平成の本音―日・韓レーダー照射事件、打ち方止めーエ!
韓国海軍の駆逐艦が日本の海上自衛隊哨戒機にレーダー照射した問題を巡り、韓国国防省と日本の防衛省との間で言い合いがエスカレートし、批判、非難の応酬となっている。
この問題は、2018年12月20日、能登半島沖の日本の排他的経済水域内で発生したものであり、韓国海軍の駆逐艦が同海域の北朝鮮のものと言われている漁船の周辺を航行していたところを、日本の海上自衛隊哨戒機が哨戒した際、韓国海軍駆逐艦が日本の哨戒機に向けて火器照準用のレーダーを照射したものである。
日本の排他的経済水域において韓国艦船と正体不明の漁船が航行していれば、日本の哨戒機がその周辺を飛行し、状況を確認するのは普通の行為であり、韓国艦船のレーダー照射行為は容認できないことは明らかだ。国際法上韓国艦船は日本の排他的経済水域を「無害航行」することは認められているが、日本の哨戒機へのレーダー照射は攻撃、敵対行為の準備段階であり、容認されない。
このような行為は、不測の事態に発展する恐れがあるばかりか、批判、非難の応酬は日・韓いずれをも利するものではなく、双方ともに直ちに「打ち方止めーエ!」と言いたい。
基本的には隣国の友好国同士であると思われた日・韓で、どうしてあたかも敵対国同士のようなレーダー照射が行われ、非難合戦に発展したのだろうか。
1、韓国国防省の面子をつぶした日本防衛省による動画公開
この事件は、2018年12月20日に発生し、翌12月21日、岩屋防衛大臣が記者会見で事件内容を明らかにすると共に、「極めて危険な行為だ」と述べた。この日本側公表に対し、韓国国防省は‘火器管制レーダーの照射ではない’などとして否定したため、同月22日、日本防衛省は慎重かつ詳細な分析を行った結果として‘を火器管制レーダーによる照射’とし、韓国側に再発防止を強く求めて行く旨発表した。
韓国国防省は、この日本側説明を否定し、謝罪を求めるなどし、相互のメデイアを通じての言い合いがヒートアップした。この事態に対し、河野太郎外務大臣12月23日、批判を抑制し韓国側の対応を促すと共に、12月24日に外務省アジア大洋州局長をソウルに派遣し、韓国外交部に遺憾とともに、再発防止を強く求めるなど、事態の収拾に努めた。
しかし韓国側は、日本側主張を否定し、日本側に謝罪を求めるなど、事態が収拾する見通しは見られなかった。この段階で日本防衛省は、12月28日、哨戒機P-1が撮影した事件当時の映像を公表した。
この映像公開は、韓国側の主張を覆し、面目を潰した形となり、日本側への批判を強め、韓国側による編集映像の公開など、2019年新年から事態はメデイア・バトル化した。
韓国国防省の一連の言動はいわば敵国への対応を思わせるが、日本防衛省による映像公開については、官邸の指示としても、面子を重んじる韓国側を刺激し、いたずらに批判、非難の応酬を長期化させたと見られる。日本の与党自民党、特に防衛、安全保障関係議員の中には、本件は不測の事態も招きかねない危険な行為であるので、‘抗議’すべしとの声が強く、日本側も映像公開に踏み切ったと見られるが、感情的な対立は安全を損なう恐れがある。
2、日・韓の国防・防衛当局間、首脳間の関係の希薄さ
この事件を巡り日・韓間の批判・非難の応酬が長引き、メデイア・バトル化したのは、敵対国間であれば分るが、隣国同士の友好国間で継続したのは、第一義的には、日本の防衛庁と韓国国防省間の大臣同士のパイプの希薄さ、更に政府首脳間のパイプの希薄さからではないだろうか。
何故、早い段階で防衛、国防大臣間で事態の収拾を図れなかったのか。何故、政府首脳間で事態の鎮静化を図れなかったのか。このような状況では、偶発的戦闘行為に発展するなど、不測の事態も避けられない恐れもある。日本の首脳が韓国首脳との緊密なパイプを持っていないことは日本の安全保障にとって非常に重大な問題であろう。
韓国との関係は、現自民党政権の歴史認識の問題で悪化している。韓国首脳との関係だけではなく、韓国の一般国民などとの関係でも一部の抗日、反日勢力を中心として関係は改善していないと見られる。
慰安婦問題では、2015年12月に韓国政府が元慰安婦支援のため設立する財団に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことで安倍政権と朴槿恵大統領(当時)との間で合意し、朴槿恵政権下で一部補償は実施されたものの、一部慰安婦は補償受け取りを拒否し、また慰安婦像の設置が行われたことなどを背景として、文在寅大統領はこの基金の解散を決定している。この合意は政府間合意であったため、政権が交代すれば解消することは可能ではあり、朴前政権を否定する文政権としては慰安婦問題でも異なる姿勢を示している。いわば安倍政権に対しちゃぶ台をひっくり返したようなものだ。
また第2次世界大戦中の日本帝国時代に日本企業が朝鮮人を雇用していた徴用工問題では、韓国最高裁(大法院)がその一つである新日鉄住金(旧新日本製鉄)に補償義務があるとし、また応じない場合に同社の資産を相当分差し押さえる旨の判決を下した。これに対し、日本側は、日本の徴用工等への補償については1965年の日韓請求権協定で「解決済み」としてきたところであり、韓国政府に‘適切な措置’を講じるよう強く要請している。ところが、年初の記者会見において文大統領は、これは過去の不幸な時期に起こったことであり、‘日本側がこれを謙虚に受け止め、争点化すべきではない’などとし、安倍政権の対応に不快感を示した。確かに、韓国最高裁の‘個人の請求権は消滅しない’との判決はその通りであり、文政権としても判決自体には何もできないが、日・韓両国で請求権問題は決着しているので、韓国徴用工への補償は韓国政府がするべきなのであろう。他方、韓国最高裁の‘個人の請求権は消滅しない’との判決はその通りではあるが、日・韓で、請求権は放棄しているので、国際取り決め(協定)上、‘補償は韓国内の問題’、或いは、‘補償を日本側には求められない’との意見を付すべきであったのであろう。その意味で韓国側の判決は、両国間の取り決めを考慮しておらず、不十分なもの、或いは内向き過ぎると言えそうだ。
いずれにしても、安倍首相や一部閣僚等の靖国神社参拝で象徴される歴史認識が、韓国の官民の不信を買い、2013年の安倍政権成立以来両国関係は円滑でないことは、日・韓双方の対外関係において大きなマイナスと言えよう。(2019.1.11.)
韓国海軍の駆逐艦が日本の海上自衛隊哨戒機にレーダー照射した問題を巡り、韓国国防省と日本の防衛省との間で言い合いがエスカレートし、批判、非難の応酬となっている。
この問題は、2018年12月20日、能登半島沖の日本の排他的経済水域内で発生したものであり、韓国海軍の駆逐艦が同海域の北朝鮮のものと言われている漁船の周辺を航行していたところを、日本の海上自衛隊哨戒機が哨戒した際、韓国海軍駆逐艦が日本の哨戒機に向けて火器照準用のレーダーを照射したものである。
日本の排他的経済水域において韓国艦船と正体不明の漁船が航行していれば、日本の哨戒機がその周辺を飛行し、状況を確認するのは普通の行為であり、韓国艦船のレーダー照射行為は容認できないことは明らかだ。国際法上韓国艦船は日本の排他的経済水域を「無害航行」することは認められているが、日本の哨戒機へのレーダー照射は攻撃、敵対行為の準備段階であり、容認されない。
このような行為は、不測の事態に発展する恐れがあるばかりか、批判、非難の応酬は日・韓いずれをも利するものではなく、双方ともに直ちに「打ち方止めーエ!」と言いたい。
基本的には隣国の友好国同士であると思われた日・韓で、どうしてあたかも敵対国同士のようなレーダー照射が行われ、非難合戦に発展したのだろうか。
1、韓国国防省の面子をつぶした日本防衛省による動画公開
この事件は、2018年12月20日に発生し、翌12月21日、岩屋防衛大臣が記者会見で事件内容を明らかにすると共に、「極めて危険な行為だ」と述べた。この日本側公表に対し、韓国国防省は‘火器管制レーダーの照射ではない’などとして否定したため、同月22日、日本防衛省は慎重かつ詳細な分析を行った結果として‘を火器管制レーダーによる照射’とし、韓国側に再発防止を強く求めて行く旨発表した。
韓国国防省は、この日本側説明を否定し、謝罪を求めるなどし、相互のメデイアを通じての言い合いがヒートアップした。この事態に対し、河野太郎外務大臣12月23日、批判を抑制し韓国側の対応を促すと共に、12月24日に外務省アジア大洋州局長をソウルに派遣し、韓国外交部に遺憾とともに、再発防止を強く求めるなど、事態の収拾に努めた。
しかし韓国側は、日本側主張を否定し、日本側に謝罪を求めるなど、事態が収拾する見通しは見られなかった。この段階で日本防衛省は、12月28日、哨戒機P-1が撮影した事件当時の映像を公表した。
この映像公開は、韓国側の主張を覆し、面目を潰した形となり、日本側への批判を強め、韓国側による編集映像の公開など、2019年新年から事態はメデイア・バトル化した。
韓国国防省の一連の言動はいわば敵国への対応を思わせるが、日本防衛省による映像公開については、官邸の指示としても、面子を重んじる韓国側を刺激し、いたずらに批判、非難の応酬を長期化させたと見られる。日本の与党自民党、特に防衛、安全保障関係議員の中には、本件は不測の事態も招きかねない危険な行為であるので、‘抗議’すべしとの声が強く、日本側も映像公開に踏み切ったと見られるが、感情的な対立は安全を損なう恐れがある。
2、日・韓の国防・防衛当局間、首脳間の関係の希薄さ
この事件を巡り日・韓間の批判・非難の応酬が長引き、メデイア・バトル化したのは、敵対国間であれば分るが、隣国同士の友好国間で継続したのは、第一義的には、日本の防衛庁と韓国国防省間の大臣同士のパイプの希薄さ、更に政府首脳間のパイプの希薄さからではないだろうか。
何故、早い段階で防衛、国防大臣間で事態の収拾を図れなかったのか。何故、政府首脳間で事態の鎮静化を図れなかったのか。このような状況では、偶発的戦闘行為に発展するなど、不測の事態も避けられない恐れもある。日本の首脳が韓国首脳との緊密なパイプを持っていないことは日本の安全保障にとって非常に重大な問題であろう。
韓国との関係は、現自民党政権の歴史認識の問題で悪化している。韓国首脳との関係だけではなく、韓国の一般国民などとの関係でも一部の抗日、反日勢力を中心として関係は改善していないと見られる。
慰安婦問題では、2015年12月に韓国政府が元慰安婦支援のため設立する財団に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことで安倍政権と朴槿恵大統領(当時)との間で合意し、朴槿恵政権下で一部補償は実施されたものの、一部慰安婦は補償受け取りを拒否し、また慰安婦像の設置が行われたことなどを背景として、文在寅大統領はこの基金の解散を決定している。この合意は政府間合意であったため、政権が交代すれば解消することは可能ではあり、朴前政権を否定する文政権としては慰安婦問題でも異なる姿勢を示している。いわば安倍政権に対しちゃぶ台をひっくり返したようなものだ。
また第2次世界大戦中の日本帝国時代に日本企業が朝鮮人を雇用していた徴用工問題では、韓国最高裁(大法院)がその一つである新日鉄住金(旧新日本製鉄)に補償義務があるとし、また応じない場合に同社の資産を相当分差し押さえる旨の判決を下した。これに対し、日本側は、日本の徴用工等への補償については1965年の日韓請求権協定で「解決済み」としてきたところであり、韓国政府に‘適切な措置’を講じるよう強く要請している。ところが、年初の記者会見において文大統領は、これは過去の不幸な時期に起こったことであり、‘日本側がこれを謙虚に受け止め、争点化すべきではない’などとし、安倍政権の対応に不快感を示した。確かに、韓国最高裁の‘個人の請求権は消滅しない’との判決はその通りであり、文政権としても判決自体には何もできないが、日・韓両国で請求権問題は決着しているので、韓国徴用工への補償は韓国政府がするべきなのであろう。他方、韓国最高裁の‘個人の請求権は消滅しない’との判決はその通りではあるが、日・韓で、請求権は放棄しているので、国際取り決め(協定)上、‘補償は韓国内の問題’、或いは、‘補償を日本側には求められない’との意見を付すべきであったのであろう。その意味で韓国側の判決は、両国間の取り決めを考慮しておらず、不十分なもの、或いは内向き過ぎると言えそうだ。
いずれにしても、安倍首相や一部閣僚等の靖国神社参拝で象徴される歴史認識が、韓国の官民の不信を買い、2013年の安倍政権成立以来両国関係は円滑でないことは、日・韓双方の対外関係において大きなマイナスと言えよう。(2019.1.11.)