シリーズ平成の本音―参議院、非常識の府の醜態
集団的自衛権行使を含む安保関連法案を審議していた参議院特別委員会は、9月17日午後、同法案を強行採決した。
そもそも参院特別委員会は、同日午前8時50分からの理事会の後、午前9時から開催される予定であった。しかし自民党を中心とする与党は、8時50分に理事会室から看板を外し、委員会室に掛け替えて、委員会室での理事会開催を開催し、そのまま同委員会室での法案採択を図ろうとしたことから、野党が強く反発し、紛糾し、委員会採択が午後に大幅にずれ込んだ。また鴻池委員長(自民党)の委員会開催宣言を巡ってつかみ合いの混乱が生じるなど、紛糾した。
理事会室から看板を外し、委員会室に付け替えたことについては、与党議員には知らせてあり、直接委員会室に参集していたが、野党議員はすっぽかされた形となった。野党が怒るのも当然だ。会議というのは、時間と場所が明確に記載され、すべての委員に通知されなくては適正に招集されたとは言えない。公的な国会であれば尚更だ。明確なルール違反であり、法令順守(コンプライアンス)に反する。
一部の与党議員やマスコミ、報道関係者の中には、理事会室周辺の廊下に野党議員が集まって開催をブロックしていたので、野党側にも責任があるなどと解説する者もいる。しかし先の公聴会で与党推薦の学者が‘集団的自衛権行使については違憲’と証言し、また多くの憲法学者等も違憲とし、国民の80%内外が説明は十分ではない等としているのも拘わらず、強行採決を仕掛けて来ていたのは与党であり、第一義的な責任は与党の国会運営や世論を無視する姿勢にあったと言えよう。野党の力によるブロックや採択阻止の行動も、国会議員として褒められたことではなく、反省すべきであろう。
そして特別委員会の本法案採択を巡って、議長席を取り囲んで力ずくでブロックする議員の醜態が世界に配信された。多くの人の目には、これは野党が審議をブロックしている姿と映った。だがこの醜態は、自民党など与党が採択を強行するため議長席を力ずくで防護していたものだったことが分かった。その首謀者は、同委員会の筆頭理事(自民党)の佐藤正久議員で、それを阻止しようとしていた議員をこぶしで殴っている姿が放映された。
佐藤参議院議員は自衛隊出身の安保通として知られているが、国民が一番恐れていたことが起こったと言えよう。自衛隊は非常、緊急事態には反対する国民に銃を向けることも有り得るということだ。そして与党自・公政権はこれを政策遂行に利用する。
多くの国民が憲法違反だと見ている集団的自衛権行使の任務を強いられ、そのために命を失うリスクが高まる自衛隊に応募しないことが一つの選択肢なのかもしれない。
国会は国権の最高機関であり、法律を作る機関である。その参議院で、与党が姑息な規則違反、コンプライアンス違反を行うことは、どのような理屈を言おうとも、許されて良いものではない。それが認められるようでは、詐欺師や犯罪者にも一理ありと言うに等しい。法律など作る資格はない。
もっとも民主主義の原点である平等性において、前回の参議院選挙でも有権者の一票の格差は最大4.77倍であり、長期間‘違憲状態’にある。与党側は従来から、‘違憲状態’であり‘違憲’ではないとして、余り意味の分からない理由で‘違憲状態’を続けて来た。しかし選挙は無効ではないが、‘違憲’は‘違憲’であり、憲法の平等性を無視した‘違憲状態’の参議院であるので、本来、法律など作る資格はないのであろう。一票の格差は、次回選挙では2.97倍となるようだが、基本的には1対1であるべき「平等性」を基準とすると、平等性を規定している憲法に反すると言える。
衆議院についても長年‘違憲状態’である上、2012年の選挙では1、2の選挙区において高裁レベルで‘違憲’、選挙やり直しの判決を受けている。
国会は、衆・参両院とも長期にわたり‘違憲状態’を続けて来ており、それを歴代政権与党が黙認して来たことが国会の正当性を失わせて来たように思われる。その上、残念ながら違憲選挙で当選して来た議員であるので、その中には国民を代表する資格がないような人が居ても不思議はないのだろう。独立であるべき司法が、基本的には1対1であるべき「平等性」に恣意的な判断を示し、明確な判断を下し、司法としての独立の責任を果たして来なかったことが、与党議員の憲法軽視を助長して来たのかも知れない。
安保関連法案は、9月19日、衆議院で採択されたものが参議院で採択され、成立した。今後舞台は司法の場に移る。集団的自衛権の行使の違憲性についての判断が司法に委ねられるが、日本の安全保障に関係する問題であるので緊急な判断が求められる。
同時に、今回も参議院は衆議院の下部機関、或いは予備的機関のようなもので、予算では30日ルール、その他法案では60日ルールで衆議院が優先することが明らかとなった。そうであれば参議院に242人もの議員は必要なさそうだ。衆議院の暴走の歯止めとなり、じっくりと審議し、国民の理解を高めるために120人程度の参議院議員は必要かもしれないが、それ以上は削減すべきであろう。また選挙制度も、衆議院と同じような小選挙区制・比例代表併用ではなく、広く国民層から高い見識と良識を有する候補から選べるような独自の選挙制度が不可欠であり、それが困難であれば、廃止か無期限休会としても良いのではなかろうか。(2015.9.19.)(All Rights Reserved.)
集団的自衛権行使を含む安保関連法案を審議していた参議院特別委員会は、9月17日午後、同法案を強行採決した。
そもそも参院特別委員会は、同日午前8時50分からの理事会の後、午前9時から開催される予定であった。しかし自民党を中心とする与党は、8時50分に理事会室から看板を外し、委員会室に掛け替えて、委員会室での理事会開催を開催し、そのまま同委員会室での法案採択を図ろうとしたことから、野党が強く反発し、紛糾し、委員会採択が午後に大幅にずれ込んだ。また鴻池委員長(自民党)の委員会開催宣言を巡ってつかみ合いの混乱が生じるなど、紛糾した。
理事会室から看板を外し、委員会室に付け替えたことについては、与党議員には知らせてあり、直接委員会室に参集していたが、野党議員はすっぽかされた形となった。野党が怒るのも当然だ。会議というのは、時間と場所が明確に記載され、すべての委員に通知されなくては適正に招集されたとは言えない。公的な国会であれば尚更だ。明確なルール違反であり、法令順守(コンプライアンス)に反する。
一部の与党議員やマスコミ、報道関係者の中には、理事会室周辺の廊下に野党議員が集まって開催をブロックしていたので、野党側にも責任があるなどと解説する者もいる。しかし先の公聴会で与党推薦の学者が‘集団的自衛権行使については違憲’と証言し、また多くの憲法学者等も違憲とし、国民の80%内外が説明は十分ではない等としているのも拘わらず、強行採決を仕掛けて来ていたのは与党であり、第一義的な責任は与党の国会運営や世論を無視する姿勢にあったと言えよう。野党の力によるブロックや採択阻止の行動も、国会議員として褒められたことではなく、反省すべきであろう。
そして特別委員会の本法案採択を巡って、議長席を取り囲んで力ずくでブロックする議員の醜態が世界に配信された。多くの人の目には、これは野党が審議をブロックしている姿と映った。だがこの醜態は、自民党など与党が採択を強行するため議長席を力ずくで防護していたものだったことが分かった。その首謀者は、同委員会の筆頭理事(自民党)の佐藤正久議員で、それを阻止しようとしていた議員をこぶしで殴っている姿が放映された。
佐藤参議院議員は自衛隊出身の安保通として知られているが、国民が一番恐れていたことが起こったと言えよう。自衛隊は非常、緊急事態には反対する国民に銃を向けることも有り得るということだ。そして与党自・公政権はこれを政策遂行に利用する。
多くの国民が憲法違反だと見ている集団的自衛権行使の任務を強いられ、そのために命を失うリスクが高まる自衛隊に応募しないことが一つの選択肢なのかもしれない。
国会は国権の最高機関であり、法律を作る機関である。その参議院で、与党が姑息な規則違反、コンプライアンス違反を行うことは、どのような理屈を言おうとも、許されて良いものではない。それが認められるようでは、詐欺師や犯罪者にも一理ありと言うに等しい。法律など作る資格はない。
もっとも民主主義の原点である平等性において、前回の参議院選挙でも有権者の一票の格差は最大4.77倍であり、長期間‘違憲状態’にある。与党側は従来から、‘違憲状態’であり‘違憲’ではないとして、余り意味の分からない理由で‘違憲状態’を続けて来た。しかし選挙は無効ではないが、‘違憲’は‘違憲’であり、憲法の平等性を無視した‘違憲状態’の参議院であるので、本来、法律など作る資格はないのであろう。一票の格差は、次回選挙では2.97倍となるようだが、基本的には1対1であるべき「平等性」を基準とすると、平等性を規定している憲法に反すると言える。
衆議院についても長年‘違憲状態’である上、2012年の選挙では1、2の選挙区において高裁レベルで‘違憲’、選挙やり直しの判決を受けている。
国会は、衆・参両院とも長期にわたり‘違憲状態’を続けて来ており、それを歴代政権与党が黙認して来たことが国会の正当性を失わせて来たように思われる。その上、残念ながら違憲選挙で当選して来た議員であるので、その中には国民を代表する資格がないような人が居ても不思議はないのだろう。独立であるべき司法が、基本的には1対1であるべき「平等性」に恣意的な判断を示し、明確な判断を下し、司法としての独立の責任を果たして来なかったことが、与党議員の憲法軽視を助長して来たのかも知れない。
安保関連法案は、9月19日、衆議院で採択されたものが参議院で採択され、成立した。今後舞台は司法の場に移る。集団的自衛権の行使の違憲性についての判断が司法に委ねられるが、日本の安全保障に関係する問題であるので緊急な判断が求められる。
同時に、今回も参議院は衆議院の下部機関、或いは予備的機関のようなもので、予算では30日ルール、その他法案では60日ルールで衆議院が優先することが明らかとなった。そうであれば参議院に242人もの議員は必要なさそうだ。衆議院の暴走の歯止めとなり、じっくりと審議し、国民の理解を高めるために120人程度の参議院議員は必要かもしれないが、それ以上は削減すべきであろう。また選挙制度も、衆議院と同じような小選挙区制・比例代表併用ではなく、広く国民層から高い見識と良識を有する候補から選べるような独自の選挙制度が不可欠であり、それが困難であれば、廃止か無期限休会としても良いのではなかろうか。(2015.9.19.)(All Rights Reserved.)