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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

東京藝術大学バッハカンタータクラブ 創立50周年記念演奏会

2022年08月11日 | pocknのコンサート感想録2022
8月6日(土)小林道夫指揮 東京藝術大学バッハカンタータクラブOB会員&現役部員
東京文化会館


【曲目】
1.バッハ/カンタータ第12番「泣き、悼み、憂い、おののきて」 BWV12
A:中野和子/T:鏡貴之/B:小河佑樹
2.バッハ/カンタータ 第45番「人よ、汝はさきに告げられたり、善きことの何なるか」BWV45
A:野間愛/T:頃安利秀/B:浦野実成
♪ ♪ ♪
3. ブランデンブルク協奏曲第1番 BWV1046
4.バッハ/カンタータ 第191番「いと高きところには神に栄光あれ」BWV191
S:高橋節子/T:水越啓
【アンコール】
バッハ/ミサ曲ロ短調 BWV75~ドナ・ノビス・パーチェム

藝大バッハカンタータクラブ(バハカン)は、僕にとってバッハを語るうえで欠かすことのできない大切な存在。残念なことにコロナによる活動休止以来、一般の聴衆も対象とした演奏会は行われないままだった。今日は卒業生との合同特別企画での2年半ぶりのバハカンの演奏会ということで本当に楽しみだった。しかも指揮はバハカン育ての親とも云える小林道夫氏である。

小林氏は直接の指導者から退いて既に17年経つが、氏とメンバーの信頼関係の深さを改めて感じる演奏会となった。90歳を前にした小林氏はしっかりした足取りで指揮台へ昇り、真っすぐに立って指揮をした。指揮する両手が穏やかに音楽を解き放つ。メンバーにも穏やかな表情を向けていたんだろうな。メンバーはそれに応えて一つ一つのフレーズを慈しむように大切に奏でていった。

小林/バハカンは、力みも気負いもなく、静かに深く柔らかく、バッハの魂と交感するように聴き手をバッハの深淵な世界へと導いてくれた。そこには演奏者のバッハへの愛と、作品への共感がある。これはカンタータでも、器楽作品のブランデンブルク協奏曲でも変わらない。壊れてしまいそうなほどのデリケートさで一期一会の音を奏でていった。

バハカンはいつも言葉を大切に届けてくれるが、それを改めて感じた。例えばカンタータ第12番の合唱の歌詞は、ドイツ語が明瞭に聴こえてくるだけでなく、Klagen(嘆き)とかSorgen(憂い)といった言葉の子音が、正に苦悩や憂いを深い闇の奥底から静かに伝えてきて心を震わせる。殊更に苦難を押し付けてくるのではなく、愛情と慈しみを伴って。

喜ばしい表現での温かなハートのこもった歌もステキだ。12番のコラールや45番の合唱が入る楽曲からは、神さまを信じることの喜びと幸福が真っすぐに届けられる。歌っている合唱メンバーがいい表情を見せてくれるのもバハカンならでは。その表情が歌に乗り、聴き手に素直に届けられる。これは言葉のないオケも同じ。メンバー皆がバッハを演奏できる喜びを伝えていた。

ソリスト陣も誰もが心に響く歌唱を聴かせてくれた。なかでもこれまでも度々素晴らしい歌を聴かせてくれているアルトの野間愛さんの歌唱は、澄んだ声でくっきりと言葉が浮かびあがり、心の底から語りかけてきて、聴いていて襟を正したくなるほど気高い自信に満ちていた。後ろの席から「アルトの歌、素晴らしい!」と絶賛する声が聞こえた。野間さんは、もっとメインの音楽シーンにどんどん登場していいアーティストだと思う。

プログラム最後の、3本のトランペットが華やかに活躍するカンタータ191番では、柔らかなハーモニーから眩い光を放って聴き手を魅了した。これを聴くと、アンコールはあれしかないでしょ!という期待通り、ロ短調ミサの終曲「ドナ・ノビス・パーチェム」をやってくれた。小林氏の曲名紹介を聞いただけでグッとくるものがあったが、バハカンならではの演奏にトリハダぞくぞく、目頭が熱くなった。

ようやく聴けたバハカンだが、長期間に渡って活動を制限され続けてきたことには疑問を禁じ得ない。このような価値のある学生の自主的な活動を絶やすことないよう支援することは大学の責務であるはず。通常の授業も含め、藝大がコロナ禍で行ってきた様々な制限については是非検証してもらいたい。

小林道夫チェンバロ演奏会 2020.12.20 東京文化会館小ホール
東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2020年定期演奏会~2020.2.15~
東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2019年定期演奏会~2019.2.17~
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