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クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェンチクルス第2回

2020年12月19日 | pocknのコンサート感想録2020
12月16日(水)クァルテット・エクセルシオ
~Vn:西野ゆか、北見春菜/Vla:吉田有紀子/Vc:大友肇~
~ベートーヴェン生誕250年記念 弦楽四重奏全曲チクルス第2回~
浦安音楽ホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op.74 「ハープ」
2.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第8番 ホ短調 Op.59-2 「ラズモフスキー第2番」
3.ベートーヴェン/弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 Op.135
【アンコール】
♪ ベートーヴェン/君を愛す

クァルテット・エクセルシオによるベートーヴェンのカルテット全曲演奏会の第2回は、ベートーヴェンの誕生日と云われている12月16日に行われ、250回目の誕生日に素晴らしいベートーヴェンを聴くことができた。

最初は「ハープ」。この曲は特に静かなイメージはないのだが、エクの演奏から伝わってきたのは透明な静寂感。冒頭のゆっくりした序奏から動きが加わる主題提示部に入っても、静寂な空気が支配して心が洗われる気分。徐々に熱がこもり緊迫感が高まってくると、静かな白熱という言葉が相応しい演奏に。第2楽章の静謐な美しさも際立っていた。

続く「ラズモフスキー」でもエクのアプローチはぶれない。各パートが有機的に連携し合い、親密に呼応する。一見平然と演奏しているようで、知らぬ間にどんどん引き込まれていく。噛めば噛むほど味が出るとはこういう演奏のことを云うのだろう。

この曲に限らず、ベートーヴェンのカルテットは、各パートは断片を演奏するだけで、その「端切れ」を4人の連携で一つの形に仕上げなければならないことが多いが、この見事さはエクの真骨頂だろう。「プレイヤー同士が互いの音を聴きあってうまくアンサンブルを作る」とはよく云うが、エクの演奏はプレイヤーのレベルを超越して、そこから発せられる音そのものが意思を持ち、音たちが互いに手を取り合って最高のパフォーマンスを繰り広げるという印象だ。それほど自然に聴こえるのだ。この曲でも第2楽章の穢れなき世界を描いた演奏など、並ぶものなしといっていい。

プログラムの最後は、ベートーヴェンの事実上生涯最後の作品となった16番。その前の15番までの長大で重い作品群とは打って変わって、浮世離れした雰囲気を持つ。ベートーヴェンが人生最後に到達した悟りの世界を示すようなこの曲は、できれば連続演奏会の最後に聴きたかったが、エクは現世を離れた世界を示した。

そしてここでも緩徐楽章の表現が素晴らしく、とりわけ後半、内声を担うセカンドとヴィオラの深く溶け込むような背景に、チェロと共に西野さんが奏でるファーストヴァイオリンのピュアな美しさが忘れられない。終楽章の「ねばならぬか?」の問いと「そうあらねばならぬ!」の答えの深刻な緊迫の後の解放感は、天上に遊ぶ天使たち。終わったときトリハダが立った。でもやっぱりこれは最後の最後に、特別な存在として聴きたかった。ということで、最終回に再演を!

このあと、思わぬアンコールのプレゼントがあった。曲はエク版の「君を愛す(Ich liebe Dich!)」。美しいハーモニーによる歌のメロディーとともに、スプリングソナタ、エロイカ、田園、ヴァイオリン協奏曲、第9などの名曲の断片が次々と現れ、最後は「ハッピーバースデー」で終演。途中でステージにデコレーションキャンドルワゴンが運ばれ、会場の空気が一段暖かく和やかになった。粋で心暖まる演出にほっこり。すてきなベートーヴェンの250回目のバースデーコンサートになった。


クリックで拡大 (クァルテット・エクセルシオのfacebookより)


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