二年前のダービーで14着に沈んだとき、「ああ、キタサンブラックはそういう馬だな……」と思って以降、今でもその考えに囚われている競馬ファンが、実は意外に多いと思う。理由として考えられるのは同期にドゥラメンテという怪物がいたこと、同じくリアルスティールにも皐月賞、ダービーで力負けしていること、母の父がサクラバクシンオー(短距離専門)であること、勝ったレースはタイムが平凡、または2着との差が僅かなこと、等々。
だからGⅠレースに勝った後でも、常に人気が成績を下回る、という現象が長く続いた。キタサンブラックが初めて一番人気に支持されたのは菊花賞優勝の一年後、デビューから12戦目の京都大賞典だが、これ以前に6勝(GⅠ2勝)、2着一回、3着三回。唯一の着外がダービー、という堅実な同馬にしては低く見積もられたものだが、ダービーの惨敗を見て『そういう馬』と思い込んだ先入観は、なかなか変えようがない。そんな競馬関係者・ファンが多かったのではないか。
これで通算GⅠ5勝、史上4頭目の天皇賞春の連覇、「しばらく破れない」と言われていたディープインパクトのレコードを11年ぶりに大幅に更新、等々キタサンブラックの偉業を讃えるフレーズはいくらもあるが、サトノダイヤモンドに騎乗したルメールが「キタサンブラックが強過ぎた」とレース後のインタビューに答えているのが、もっとも印象的だった。
武豊も、優勝騎手インタビューで「去年よりずっと強くなっていた。もう少し早いペースでも大丈夫だと思った」と、同馬の成長ぶりに改めて言及している。
「最後に、ファンの皆様に一言お願います」はインタビュアーの常套句だが、武豊は「これからも応援してください」と答える。多くのスポーツ選手が「応援、よろしくお願いします」と紋切り型に言ってしまうところだが、武豊の「応援してください」の方が言葉として正しく、謙虚さもあり自負心も感じられ、こういうことは真似した方がいいと思います。
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