろうか。近時マスコミ力も著しく低下しているように見える。マスコミや評論家・有識者等がビジネス化し、既得権益擁護に傾斜し過ぎているのだろうか。
となると国民は、マスコミや評論、コメント等を厳しく精査し、流されないようにすることが必要になって来ていると言えそうだ。
 2.環太平洋連携協定交渉(TPP)への参加に道を開いた
 TPP協定は、昨年10月‘大筋合意’され、2016年2月4日に日本を含む12か国で署名された。しかしTPP協定交渉の先鞭をつけたのは野田民主党政権であり、2011年11月11日、野田首相が‘交渉参加に向けて関係国との協議に入る’旨表明したことから協定参加への道が開けたと言えよう。
TPPは、基本的に消費者には福音であり、また多くの製品、サービスにとってビジネス・チャンスが広がり歓迎されるが、農業・酪農団体は厳しい姿勢を取っていることから、交渉参加に道を開いたことは野田政権の勇気ある決断であった。一方自民党は2012年12月の総選挙でTPP反対を公約した。ところが安倍自民党総裁は政権に復帰して間もなく、公約に反し2013年3月に交渉参加を表明した。もし野田民主党政権が交渉参加に向けて関係国と協議を開始していなかったら、協定交渉に参加できず、日本の主張が入らなかった可能性がある。安倍政権は選挙公約に反し交渉に参加したが、どの程度日本の主張が入れられたかは今後の国会審議で明らかになろう。だが担当大臣であった甘利議員が金銭授受で辞任したので、後任の石原担当相が説明責任を果たせるのかが課題となると共に、日本の関心が十分に反映されていなければ安倍政権の責任ということになろう。
 3.消費税増税
 8%への消費増税(更に2017年4月より10%へ)は安倍政権の下で2014年4月より実施された。もともと歳入難に悩む自・公両党が消費増税を待望していたが実現できず、野田民主党政権の下で関連法案が提出され、2012年8月、‘社会保障・税一体改革に関する自民・公明両党との3党合意’に基づき国会で採択されたものである。しかし実施は14年4月からとされ、“経済状況を好転させることを条件”とするとの条項が付された。
 消費増税は、バブル経済崩壊後急速に膨らんだ公的債務、恒常的な財政赤字と少子高齢化に伴う年金等の社会保障財源の確保難と質の低下などを考慮すると、多くの国民はある程度は止むを得ないと考えているが、その実施タイミングや税収増の使い方と管理費等の節減などが適正ではないと見ている。
 多くの国民は、消費増税により、財政の健全化が図られる一方、増税分が社会保障費に回され年金を含む社会保障がより充実するのではないかと期待していた。事実は真逆に近い。予算は未だに国債依存で公的債務は膨らむ一方である上、年金は給付年齢が上がり給付額等が低下し、逆に介護保険料が引き上げられ年金給付額の実質減となっている。また社会保障費は全て消費税で賄われるかのように扱われ、従来の予算から浮いた社会保障費の分を無駄な支出に回し、節減などは図られていないように映る。補正予算での低所得の老齢者に対する3万円/人給付がその際たる悪例だ。こんなことでは財政改革、健全化は無理だ。膨大な公的債務を抱えた財政の健全化のためには、人件費を含む管理費を中心とする身を切る節減を図らなければ不可能であることは企業家が一番良く知っている。自・公連立政権はその努力どころか、意思が全く見られない。
 こうして見ると野田民主党政権は、反対も予想される中で、日本の将来にとって重要な施策を果敢に推進したことが見えてくる。少し性急過ぎたのか、民主党自体の分裂を招いてしまったようだが、政治家として日本の将来に必要と思われる政策を毅然として推進したことは与野党を通じて類を見ない。反対論はあろうが、日本の針路を示した実直な政治家として再評価して見る必要がありそうだ。(2016.2.29.)(All Rights Reserved.)

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米騒動2024年

2024-09-03 | Weblog

米騒動2024年

 お米がスーパー等の棚から消えた。米不足は6月頃から噂になっていたが、7月には価格も高騰した。大阪府吉村知事が、学校給食や庶民の窮状を知って、農水省に備蓄米の放出を要請したが、農水大臣は飢饉でもないか限り備蓄米は放出しない、間もなく新米も出るなどとして備蓄米放出を拒否した!備蓄米を出すと米価が下がるからとか。

 国民が日常生活や給食などでお米に困っているのに生産者米価のために備蓄米放出を出さない?!食生活が多様化し、お米は年々需要が下がっているが、立派な主食であり、また2千万人を超える外国人観光客の食も支えている。国民も日本の農業生産の適正な維持、発展を願っており、また大都市の人口の半数近くは地方出身であり農村の発展も願っているが、自民党政権が消費者・国民が困っていても生産者を優先する姿勢には何のための政治か、何のための農政か疑問を抱くのも当然だろう。またもし日本に緊急事態、有事が発生した場合、一般国民の安全や生活インフラの維持、食料等の維持は後回しないされるのではないかとの不安も生まれる。これが安倍政権のアベノミクス以降のインフレを容認し、賃金所得を抑える産業優先の姿勢とダブっ見えても仕方ないのかもしれない。

 と思っていたら、秋田の新米の農協による買い取り価格が30%~40%もの大幅な値上げと決まったとか。米不足を反映とか。ならは備蓄米を放出したらどうなのだろうか。農協が米農家に一時払いした新米は、原則として全量政府(農水省)が買い取り米価も政府が決めている。その高騰した米価が2025年度予算の政府概算要求の反映されている。国民負担がズシリと重くなる。その国民負担を相殺するため、2025年以降も4~5%以上の賃金所得の引き上げが必要だろう。(2024.8.31.)

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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)(再掲)

2024-09-03 | Weblog

マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その2)(再掲)
 2017年1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、
取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選(その1で掲載)
 2、既成の世論調査の問題点                  (その1で掲載)
 3.既成政治の否定とポピュリズム
 トランプ大統領は、就任式の演説において、アメリカ第一主義を強調し、米国民の安全と雇用確保を優先課題としたが、それよりも先に重要としたことがある。それは、ワシントンD.C.における既成政治の打破であり、‘権力を国民の手に返す’ことであった。従って、従来米国政治で当然、或いは常識と考えられ、そのように報道されていたことが、トランプ政権により否定され、新たな政策が出されても不思議はない。既成政治の枠組みの中で報道していたマスメデイアが慌てるのも無理はない。トランプ大統領は、選挙期間中にそれらの考え方を全米各地で訴え、多くのマスメデイアがいぶかしがる中で、中西部と南部を中心として米国市民に支持され当選した。選挙結果を受けて主張してきたことを実施に移そうとしているので、マスメデイアがそれをいぶかしがり、批判し続けることは、選挙結果を受け入れないと言っているに等しく、それは米国自身の統治システムや大統領選挙制度の否定とも受け止められよう。
 既成政治を否定し、対決する姿勢であるので、既成政治の本拠地ワシントン、特に野党民主党グループの間では相対的に不人気であろうし、また民主党支持を表明しているマスメデイアには不人気であろう。
 既成政治、その支持基盤である既成社会や利益グループを打破することは容易ではない。トランプ政権は、少なくても政権発足時にはオバマ政権始めこれまでの政権で取られて来た政策や諸措置をひとまず否定し、新たな政策や措置を打ち出すことになる。対決色が鮮明となるが、もとより承知の上であり、反対があることも想定の範囲内である。同政権としては、当初は対決色を鮮明にし、反応や効果を見ながら調整して行くと予想される。米国では、特にマッチョ系の間ではこのような‘ファイテイング・スピリット’は、その結果は別として最終的に評価されることが多い。
 他方、このような姿勢に反対することは、既成政治や既成社会、既得権益打破に反対し、これを擁護することになる。またロビイストや利益団体に支えられた職業政治家以外の、財界人その他の民間人は大統領にはなれないとの前例を作ることにもなり兼ねない。
 トランプ大統領は、既成政治を打破し、‘権力を国民の手に返す’としているが、これ自体は民主主義を促進する上で望ましいことであろう。これを既成政治側や既成社会は、‘ポピュリズム’として軽蔑する傾向があるが、‘ポピュリズム’は時の流れではないだろうか。
 他方、トランプ政権側も、既成マスメデイアは既成社会や既得権益グループの一部であり、国際世論を含め、世論の重要な部分を構成していることを忘れることなく、合わせ聞く耳を持つことが必要なのであろう。むしろ自らの考えや政策を浸透させたいのであれば、マスメデイアを活用することが効果的であろう。また娘イヴァンカ・ブランドの製品の販売を停止した高級デパートを不公平としてトランプ氏がツイッター等で批判したが、どっちもどっちではあるが、自身及び家族の事業活動から手を引き、大統領としての公務に就いた現在、自身及び家族の事業への公の場でのコメントを控えるべきなのであろう。

 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決
 第2次世界大戦後、1991年12月のソ連邦の崩壊まで続いた東西冷戦構造は解消したが、米、欧とロシアとの対抗関係は残り、また中国の目覚ましい台頭という構図に変化し、新たな対応と国際秩序が必要とされている。
 だが戦後の国際的課題であった中東紛争の根源であるパレスチナ、イルラエル問題は解決するどころか、イスラム過激派による国際テロの拡大、イラクの長期の不安定とイラク、シリアでのイスラム国の台頭、難民の急増、アフリカ諸国のガバナンス低下と部族紛争の継続など、戦後の諸課題は対処療法で先延ばしされるだけで解決の見通しもない。国連も活動分野を広げ、財政的にも人員的にも膨張しているが、対症療法的であり、解決には結びついていない。アフリカの‘国連開発の10年’も60年以上継続しているにも拘わらず90年代は‘暗黒の10年’と言われ、アフリカの安定的な開発には程遠い。また難民問題も多くの地域で難民キャンプが恒常化し、増加の一途であるなど、諸問題の解決目途も立っていない。特に潘基文前国連事務総長時代では、シリアでの和平仲介にも失敗し、シリア難民は増え、拠出を募るだけで問題解決にはなっていない。北朝鮮の核、ミサイル開発についても、非難はするものの、時間の経過とともに実質的に開発が進む結果となっており、記憶に残る成果は見られない。
 米国は、カーター大統領(民主党)が人権、人道や民主主義分野での介入方針を打ち出し、その後の政権も大なり小なり介入政策を継続し、いわば‘世界の警察’的役割を行って来ているが、上記の通り、国連を含め既成の政治、外交は対症療法的な対応に終始し、問題解決を先延ばしし、ほとんどの問題が未解決のまま残っている。
 トランプ大統領は、従来の既成政治の対応を否定し、新たな対応に乗り出そうとしている。いわば‘建前’から‘本音’の政治、外交への転換とも言える。長い間既成政治の中で支持され、維持されて来た概念や政策であり、それがある意味で既成社会の‘常識’となっているだけに、その転換には批判や抵抗があろうが、トランプ政権としては批判があることは十分に想定しているので、必要に応じ調整はしつつも脱既成政治を進めるものと見られる。人道、人権、平等という概念は、世界で広く受け入れられているが、どこの国でも無制限に適用されてはおらず、また各国の発展段階や政治体制によって適用されている程度が異なるのが現実であろう。これが普遍的に適用されるべしというのが誰しも望むところであるが、それは‘建前’であり、各国には国境があり、一律普遍的に適用できないというのが現実であり、‘本音’であろう。グローバリゼーションも、国境がある国家関係が前提であり、世界連邦のような単一世界が形成され、共通の価値が同じようなレベルで適用されているわけでもない。
 このような反既成政治、既成の‘常識’に対する既成政治側の批判は継続されようが、上記の通り、国際問題において解決されていない問題や逆に深刻化や恒常化して解決の目途が立っていない課題があることは明らかである。トランプ政権の反既成政治路線を批判する前に、これら諸課題が時間ばかり掛けて何故解決されていないのか、政策転換の余地はないかを点検、精査することが望まれる。
 これは国連についても同様で、これまでの諸活動を再検討すると共に、費用対効果を重視し、必要に応じ抜本的な改革を検討すべきではないだろうか。‘国連開発の10年’はじめ、これまでのような活動を継続していても、組織、職員は増大し、分担金、拠出金も増加の一途を辿るだけで、問題解決には繋がらない可能性がある。それでも物事が改善して行けばよいが、これまで通りの対応では、多くが問題の先送りに終わり、何も解決しない恐れがある。
(2017.2.12.)(All Rights Reserved.)

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マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)(再掲)

2024-09-03 | Weblog

マスメデイアの限界!既成政治へのノーを読めなかった世論調査!(その1)(再掲)
 2017年1月20日、第45代米国大統領としてドナルド・トランプ大統領が就任した。同日の就任演説では、まずワシントンの‘既成政治’は自らの利益を追求し、‘国民の利益’にはならなかった、トランプ政権では、‘権力を国民の手に返す’としてワシントンの既成政治を否定した。その上で、同政権は、唯一の判断基準として‘アメリカ・ファースト’を掲げ、アメリカの製品を購入し、アメリカ人を雇用するなど、米国の国益追求の姿勢と対外的にはイスラム過激派の排除を明らかにした。
 しかし同国のマスメデイアは、トランプ大統領の就任直前の世論調査の人気では、オバマ前大統領やブッシュ元大統領などに比して低く、40%であることを伝え、また就任式では、一般参加者の数がこれら前、元大統領に比して少ないことを、解説や映像を通して伝えた。これに対しトランプ大統領自身や大統領報道官は、2016年11月の大統領選挙の際、マスメデイアは予測を誤り、今回も正しくない報道に終始したとしてマスメデイアの報道姿勢を強く批判した。
 またトランプ大統領は、就任後矢継ぎ早に大統領令を出し、米国の国土安全保障のためとしてシリア、イラク、イラン、イエメン、リビア、スーダン、ソマリアの国際テロ支援国を含むテロ脅威国7か国からの米国への入国を90日間停止し、また難民受け入れを120日間停止する大統領令に署名した。これに対し多くのマスメデイアや評論家等が国籍による差別や人道上などの理由で批判している。
 なお、この7か国に対する入国停止の大統領令については、カリフォルニア州の連邦控訴裁判所において取り下げの判決が確認され、効力を失ったが、トランプ政権側は別の大統領令を出すとしている。先の大統領令は既にオバマ政権下で発給されたビザ保持者にも適用されることから、配慮に欠ける面があり、取り消しも止むを得なかったと言えよう。しかし現在の世界は、国境を有する国家を前提とし、外国人への渡航ビザ発給はそれぞれの国家の主権に属することであるので、外交関係や国家安全保障、疫病対策等で、渡航を制限することは可能であるので、何らかの新措置が取られる可能性がある。
 確かに、戦後のマスメデイアによる報道に親しんで来た多くの人にとっては、こうした米国の報道振りに余り疑問もなく接して来た。しかし米国のほとんどのマスメデイアは、大統領選挙前の世論調査においてクリントン候補50%超、トランプ候補約40%とし、予想を誤った。そして大統領就任に際して公表したトランプ大統領の人気(支持率)も40%であり、大統領選挙前の誤った数値とほぼ同じであるので、この数値は信じて良いのか疑問が持たれても仕方がない。
 今回米国マスメデイアは、1月20日の大統領就任式典への参加者が少なかった一方、多くの抗議デモが行われたなどとして、トランプ同大統領の‘不人気振り’を報道した。しかし既存の映像メデイアには、それぞれのアングルがあり、全てを伝えているとは思えないと同時に、建物に物を投げ、自動車に火を付けるなどの暴力行為を行っていた一部のデモ隊などを見ると、一概に反対している群衆が正しいとも言えそうにない。どちらかと言うと政争の色彩が強い。
 既成のマスメデイアやそれによる‘世論調査’は、国民に何を見せ、何を見せていないのか。大統領報道官は、‘もう一つの事実(Alternative Facts)’としているが、これまでマスメデイアにより伝えられていなかった’事実‘とは何か。
 1、結果を予想出来なかった世論調査―英国のEU脱退と米国大統領選
 英国は、EU(欧州連合)からの脱退か残留かを問う国民投票において、2016年6月23日、離脱支持が投票総数の約52%、1,740万票、残留が約48%、1,610万票で、EU離脱を選択した。投票率は約72%で、高い関心の中での選択と言えるが、同国の主要マスメデイアの世論調査や予想に反する結果となった。日本のマスメデイアも、いわゆるコメンテータや専門家等を含め、‘僅差ではあるが残留支持’が大方の見方であった。株式市場もそのようなマスメデイアの予想に基ついて楽観していたが、英国のEU離脱というショックウエーブが広がり株価やポンドは大幅に下落した。英国のEU離脱が日本のメデイアでは予想外の結果となり、市場は方向感覚を失い、欧州市場に追随した形だ。
 そして11月8日の米大統領選挙において、米国は主要マスメデイアの世論調査や予想に反し、共和党ドナルド・トランプ候補を次期大統領として選んだ。州ごとに選ばれた選挙人数は、トランプ氏が306人、民主党のクリントン前国務長官が232人をそれぞれ獲得し、トランプ候補が選挙人数では過半数を制した。投票率は、不人気同士の大統領選挙と言われていたが、54%台で、各候補の得票率はそれぞれ46%台、48%台であり、劣勢とされていた。トランプ氏が優勢との報道が流れると日本の株価は大幅に下落した。しかしトランプ次期大統領が、大統領補佐官はじめ大統領府の布陣に加え、財務長官や商務長官などの主要閣僚の人事を発表し始めると、米国の株価及びドルが大幅高となっており、‘トランプ・ショック’は‘トランプ効果’となった。そして1月20日の大統領就任後は、選挙戦中に約束した事項につき矢継ぎ早に大統領令が出されるたびにマスメデイアは一様に戸惑いを示した。選挙後のトランプ効果は後退し、トランプ不安が広がり、右往左往の状態となった。
 また2016年12月4日、イタリアで実施された憲法改正のための国民投票では、否決され、憲法改正を推進していたレンツィ首相が辞任した。目まぐるしく政権が変わるイタリアにおいて、政権を安定させるために上院の権限を大幅に縮小することを目的とした憲法改正への国民投票であったが、大衆の不満に率直な賛同を表明する人民主義政党(ポピュリズム)として行動する「五つ星運動」などに押され、予想に反する結果となった。
 世界の既成マスメデイアの世論調査は、何故予想に失敗したのか。
 2、既成の世論調査の問題点
 戦後欧米で採用されている世論調査は、多くの場合、無作為で一定数の回答者を選択し、回答があった数を基に賛否などの比率を出している。無作為で回答者を選択しているので、‘公平’、‘中立’とみなされているが、これまでの方法ではカバー出来ない層がある。
 1)まず回答率の問題がある。個々の調査により差はあるが、回答率はせいぜい60%前後で、概ね40%前後は無回答であるが、意見を持っていないということではない。賛否の比率等は回答者数で行われるが、4割前後ほどの無回答者の動向如何では、結論が大きく変わる可能性がある。
 調査は特定のメデイアが実施するが、各メデイアが既成政党を支持する等、一定の傾向を持っていることが多く、そのような偏向に好感を持っていない対象者は、調査に応じないであろう。一般的に有権者の約4割前後は無党派層、或いは無関心層であり、選挙やこのような世論調査を敬遠、拒否する傾向が強いが、意見を持っていないということではない。米国でも同様だ。他方調査メデイアに好意的な対象者を中心に回答することになり、調査メデイアの傾向がより強く反映されるのは当然のことであろう。事実、保守系メデイアが行う世論調査では、保守党支持が顕著に高くなる傾向があることは衆知のことだ。
 このような無党派層、無回答層を排除した統計は、世論の全体を反映せず、調査主体により偏向が出やすくなる。
 少なくても賛否の比率は、調査対象者(所在が分からなかった者を除く)をベースとして出すべきであろう。
 2)情報伝達メデイアの変化
 情報伝達の手段は、戦後マスメデイア化した新聞やテレビを媒体とするものから、デジタル媒体に移っている。既成の新聞やテレビは、巨大化、商業化すると共に、既成社会の一部となり、読者や視聴者に影響を与え、類似性の高い‘既成世論’とも言うべき世論やいわゆる‘常識’といわれる意見を形成している。従って、それがあたかも広く共有された‘常識’とみなされ、それと異なる意見を表明し難くしている。マスメデイアの調査に対し、そのマスメデイアが期待している意見に近い意見が述べられることが多いのもその一例であろう。またコメンテーターや専門家、有識者なども、マスメデイアが期待する意見に反しないコメント等をすることが多い。それに反することを言えば姿が消える。
 マスメデイアの更なる巨大化で、より多くの多様性を伝達すると思われたが、政治的には、特定政党を支持するか、支持政党の立場を代弁している場合が多いので、一定の方向性を持つと共に、類似性が高まることになり、それが繰り返し、繰り返し伝えられることにより、一定の世論や‘常識’が形成されて行く。そのメデイアによる調査では、結果が一定の方向性を持つことは不思議ではない。
 米国の、ニューヨークタイムズは民主党支持であり、ワシントンポストやウオールストリートジャーナルは共和党支持であるし、日本の主要都市新聞やテレビ局も同様である。
 このような中で、4割内外の無党派層や不回答層の意見は、選挙においても、マスメデイアによる世論調査などでも、ほとんど相手にされず、対象外とされて来たと言えよう。いわば場外世論だ。
 しかしデジタル情報手段の普及により、これらマスメデイアに依存することなく、ツイッター、フエイスブック、ユーチューブ、インスタグラム、ラインなどのWebやSNSメデイアを通じ意見やコメントの発信、拡散が可能になった。その拡散力は瞬間的で広範に及ぶ場合がある。トランプ氏は、大統領候補の時からこれを巧みに活用していたと言えよう。
 従来気にも止められなかった無党派層や不回答層をどのように世論に反映させるかが今後の課題だ。そのため世論調査等の方法や手段も工夫が必要になっている。
 2016年当初は、不動産王の泡沫候補とマスメデイアを通じ報道されていたトランプ候補があれよあれよと言う間に共和党の大統領候補となり、そして3回のテレビ討論などを経て、クリントン候補優勢と諸‘世論調査’が伝えていたが、大統領選挙ではトランプ候補が選挙人の過半数を制した。そして選挙人による最終投票においては、トランプ支持の選挙人の何人かはクリントン候補に寝返るなどと報道されていたが、これら報道は見事に外れた。読者や視聴者にその理由を説明する責任がありそうだ。
 3.既成政治の否定とポピュリズム    (その2に掲載)
 4、戦後の既成政治で多くの問題が未解決 (その2に掲載)
 
(2017.2.17.)(All Rights Reserved)

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