経済なんでも研究会

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「軟着陸」どころか「無着陸」? アメリカ経済

2023-07-25 07:16:44 | 景気
◇ NY市場の夢は膨らむばかり = 物価はこのまま落ち着いて行く。来年には2%程度の上昇率になる見通し。だからFRBは今週の利上げを最後として、9月は金利を据え置く。その結果、景気は下降するが、その程度はきわめて軽い。景気後退にはならないだろう。--これがニューヨーク市場で広まった「軟着陸」説である。ダウ平均株価を大幅に押し上げた最大の原動力となった。

最近のニューヨーク市場には、もっと極端な楽観説が出現した。物価は間もなく沈静化し、FRBは早めに金融政策を緩和へと転換する。このため景気はほとんど下降しない。つまり「軟着陸」説では飛行機のタイヤが滑走路に触れるが、「無着陸」説ではタイヤが地面に触れることなく再上昇するというシナリオだ。この超楽観説を受けて、株価はさらに上昇した。

たしかにアメリカのインフレは、順調に終息しつつある。6月の消費者物価は前年比3.0%の上昇。2年3か月ぶりに4%を下回った。小売り売上高は1.5%の増加だったが、物価上昇分を差し引いた実質値では減少している。また6月の平均時給は前年比4.4%の増加で、前月と変わらなかった。中古住宅の価格も、5か月連続で下落している。

こうした状況のもとで、FRBはきょうとあす金融政策決定会合を開く。そこでは0.25%の利上げを決めると思われるが、パウエル議長が「9月以降は利上げしない」と示唆する公算はきわめて小さい。相変わらず「経済データしだい」と、はぐらかすのではないか。むしろ「無着陸」説まで飛び出した市場の超楽観派にお灸を据えるため、「9月にも利上げはありうる」と言う可能性がある。そのとき市場の「軟着陸」「無着陸」派は、どんな反応を示すのだろうか。

        ≪24日の日経平均 = 上げ +396.69円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2023-07-24 06:40:17 | 株価
◇ 最高値更新はFRBしだいだが・・・ = ダウ平均は先週719ドルの値上がり。ついに10日間の連騰を達成、この間に1500ドル近く上昇した。10日間の連騰は5年11か月ぶり。終り値は3万5200ドル台に乗せている。史上最高値は昨年1月に付けた3万6799ドルだったから、あと1500ドルあまりに接近した。市場では「7月の利上げは織り込んだ。これが利上げの打ち止めになる」という見方が大勢を占めている。

FRBは今週25-26日にFOMC(公開市場委員会)を開き、新しい金利を決める。そこで0.25%の利上げを決めることは、ほぼ確実。もしパウエル議長が「利上げの打ち止め」を示唆すれば、株価はさらに続伸。ダウ平均は史上最高値を更新する可能性が大きい。物価や賃金の動向が落ち着きをみせているため、市場はかなり期待している。だがパウエル議長が9月以降の見通しを述べることはないのではないか。その場合、市場がどう反応するのか。最大の注目点である。

日経平均は先週87円の値下がり。週初は日銀が長期金利操作の変動幅を拡大するという見方が強まり、銀行株を中心に上昇した。しかし植田日銀総裁がG20後の会見でこれを否定したため、株価は反落。為替市場では円安が進行した。外国人投資家の目はニューヨーク市場に集中しており、円安でも東京市場への資金流入は増えなかった。今週はアメリカが利上げ、日銀は現状維持となりそう。市場がどう反応するか。これも注目点である。もう1つ、原油の国際価格が上昇し始めたことも気がかり。

今週は26日に、6月の企業向けサービス価格。28日に、7月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは25日に、5月のFHFA住宅価格指数、7月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。26日に、6月の新築住宅販売。27日に、4-6月期のGDP速報、6月の中古住宅販売が発表される。なお25-26日にはFRB,27-28日には日銀の政策決定会合が開かれる。

         ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

“風評被害”を 軽減するために

2023-07-22 07:34:55 | なし
◇ 当事者は「被害の補償」だけに焦点を = 福島第1原発の処理水を海に放出する問題。政府は夏中の実施を計画、いま東京電力と地元漁協との間で最終的な話し合いが続いている。さすがに地元紙の福島民報は詳しく伝えているが、その記事をみると漁協側は「放出に反対」の姿勢を全く崩さない。理由は「風評被害が起きるから」である。だが、この漁協の姿勢は自己矛盾している感じを否定できない。

放出する処理水に含まれるトリチウムの濃度は、中国やフランスあるいは韓国がいま実際に放出している処理水の濃度を下回る。IAEA(国際原子力機関)も査察の結果「安全基準に適合している」という報告書を公表した。しかし中国などは「日本の放出に反対」の態度を貫いている。これはいま日中間で政治的な緊張が高まっているためであり、単なる嫌がらせだと考えていい。

ただ近隣諸国の一般市民は、どう考えるだろう。IEAEの‟お墨付き”が出たのに、当事者である漁業関係者はいまだに反対の姿勢を崩さない。とにかく周辺の海と魚のことをいちばんよく知っているのは、漁民たちだ。その人たちが「反対」しているのだから、何かあるのかもしれない。ふつうの人は、そう考えるのではないだろうか。

「放出への反対は止めて、被害の補償だけに徹したら」と言うと、それでは「補償金欲しさの反対だと言われかねない」という反論があるかもしれない。だが被害の実態に見合った補償なら、誰も批判はしないだろう。そこでの問題は、被害の程度を正しく計測すること。それは放出反対とは次元が違う、全く別の問題になる。

        ≪21日の日経平均 = 下げ -186.27円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】     

ハシゴがはずれて 倒産が続出? (下)

2023-07-21 07:26:26 | 景気
◇ “ゾンビ企業”が19万社もある現実 = 経営破綻の状態でも、借り換えや補助金によって倒産しない会社。こうした企業を“ゾンビ企業”と呼んでいる。BIS(国際決済銀行)はその定義をきっちり決めているが、おおざっぱに言えば「債務の返済額が利益を上回る状態」だ。帝国データバンクの集計によると、この“ゾンビ企業”は約19万社。コロナ前に比べると、3割ほど増えた。この増加分のほとんどが、ゼロゼロ融資による延命の結果だとみられている。

この7月以降、ゼロゼロ融資の本格的な返済が始まる。その結果は倒産する企業が増えるだけでなく、“ゾンビ企業”も増やすことになるだろう。こういう状態は、金融機関の経営にも重大な影響を及ぼす。金融庁によると、金融機関が抱える灰色債権はリーマン・ショック後の70兆円に近付きつつある。灰色債権とは、返済条件の変更や元利払いの猶予が必要となった貸付金。もし融資先が倒産してしまえば、金融機関の損失になる。

さらに近い将来、日銀が実質的な利上げに踏み切る可能性がある。仮にそうなれば、灰色債権の借り換え作業はきわめて困難になり、企業の倒産を加速させる危険がある。ゼロゼロ融資の返済は、このように多方面にわたって大きな影響を及ぼす。このため政府も対策を考えているようだが、またまた補助金のようなバラマキなら事態を先延ばしするだけ。

42兆円もの税金を使ったゼロゼロ融資。金融機関は全くリスクなしで、利子収入を手にすることができた。このため形ばかりの審査で貸し出したケースが多い。いちばん肝心な「ゼロゼロ資金で、その企業をどう立て直すか」を考えなかった金融機関が少なくなかった。政府や自治体の監督も不行き届きだった、と言わざるをえない。

        ≪20日の日経平均 = 下げ -405.51円≫

        ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

ハシゴがはずれて 倒産が続出? (上)

2023-07-20 08:00:10 | なし
◇ ゼロゼロ融資の返済が本格化 = これから年末にかけて、企業の倒産が急増するかもしれない。コロナ禍で経営不振に陥った企業に対する無利子・無担保の金融支援、いわゆるゼロゼロ融資の返済がこの7月から本格的に始まるからだ。経済は正常化したが、光熱費・原材料費・人件費の高騰は特に中小・零細企業の経営に重くのしかかる。ゼロゼロ融資を受けた企業の3分の1が、「返済はムリ」という調査もある。

コロナ不況の深刻化を恐れた政府は、20年夏から22年9月にかけてゼロゼロ融資を実施した。政府系金融機関と民間金融機関が無利子・無担保で貸し出し、利払いは都道府県が3年だけ負担。このため、この7月から企業は返済を迫られるところが多い。中小企業庁によると、貸し出し件数は245万件、融資総額は42兆円にのぼった。

東京商工リサーチの調査によると、ことし1-6月期の倒産件数は4042件。前年を3割上回った。コロナ前の件数は年間8000件前後だったので、その水準に戻ったことになる。その間21年―22年は約2000件ほどに減っていたが、これはゼロゼロ融資のおかげで倒産を免れた企業が多かったことを示している。

企業が倒産して返済が出来なくなると、その分は国や地方自治体が負担することになる。つまりは税金だ。たしかにゼロゼロ融資によって立ち直った企業も少なくない。だが半面、何兆円という税金を使って、数多くの企業をただ延命させただけという側面もあった。いま経済の正常化が進んでいるとき、倒産が増加して景気の足を引っ張ることになれば、その影響はきわめて大きい。

                    (続きは明日)

        ≪19日の日経平均 = 上げ +402.14円≫

        ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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