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クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第1回

2020年10月16日 | pocknのコンサート感想録2020
10月14日(水)クァルテット・エクセルシオ
~Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇~
~ベートーヴェン生誕250年記念 弦楽四重奏全曲チクルス第1回~
浦安音楽ホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 Op.95 「セリオーソ」
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 Op.59-3 「ラズモフスキー第3番」
3.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op.127

浦安音楽ホールはクァルテット・エクセルシオの活動拠点と知り、遠いけれど是非ここで聴いてみたいと思った。カルテットを聴くには理想的な響きと雰囲気を持つ素敵なホールだ。お客の入りは上々で両隣とも埋まった。

最初は「セリオーソ」。冒頭は怒濤のイメージがあるが、エクは攻撃性を抑え気味に、厳しく諭すような態度。対照的な穏やかなテーマは天上の世界を思わせる美しさを湛える。第2楽章は、試練とその後に訪れる楽園について語り合う感じ。再び厳しい下界と安息に満ちた天上界が対比される第3楽章に続き、終楽章では下界を果敢に進み、最後はこの世を謳歌して意気揚々と駆け抜けた。哲学的とも云えるかも知れないが、理屈っぽさはなくエクらしい血の通った親密な「セリオーソ」だった。

お次は「ラズモフスキー第3番」。外向的でパフォーマンスが映える曲だが、エクのベクトルは内側に向かう。派手やかにガンガン攻めることができるところでも慌てず騒がず泰然自若に構え、音楽を温め、熟成させる。やがて発酵による熱が発生し、その熱は外に向けて発せられる。短絡的な聴き映え効果には目もくれないエクの姿勢からは、この作品のもつ本物の熱さが伝わってきた。

そして最後はベートーヴェン晩年の12番。冒頭の和音の充実ぶりは、がっしりとした石造りのゴシック寺院を思わせる。それはただの冷たい「ハコ」ではない。聖堂には会衆が集い、祈りによる熱気とお香の薫りが堂内を満たす。その残り香がすーっと消えて始まった第2楽章はこの世のものとは思えない美しさ。徐々に徐々に高みへと導かれて行った。いつまでも終わってほしくない気分。第3楽章で音楽はあちらの世界へ足を伸ばし、フィナーレは片足だけでこちらの世界に踏みとどまりながらも魂は異次元へ旅立ってしまった。

ベートーヴェン晩年のカルテットにはどれも共通点がある。それは、単に腕が立ってアンサンブルがしっかり噛み合って熱演を繰り広げるだけでは表現できない、計り知れない大きさと深さ、崇高さがあること。エクはこれを全能の神のような大仰なやり方ではなく、気負うことなく自然に聴き手の心に入ってきて、ベートーヴェンの深淵な世界を見せてくれる。聴き終わったあと、心の隅々まで栄養が行き渡り満たされた気分になった。

こんな素晴らしいクァルテットが日本で活動を続けてくれ、気軽に(料金も!)聴けることは本当に嬉しく有難い。エクの全曲チクルスはこの先も聴き逃せない!

クァルテット・エクセルシオ & タレイア・クァルテット 2020.9.25 第一生命ホール
小山実稚恵&クァルテット・エクセルシオ/渡邉玲雄 2020.2.26 東京文化会館小ホール
クァルテット・エクセルシオ 第37回東京定期演奏会 2019.11.17 東京文化会館小ホール
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