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クァルテット・エクセルシオ 第44回東京定期演奏会

2023年06月29日 | pocknのコンサート感想録2023
6月24日(土)クァルテット・エクセルシオ
~Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇~
~第44回東京定期演奏会~
東京文化会館小ホール

【曲目】
1. モーツァルト/弦楽四重奏曲第18番イ長調 K.464
2.ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
3.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第16番ヘ長調 Op.135

クァルテット・エクセルシオの演奏会は日程が合わず2年以上ご無沙汰になってしまったが、久々に聴けて、結成30年を迎えるエクの良さをあらためて感じることができた。

モーツァルトの冒頭でエクはいきなり魅了。リズムの呪縛から解放されて天上で天使たちが自由に踊り、跳ね回っているよう。そのうえ、4人は見事にシンクロしてひとつの音楽を奏でる。第1楽章を特徴づけるアウフタクトから「タン・ターン」と奏でられる和音が弾むステップの微妙な「溜め」が、優美な奥ゆかしさを与えるところなどもエクの真骨頂。エクは譜面から常に新たなインスピレーションを感じ取り、それを4人が瞬時に共有しつつ生き生きと音楽を伝えた。

素敵な演奏ではあったが、聴き終えて何か物足りなさを感じた。モーツァルトの「ハイドン・セット」はどれも有名だし名曲と云われているが、これまで何度も様々な名カルテットの演奏で聴いて、心から感動したのはハーゲン・クァルテットのときだけで、それ以外は今日と同じような物足りなさが残った。これは、モーツァルトが弦楽四重奏曲という縛りのなかで、ファンタジーを存分に生かせなかったためではないか、という気がして来た。それでも、心底感動できるモーツァルトをエクには期待したい。

続くヤナーチェクの「ないしょの手紙」は今日の白眉。最晩年のヤナーチェクが抱いた若い人妻への恋心が音楽として赤裸々に噴き出しているのがリアルに伝わって来た。プログラムノートには、ヤナーチェクの恋心は「プラトニック」と書かれていたが、音楽からは純愛では満たされないことへの悲痛とも云える叫びが聴こえることもしばしば。エクはここでは調和よりも各々がそれぞれの胸の奥にたぎる思いをぶつけあった。そして4人の声がトゥッティで合わさると、切羽詰まった熱い思いが濃縮され、高い緊張感で聴き手に迫ってきた。死ぬ1カ月前に書かれた老人の書いた音楽とは信じがたい強烈なパッションが伝わってきた。芸術家にはこうした枯れることのない熱さが必要なのかも知れないが、奥さんが出版に躊躇して10年間出版されなかったそうだ。

最後はベートーヴェンの最後のカルテット。一番心に沁みたのは第3楽章。溶け合ったハーモニーから熟成された芳香が立ち昇ってくるようで、しっとりとした深淵な演奏からは、30年の演奏活動で積み上げられ、育てられてきたものの重みと深さが感じられた。他の楽章も良い演奏だったが、第3楽章で至った世界と比べると普通な印象。ベートーヴェンで度々名演を聴かせてくれているエクには、高いものを求めてしまうことをお赦し願いたい。

クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第5回 2021.3.24 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第4回 2021.2.6 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第3回 2021.1.13 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第2回 2020.12.16 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第1回 2020.10.14 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ 第37回東京定期演奏会 2019.11.17 東京文化会館小ホール

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