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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ポリーニ ピアノリサイタル(ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995)

2016年01月09日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
ブーレーズの訃報に接して

 20世紀を代表する作曲家の一人であり、指揮者としても世界の名だたるオーケストラやバイロイト音楽祭で活躍したピエール・ブーレーズが、1月5日に90歳で亡くなったという知らせが、ニュースや新聞、SNSで飛び交った。
 近頃は、作曲でも指揮でもブーレーズは音沙汰がなかったが、晩年は病気がちで外出もしていなかったという。しかし、ブーレーズ死去の報せは、大きなニュースとして世界を飛び回り、僕も久々に、作曲においても指揮においても徹底して「厳しさ」と「研ぎ澄まされた感性」を持ち続けたこの大音楽家のことを思い返すこととなった。
 ブーレーズの作品や演奏を演奏会で聴く機会は何度かあったが、最も印象に残っているのは1995年、梶本音楽事務所の主催で行われた「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル」で聴いた演奏会の数々。ブーレーズの作曲家と指揮者の両面に焦点を当て、世界の一流オケやプレイヤーを集め、また普段は作品の規模や編成の問題等から演奏困難な曲を取り上げ、全13回の意欲的な演奏会が組まれた。その中から訪れた5回の演奏会を、その当時書いた感想で振り返ってみたい。それから、2002年にやはり梶本音楽事務所の主催で行われた「ポリーニ・フェスティバル」のなかの、ブーレーズ指揮ロンドン交響楽団の演奏会も、この機会に「感想録アーカイブス」としてアップする。

ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団 1995.5.19 サントリーホール
ブーレーズ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン1 1995.5.23 東京ベイN.K.ホール
ブーレーズ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン2 1995.5.24 紀尾井ホール
ブーレーズ指揮 NHK交響楽団 1995.5.30 サントリーホール

pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1995年5月18日(木)
マウリツィオ・ポリーニ(Pf) ~ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995~
東京文化会館
1.シェーンベルク/3つのピアノ曲Op.11
2.シェーンベルク/6つのピアノ小品Op.19
3.シェーンベルク/5つのピアノ曲Op.23
4.ウェーベルン/ピアノのための変奏曲Op.27
5.ブーレーズ/ピアノ・ソナタ第2番 ☆

 今年の日本のコンサートでの最大の呼び物の一つである「ブーレーズ・フェスティバル」の初日のコンサート、ポリーニのリサイタルを聴いた。今夜のコンサートでは休憩後のブーレーズのソナタが圧巻だった。ポリーニは前半の曲目と共に、この超難曲を暗譜で弾きのけたことも一つの驚きだ。
ブーレーズの第2ソナタは激しい超絶技巧が何より目立つ曲ではあるが、多彩な音色や繊細な表情も同等に重視され、さまざまな要素が一つのまとまりを持ち、全体の構成力という点でも非常に優れており、ブーレーズの代表作にふさわしい曲だ。
この曲に要求されているものを、ポリーニは余すところなく汲み取り、曲の真価を見せつけてくれた。ブーレーズが言うところの「現代音楽が聴衆から支持されないのは演奏のまずさに起因する」という言葉通り、これがポリーニ以外のピアニストに弾かれれば、多かれ少なかれ曲の魅力は減じられてしまうように思う。それだけポリーニの演奏は曲の核心を捕らえ、白熱し、聴衆を演奏の渦に巻き込んでしまうほどの迫真性があった。終演後、ステージに呼び出されたブーレーズに、ポリーニと同様の熱い拍手と歓声が送られた。





「ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995」の総合プログラム

 今でも現役で活躍を続け、彼岸の境地に入ってきたポリーニだが、1995年と言えばこのピアニストの心技体全てが整い、最も油が乗っていた時期ではなかっただろうか。そんな全盛期のポリーニの演奏でブーレーズの第2ソナタを聴けた経験は貴重だし、今思い返しても当時の感銘が蘇ってくる。
 ただ感想を読み返してみると、シェーンベルクとウェーベルンの名作についてのコメントが殆ど皆無。眠くなってしまったのかも知れない(もったいない。。)。いずれにしても、今はブーレーズのソナタを聴いた記憶しか残っていない。
 この曲の演奏についてもあまり具体的な点についての感想は書かれていないが、演奏全体から放射される光の強さ、聴き手の心を捉えるパワーが並外れたものだったことははっきりと記憶に残っていることを改めて認識した。 
(2016.1.8)

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