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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

ブーレーズ指揮 NHK交響楽団(ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995)

2016年01月25日 | pocknのコンサート感想録(アーカイブ)
pocknのコンサート感想録アーカイブス ~ブログ開設以前の心に残った公演~

1995年5月30日(火)
ピエール・ブーレーズ指揮 NHK交響楽団/晋友会合唱団
~ピエール・ブーレーズ・フェスティバル 1995~
サントリーホール

1.バルトーク/バレエ音楽「中国の不思議な役人」 ㊝
2.ラヴェル/バレエ音楽「ダフニスとクロエ」   ㊝☆

 今夜のコンサートは私のコンサート体験のなかでも超ビッグなものとなるコンサートだった。ロンドン響、シカゴ響、アンサンブル・アンテルコンタンポランと、世界第1級の楽団の出演がメインのこの「ブーレーズ・フェスティバル」の中で、唯一持たれた我らがN響とのコンサート。それだけに期待と同時に「しっかりやってくれ」という激励めいた気持ちも加わり、バルトークでは手に汗を握ってしまった。
 N響は見事にその期待に応えてくれ、気合の入った熱演とN響ならではの卓越したアンサンブル、個人の名妓を聴かせた。実際、力の込め方には目を見張る演奏で、バルトークらしい凝縮されて輝きを発する響き、激しいリズムの鼓動がガンガン伝わってきた。「中国人」の追っかけシーンでの低弦から始まるフーガにも凄まじいばかりのエネルギーがこもり、19日のロンドン響ではついぞ感じられなかった「熱」を終始帯びたすばらしい演奏となった。ブーレーズの指揮は明快で鮮やか。どんな複雑な場面でも的確な指示でオケをまとめ上げ、そうした明快さのぶつかり合いから発する火花はそれだけに鮮烈だ。後半のラヴェルへの期待は一層高まった。
 ラヴェルは極めつけの名演となった。ブーレーズの鋭い分析力と構築力は音楽の細部まで明るい光を照らし、それぞれの働きが見えてくる。モザイク画を見るように細部の鮮明さと全体の像が見えてくる。音の魔術師ラヴェルの卓越したオーケストレーションへの新たな発見の連続、そしてメカニックな驚きと同時に方向性がしっかり定まった音たちの生命感に溢れる歌、運動、それらが歌い上げるドラマ。綿密で滑らかな動き。
 終曲の「全員の踊り」で演奏も最高潮に達した。火花のぶつかり合い、燃え上がる炎。ロンドン響では冷静・沈着だったブーレーズの演奏からは想像できない程の激しさ。そしてその激しさに流されない透明度の高さ。こうした最上質の演奏がここまで盛り上がれば、聴き手の心はいやがおうにも盛り立てられる。
 ブラボーの大歓声はオケが退場した後も続き、再び登場したブーレーズにスタンディングオヴェーションで大歓声。私も感無量の大感激の気分でブーレーズ/N響に拍手を送った。


総合プログラムの見返しのページにもらったブーレーズのサイン


 1995年5月18日から2週間に渡って繰り広げられてきたブーレーズ・フェスティバル全13公演も、残すところ3公演となった5月30日に行われたブーレーズ指揮のN響公演。これが僕がこのシリーズで聴いた5回のコンサートの最終日だった。そして、結局この演奏会が最も強い感銘と感動を味わうものとなった。
 ロンドン響との演奏会でブーレーズの指揮を「面白くない」と感想に書いたが、ブーレーズの指揮者としての実力を思い知ったのもこのN響との演奏会だった。大物指揮者が客演したときにN響が聴かせることのある、一種神がかり的な演奏として、この演奏会はN響の名演史のなかにいつまでも刻まれることだろう。折しも今夜、ブーレーズの追悼特集として、テレビでこの日のバルトークを放送した。この演奏のクオリティとテンションの高さを改めて追体験した。
(2016.1.24)

ブーレーズの訃報に接して

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