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N響 2024年1月B定期(トゥガン・ソヒエフ 指揮)

2024年01月28日 | pocknのコンサート感想録2024
1月25日(木)トゥガン・ソヒエフ 指揮 NHK交響楽団
《2024年1月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.モーツァルト/協奏交響曲変ホ長調 K.364
【アンコール】
 ♪ モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第2番変ロ長調 K.424~第2楽章
 Vn:郷古廉/Vla:村上淳一朗
2.ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調 Op.55「英雄」



1月のN響定期は3つのプログラム全てをトゥガン・ソヒエフが指揮。先に行われたAプロとCプロがツイッターで大絶賛されているのを見て、元々の期待が益々高まった。

前半のモーツァルトは、「モーツァルトは鮮度が命!」とつくづく実感する瑞々しく生き生きした演奏。郷古さんの艶やかなヴァイオリンと村上さんの懐の深いヴィオラは、今まさに音楽が涌き出て来るような即興的なセンスと新鮮なインスピレーションに富み、自由自在に駆け巡り、歌い、肩肘張らず楽しげに自然に語り合っていた。メランコリックな第2楽章もあまり深刻ぶらず淡々と歌を紡いで行きながら、デリケートで純度の高い美しい世界を表現していて心が洗われるよう。

ソヒエフが指揮する小編成のN響も、2人のソリストのノリに敏感に反応して軽やかで瑞々しく、テイストもしっくり融合して、気心知れた仲間同士で音楽を楽しんでいる様子が窺えた。ソリストはオケのトゥッティも一緒に弾いて、シンフォニア・コンチェルタンテの和気あいあいとした雰囲気。N響の仲間同士ならではのシーンに好感が持てた。アンコールでの郷古さんの極上の歌と、それに温かく寄り添う村上さんのハーモニーによるデュオも素敵だった。

後半は「エロイカ」。ソヒエフ/N響は、モーツァルトでの軽やかなノリに、ベートーヴェンらしい気概に溢れた強い意志を加え、キビキビと攻めて来た。ひとつひとつのフレーズをどう聴かせたいかという意思をはっきりと丁寧に伝え、簡潔でパンチが効いて無駄なく進んで行く。

ただ、共感する表現はあちこちにあるのだが、それが心の核にビーンと響いて来るというところまで来てくれない。AプロとCプロの評判から、N響が稀に聴かせる魔法にかかったような響きでゾーンに入ったような演奏を期待していたのだが、そうした次元には届かなかった。期待が大きすぎたせいかも知れないが、「英雄」のような実演に接する機会も多い超名曲は、ちょっとやそっとの良い演奏では心がなかなか動かない自分の感性が問題なのかも知れない。

コンマス席にはまた外からの起用で、トゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団のコンマスを務める藤江扶紀さんが座った。この席に度々外部アーティストが起用される意図を知りたい気持ちは残るが、お堅いN響のコンマス席に女性が座り、颯爽と優美にイニシアチブを取る姿は悪くない。近い将来の新たなコンマスとして歓迎したい。

N響 2023年1月B定期(トゥガン・ソヒエフ 指揮)
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2 コメント

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Unknown (てくの)
2024-01-29 12:58:35
最近N響の演奏方法に変化があるように感じました。ディナミークスについてです。
弦楽器はピアニッシモの部分を軽く、そっと弾いている様に思いました。
YouTubeに公開されている尾高さんのブラームス3番の演奏を聴いてそう思いましたが、私の気のせいかもしれません。同じく公開されているドヴォルザークの8番はそう感じませんでした。
返信する
N響の演奏方法 (pockn)
2024-01-29 14:48:25
てくのさん、コメントをありがとうございます。
ディナミークの表現方法は指揮者によって大きく異なりますが、オケとしての特性とかクセもあるのかも知れませんね。僕は気づかなかったので、次は注意して聴いてみます。
返信する

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