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クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第5回

2021年03月26日 |  pocknのコンサート感想録2021
3月24日(水)クァルテット・エクセルシオ 
~Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇~
~ベートーヴェン生誕250年記念 弦楽四重奏全曲チクルス第5回~
浦安音楽ホール

【曲目】
1.弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調 Op.131
2.弦楽四重奏曲第15番イ短調 Op.132

ベートーヴェン生誕250年を記念して浦安音楽ホールで10月から始まったクァルテット・エクセルシオによる弦楽四重奏曲全曲演奏会が最終回を迎えた。締めの演目は、体力も精神力も極限まで使い果たすような大曲にして難曲を並べ、エクの並々ならぬ決意が窺える。そして、最終回を飾るに相応しい充実の演奏が繰り広げられ、エクがまた一回り大きく感じられた。

前半は第14番。冒頭の陰鬱なフーガは、逃れることのできない運命を見つめ、受け止め、それに対峙しようと前向きに模索するよう。続くアレグロは船出。目指す方向が定まり、4人が四肢のそれぞれの役割を担い、意気揚々と大海に漕ぎ出す。エクの柔軟な動きに力がみなぎる。曲が進むなかで、それぞれのパートが個性のある語り口で対話を交わしながらも同じ方を向き、推進力を増幅して行った。能動的なアプローチが音楽を前へ、外へと押し広げて行く。様々な風景を見て、多くのことに出会い、長い旅の末に到達したパラダイス。4人が成し遂げた偉業に立ち会う思いがした。

後半は僕にとって昔から大切な存在の第15番。前半の14番で長い旅を終えたあとの、また長い旅の始まり。エクの毅然とした演奏はその決意表明。しかし気負いはない。慌てず着実に、緊迫感をみなぎらせて第1楽章を弾き終えると、滑らかに歌を交わす第2楽章へ。4人のベクトルは親密かつ大らかに外へ向けて広がって行く。そして第3楽章!柔らかな光が注ぐチャペルの中での穏やかな祈りの情景。神父から受ける祝福は、互いに見つめ合って信仰を確かめる親密な儀式。穏やかさと並んで、ほとばしる喜びや感謝というベートーヴェンがこの音楽に込めた思いも実感できた。シューベルトはこれを聴いてあのクインテットを作曲したのでは、という思いも浮かんだ。

屈託のない対話を交わす第4楽章は、病が癒えた安心感と解放感。そして終楽章、ここを目指してとうとうやってきたという深い感慨にはやる気持ちを、チェロの大友さんが落ち着いて受け止め、4人は悠々と力強く、大きな波をダイナミックに乗り越えて行き、そして到達した集大成の崇高さ。トリハダ。シリーズ最後を飾るに相応しい演奏、そして作品だった。

ベートーヴェン最後の弦楽四重奏曲の第16番をやったとき、これをシリーズの最後にやって欲しかったと思ったが、エクが15番を最後に持ってきた理由がよくわかった。
大きな仕事を成し遂げたエクの新たな挑戦が始まる。

クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第4回 2021.2.6 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第3回 2021.1.13 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第2回 2020.12.16 浦安音楽ホール
クァルテット・エクセルシオ 第37回東京定期演奏会 2019.11.17 東京文化会館小ホール
クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第1回 2020.10.14 浦安音楽ホール

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