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N響 2022年6月B定期(鈴木優人 指揮)

2022年07月01日 | pocknのコンサート感想録2022
6月23日(木)鈴木優人 指揮 NHK交響楽団
《2022年6月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1.バッハ/鈴木優人編/パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582
2.ブリテン/ヴァイオリン協奏曲 作品15
【アンコール】
 ♪ イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番ホ短調 Op.27-4~サラバンド
 Vn:郷古 廉
3.モーツァルト/交響曲 第41番 ハ長調 K. 551 「ジュピター」

6月のN響B定期の指揮者は昨年の1月に続いて鈴木優人。最初は自らアレンジしたバッハで多才ぶりを発揮した。「パッサカリアとフーガ」は、ストコフスキーによるゴージャスなアレンジが有名だが、鈴木のアレンジでは多彩な音色を用いながらも、基調にはバッハが言葉のないこの音楽に託した信仰心が親密に伝わってきた。

開始は弦楽合奏。オルガンのパイプに風を送り込むようなリアルな呼吸が聴こえた。その後、トランペットと弦のソロやピッチカート、グロッケンシュピールなどがとても印象的な音色やテクスチャーを聴かせる。響きは新鮮だが、これ見よがしではなく、楽器同士、或いは変奏と変奏の楽曲同士が調和しながら室内楽的に進んで行く。最後は、最太のパイプをオルゲルプンクトで鳴らすような重厚な響きが轟き、チャペルでオルガンを聞いている気分に浸った。N響の深い呼吸による落ち着いた表現も見事。作曲もする鈴木の、アレンジでの非凡さも際立つバッハだった。

続くブリテンのコンチェルトでは、N響のゲストコンマスに就任した郷古廉が圧倒的なソロを聴かせた。郷古のヴァイオリンは、切れ味、勢い、密度、集中力どれを取ってもずば抜けている。研ぎ澄まされた感性で、一音一音に魂を投入するように全身で音楽を表現する。そのどれもが百発百中の精度で、狙った音を狙ったイメージ通りに弾いているのが確信できてしまう。そのうえ音色や表現は艶やかな色香も湛え、人間の様々な感情がうごめく。

新たに迎えたコンマスとの共演となった鈴木/N響は、こうした郷古のソロを深い懐で受け止め、ガチで対峙し、両者による熱い競演で溢れる生命力とパッションを聴き手に届けた。先輩コンマスのマロさんが、郷古さんの手をガッチリと握って健闘を讃える姿もいい。アンコールのイザイも透徹とした美しさを放って秀逸だった。

既にソリストとして高い評価を得ている郷古がコンマスに就任したことで、N響に新たな風が送られるのも楽しみ。コンマス就任は4月1日だったそうだが、かなり後になってこのことを知った。N響は相変わらず団員の動向を伝えないオケだ。退団する方も、新しい団員も、事務連絡レベルではなくちゃんと紹介しないのはどういうわけだろう。

最後は「ジュピター」。冒頭の2つのテーマの鮮やかな対比で始まり、伸び伸びと歌い、ふくよかで潤いのある泰然自若の演奏。張り切り過ぎず、前半のバッハと同様に調和がある。躍動するバスラインが、伸びやかな上声部をしっかりと支え、幅と奥行きも作り出し、にこやかな表情を浮かべる「ジュピター」だった。

客席からの拍手に応えて何度もステージに登場する優人さんは、マロさんらと何度も握手を交わし、最後はマロさんが周囲の楽員と次々と握手を交わした。沢山の握手シーンを見られて良かった。

角田鋼亮/日フィル(Vn:郷古廉) 2021.11.5 サントリーホール
鈴木優人/N響 2021.1.28 サントリーホール
読響特別演奏会:鈴木優人指揮「ジュピター」 2020.7.5 東京芸術劇場
N響公演の感想タイトルリスト(2017~)

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