~ リノスの歌とは古代ギリシアにおける挽歌、葬送の悲歌、
叫びと踊りが交錯する哀しみの歌である ~ (A.Jolivet)
とは、作曲者ジョリヴェ自身が
《リノスの歌》の楽譜の冒頭に書いた言葉です。
幼い頃から音楽のみに留まらず、絵や文学など
芸術的に恵まれた家庭環境で育ったジョリヴェは、
呪術や魔法などを通して、人の人間的たる精神性、民族性などを
音楽に回復させる方向を目指しました。
第二次大戦で兵役を経験した以降の彼の作風はさらに洗練され、
それまでは無調的であった音楽も色彩を増すとともに叙情性を持ち、
よりヒューマニズム的な音楽は一般聴衆にも広く親しまれるように
なりました。
"リノス"とは、ギリシャ神話に登場する半神で、
オルフェウスの弟であり、リラ(竪琴の一種)の名手
として描かれています。
死を悼む人々の慟哭、
5拍子のゆったりした「哀歌」と7拍子の狂奔な「舞曲」が錯綜し、
曲全体を通してギリシャ音階を巧みに使用しながら、
その緊迫した雰囲気を漂わせています。
もしかすると、ジョリヴェ自身が兵役として体験した戦争も、
この曲を作曲した瞳の奥に映っていたのかもしれません。
この曲にはそんな、太古の昔から人間が持っている普遍的な人間性
―怒り、哀しみ、希望―が溢れ出るようです。
~ 昔、音楽は人間の宗教心の神秘的な表現方法であった。私は
自分の音楽をふたたびその方向に戻したい。~ (1945 A.Jolivet)
(文:葛西賀子)
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