そうなんです
金丸座の平場桟敷席には通路と言えるものは無かったそうです
ご主人が苦労したお話はご本人から披露して貰います。
『イヤーなんとも驚きましたネ。紺絣の着物に赤い前掛けをした案内係りの娘さんの後をついて行くと、桟敷の境の幅10センチ余りの仕切り板を渡りだしたのです。
弁当と靴を入れた二つのビニール袋に折りたたみ傘と、荷物は全部持ってくれているので空身とはいえ、ちょっと待ってくださいヨ!
身体のバランスが取りにくくなっている我が身にとっては、平均台をスイスイ渡るような芸当はとてもじゃないが出来ませんヨ
図面がないと分かりづらいと思いますが、舞台上手に通じる50センチ幅位の仮花道を通路として使い、本花道との間に渡された幅10センチ余りの仕切り板を渡って各自の席に着くようになっているンですネ。
「フラフラして落ちそうで駄目だよ」と言ったら、屈強な男の人を連れてきました。「しっかり私に捕まってゆっくり付いて来て下さいよ」と言うので腕につかまり、後ろから娘さんに支えられながらエッチラ、オッチラ一寸刻みに進んでやっと自分の席に辿り着きました。ヤレヤレ
私の席は本花道の直ぐ脇でしたので一番長い距離を渡ったことになりますネ。
写真のように若い人はスイスイと、中年の人は少しモタモタしながら渡っています。
さて、席に着いたのはいいのですが、自力で出入りできないと言うことは終演まで席を動けないわけで、これが問題でした。
えツ、何が問題かってツ、長くなったのでそれはお会いしたときにお話しましょう。』
と申しておりますのでお楽しみに。