経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

史上最高益の 使われ方 (上)

2018-08-21 08:32:40 | 利益
◇ 企業業績は日米ともに絶好調 = トムソン・ロイター社が主要500社の決算を集計したところによると、4-6月期の純利益は前年比で24%の増益となった。1-3月期の27%増益をやや下回ったものの、2四半期連続で20%を超えている。利益の水準は、もちろん過去最高。トランプ大統領による大型減税とインフラ投資で、個人消費と設備投資が増大した結果だと分析されている。

日本の企業も負けてはいない。日経新聞が決算発表を終えた1588社を集計したところ、4-6月期の純利益は総額8兆9000億円。前年比28%の増益となった。4社に1社が過去最高益を出しており、電気・建設・石油・商社など幅広い部門に好況感が広がっている。ただ4-6月期には東芝が主力事業を売却した特殊事由もあるため、これを除くと増益率は14%に下がる。また19年3月期は03%の減益になる見通し。ここがアメリカとは違う点だ。

増益が持続した理由は、主として海外経済が堅調に推移したこと。またオリンピック景気や資源高も、利益の拡大に貢献した。さらに円相場が企業の想定レートより円安だったことも、増益に寄与している。その一方、18年度を通期でみると減益になるのは、貿易戦争の影響が現われてくること。また円高傾向に進むという予想が、主な理由となっている。

株価が変わらず利益が増えれば、その株式のPER(株価収益率)は下がる。このため日経平均を構成する225銘柄で計算すると、最近のPERは13倍近くにまで低下した。アメリカの18倍弱、ドイツの14倍に比べても低い。その割安感が、貿易戦争の進行で売られやすい東京市場の株価を支える形となっている。

                           (続きは明日)

       ≪20日の日経平均 = 下げ -71.38円≫

       ≪21日の日経平均は = 下げ≫

今週のポイント

2018-08-20 07:37:02 | 株価
◇ 企業業績と貿易戦争の狭間で = 企業の好業績が持続する一方で、貿易戦争の悪影響も広がり始めた。株価はその狭間で、苦し気な動きを繰り返している。トランプ大統領による貿易制限政策はトルコにまで波及、通貨リラの急落を招いた。しかし先週までにほぼ終了した4-6月期の決算発表では、日米ともに増益率が20%台をキープ。これが株価を下支えする形になっている。ダウ平均は先週356ドルの値上がり。日経平均は28円の下落だった。

投資家の側からみると、企業の好決算は現状の明るさを映している。だが貿易戦争は、将来に不安があることを示している。だから長期的な視点からの買いは難しく、短期的な売買になりやすい。そのうえアメリカの中国に対する第2弾の関税引き上げが23日から実施されることで、電子製品の貿易が抑制される。このため市場でも、ハイテク関連株が敬遠され始めた。

貿易戦争に関しては、米中両国が事態の打開に向けて、次官級の協議を開始することになった。ニューヨーク市場ではこれが上げ材料になったが、成功する見込みはあまりない。したがって今週以降も、貿易戦争の影は市場を覆い続ける。その一方でことし後半の企業業績見通しが悪化すると、貿易戦争とのバランスが崩れてしまう。

今週は22日に、6月の全産業活動指数。24日に、7月の消費者物価と企業向けサービス価格。アメリカでは22日に、7月の中古住宅販売。23日に、7月の新築住宅販売が発表される。

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

新次元・SF経済小説 【 プ レ ー ト 】

2018-08-19 08:05:41 | SF
2018-08-19-Sun CATEGORY: 政治・経済


第5章 ニッポン : 2060年代

≪46≫ 2061年12月 = まだ学生だったころ、真夏の日本アルプスを縦走したことがある。家に帰ると疲れ果てて、まる1日眠りこけた。そのときと同じ感覚で熟睡し、パッと目覚めたら可愛いマーヤの顔があった。ぼくの手首を握りながら「お早うございます。血圧も正常です」と言い、にっこり笑う。

「もう起きてください。あと1時間で地球の大気圏に突入します。すべて予定通りですから、何も心配はありません」

――えっ、もう4年も経ったということか。君はずっと起きていたの?
「あなたの寝顔を見たり、地球でやることを復習したり。バッテリーを節約するために、横になったりしていました。いろいろ話したいこともありますが、もう時間がありません。これから大事なことを申し上げますから、しっかり聞いてくださいね」

――ああ、完全に記憶は取り戻した。気分も上々だから、何でも言ってくれ。
「まず、この宇宙船は日本時間の2061年12月20日の夜明け前に、神奈川県の鵠沼海岸に着陸します。私は今後の準備やダーストン国との連絡をするため、貴方を海岸に降ろしたら、そのままUFOに向かわなければなりません」

――えっ、まさか帰っちゃうんじゃないだろうね。
「大丈夫、帰りませんよ。ただ準備に2か月ほどかかります。ですから2か月後には、貴方がどこに住んでいようと必ず見つけて伺います。その間、気を付けて元気でいてくださいね」

――淋しいけど、判ったよ。でも、どうして2061年なんだろう。行きと帰りで8年半ぐらい宇宙船に乗ったはず。ダーストン国には5年ほどいたから、いまは2063年じゃあないのかい。
「ダーストン星の公転周期は168日ですから、1年が地球の半分もないんです。だから地球の時間で言うと、貴方がダーストン国に滞在した時間は約2年半。お間違いないように。これから私たちは、地球の時間で暮らすことになるのですから。

海岸に座っていれば、すぐに救急車がやってきて、貴方を病院に運ぶはずです。病院で健康が確認されれば、貴方は自由になる。11年前に宇宙船で飛び立った航空自衛隊の隊員だということも明らかになり、マスコミが騒ぎ立てるに違いありません。ただ貴方には11年間の記憶がない。ダーストンのことは決して喋らない。これだけは肝に銘じてください」

いつの間にか、マーヤに命令されるようになっている。こちらがロボットになったような気分だ。

                            (続きは来週日曜日)

貯蓄に走る サラリーマン

2018-08-18 07:23:54 | 家計
◇ 賃上げしても増えない消費 = 厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計によると、勤労者1人平均の現金給与総額は44万8919円で前年を3.6%上回った。この伸び率は21年5か月ぶりの大きさ。人手不足で賃上げが中小企業にまで浸透した結果だ、と分析されている。ところが総務省が発表した6月の家計調査をみると、家庭の消費支出は5か月連続で減少した。

この2つの調査がたまたま同じ日に発表されたため、新聞やテレビは「賃金は伸びたが、消費は減った」と報道したところが多い。だが、どうして消費が伸びないのかについての解説は、あまり見られなかった。そこで家計調査をもう少し掘り下げてみると、サラリーマン世帯の貯蓄率が異常に高くなっていることが判る。

たとえば4-6月期のサラリーマン世帯の実収入は、平均で51万0423円だった。そこから税金や健康・年金保険料などを差し引いた可処分所得は40万5559円。ところが消費支出は26万7127円しかない。その差14万円ほどは、借金の返済や貯蓄に充てられたと考えられる。消費支出は可処分所得の66%だが、この比率は4年前には74%だった。

安倍首相は「賃上げが進んで消費が伸びれば、経済の好循環が始まる」と期待している。しかし働く人が貯蓄に走れば、この好循環は起こりにくい。なぜ人々が貯蓄を増やすのか。その答えが「年金や介護の将来に不安を感じるから」だとすれば、政府の政策自体が“経済の好循環”を阻んでいることになる。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +78.34円≫

       【今週の日経平均予想 = 5勝0敗≫   

曲がり角に来た 中国経済 (下)

2018-08-17 07:22:34 | 中国
◇ 1兆円を鉄道建設に上乗せ = 成長率が鈍化してきたところへ、アメリカの関税引き上げ攻勢。固定資産投資と個人消費に続いて輸出まで伸び悩めば、習政権が公約している6.5%の経済成長も難しくなる。そこで中国政府は景気政策を大転換、抑制気味だった財政を拡大することになった。具体的には7320億元(12兆円)の鉄道建設予算を8000億元に増額。たとえば四川省-チベット自治区間の高速鉄道、地方都市の地下鉄建設を促進する。

この結果、新たに必要となる鋼材は約200万トン。アメリカ向けの鉄鋼輸出118万トンを十分に補える計算だ。しかし大きな問題も発生する。全国の鉄道を管理運営する鉄路総公司は、すでに5兆元の負債を抱えているが、新線は概して赤字路線。借金は膨れるばかりだ。また鉄鋼メーカーも息は吹き返すが、生産性が低い工場の廃棄はますます遅れてしまう。

したがって、今後の注目点は2つ。まずは今回のてこ入れで、中国経済の成長鈍化が止まるのかどうか。ことし後半の固定資産投資、小売り売上高、そして輸出の動向。最終的には下期の成長率が6.5%を維持できるか。仮に維持できないとすると、アジアを中心に世界経済には寒風が吹きこむ。むろん、日本も例外ではない。

もう1つは、地方政府や国有企業の赤字が増えること。金融機関の不良債権が増大し、これが金融不安に発展すると大変だ。いわば中国版のリーマン・ショックが、起きる危険性もないではない。もし起きれば、世界経済には深刻な影響が伝播する。こちらの動きにも、気を付けておかねばならないだろう。

       ≪16日の日経平均 = 下げ -12.18円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ≫ 

Zenback

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