26日午前7時過ぎ、日本の小惑星探査機はやぶさが小惑星イトカワ表面に着陸しました。が、サンプル回収のために発射される弾丸は、実際には発射されていなかった可能性が高いようです!はやぶさ着陸中継のページが字数オーバーになりそうなので(w)、続報はこのページで紹介していきます…
☆;"。*,゜;。:,゜;。`: ,゜ ;。 ', ; .´∴ : ' , ' . (*´◇`*) . ' , ' : ∴´. ; ,' 。; ゜, :`。;゜,:`*:。;゜,*。";☆
(12/14)はやぶさのトラブルの解決にもう少し時間がかかりそうなので、今月中旬のイトカワからの出発が難しくなったため、地球への帰還は2010年6月に延期されました。なお、詳しい情報は後ほど…
(12/8)着陸後の経緯についてまとめます。
11/27 スラスター・エンジンの推力が低くなっていることがわかり、復旧のため姿勢コントロールの指令が送られました。
11/28 前日の指令にも関わらず、はやぶさとの通信ができない状態となりました。
11/29 10時過ぎにようやく低利得アンテナを使ったビーコン通信が再開されました。
11/30 電波の変調をON/OFFし、復旧に向けての運用が始まりました。
12/1 途切れ途切れの回線を使って、8 bit/secでテレメータデータを得ることができるようになりました。その結果、11/27に指令した姿勢コントロールは何らかの原因でうまくいかなかったことがわかりました。これで姿勢が大きく崩れたか、またはその他の原因によって、はやぶさの電力が急に落ちたようです。はやぶさの内部に漏れ出した燃料が気化したことによって、内部が急激に冷やされ、電力低下によりバッテリの放電が起こって各種の機器やシステム全般の電源系が広範囲にわたってリセットされたと考えられました。
12/2 スラスター・エンジンの再起動が試されたものの、推力が弱く、復旧できませんでした。
12/3 高利得アンテナ(Z軸)と太陽・地球方向の間の角度が、20~30度に開いていることがわかりました。
12/4 スラスター・エンジンを使った姿勢コントロールもうまくできなくなったので、イオンエンジン用のキセノンガス噴射を使った姿勢コントロールが試されました。
12/5 Z軸と太陽・地球方向の角度は10~20度にまで戻り、テレメータデータを中利得アンテナで得ることができるようになりました。通信速度も256 bit/secまで戻りました。ただし、はやぶさはゆっくり回転していて6分中1分間しか通信できない状況です。
12/6 イトカワからの距離は視線方向(地球-イトカワ方向)に約550kmで、イトカワから時速5kmで離れつつあります。1つだけ故障せずに残っていたリアクションホイールを再起動し、姿勢コントロールに使い始めました。
①まずは気になるサンプル回収の成否について
その後得られたデータが分析されました。サンプル回収のために弾丸を発射する火工品制御装置の記録を調べた結果、弾丸が発射されたというデータは残っていませんでした。11/27に起こった広範囲のリセットによって、データレコーダーの中に保存されたはずの発射装置のデータが失われてしまったようです。しかし、着陸前に送信されたコマンドを調べることができ、その結果着陸時のシークエンスの中に、弾丸を発射させないよう安全モードに戻せというコマンドが紛れ込んでいたことが分かりました。そのようなコマンドが入っていた原因はわかりませんが、人為的なミスの可能性もあるようです。
ただしその一方で26日の着陸時に、発射装置が高温になっていたことも分かりました。弾丸が発射されて加熱されたとも考えられます。
もし仮に弾丸が発射されていなかったとすれば、26日の着陸ではサンプル回収はできなかったことになります。ただし、20日の着陸では、地表に30分もとどまっていたことから、着陸の衝撃で舞い上がった塵やかけらを少しだけ回収できた可能性もあります。カプセルのふたはもう閉じられていて、弾丸が発射されたかどうかに関わらず、3回目の着陸は行わないそうです。サンプルが回収されていることを信じましょう。
(続きはまた今度書きます…)
(12/7)はやぶさは、サンプル回収に失敗していたかもしれません。今日17時前から記者会見があり、2回目の着陸時のデータを分析した結果や、現在の状況が報告されました。はやぶさは、どうやらサンプル回収のための弾丸を発射していなかったようです。発射するための火薬が爆発していなかったことが、データの分析でわかったということです。着陸の拍子に舞い上がったちりを回収できた可能性はあるかもしれません。成功が伝えられていただけに、非常に残念です。しかし一方で、スラスターのトラブルへの対応のために機器の電源を一時OFFにした際、弾丸発射を示すデータが失われたという可能性もあるようです。
さらに、スラスター・エンジンの故障の問題も解決されていません。ホイールもスラスターも故障してしまい、イオンエンジンを使った姿勢制御も試すようです。
帰還は14日以降。はやぶさは帰って来られるのでしょうか?サンプルは回収されているのでしょうか?
(11/30)はやぶさにトラブルです。28日の運用開始時、通信が回復できなかったようです。29日にはビーコン通信が回復し、テレメトリ回線を回復させるため指令が送られたということです。さらに着陸時から続いているスラスター・エンジンのトラブルの原因も特定できず、解決されていないようです。姿勢の回復に時間がかかったのもエンジンの出力が弱かったためのようです。12月上旬には地球への帰途につかなければいけません。問題解決が急がれています。(なお、はやぶさの状況について昨日15時から会見が開かれました。その内容については後ほど解説いたします。参考:探査機の状況について)
(11/29)昨日の運用ではやぶさはセーフモードから完全に通常のモードに戻り、姿勢の制御ができるようになりました。今日、着陸前後のデータのダウンロードが行われるということです。また、昨日ホームページに的川先生の今回のタッチダウンについてのコメント(こちらです)が掲載されました。(なお、昨日の報道内容については確認をとることができません。)
(11/28)報道によると、26日にはやぶさがサンプル回収に成功したことを確認された、とJAXAが発表したということです。やりましたね!はやぶさ!
(11/27)着陸後に上昇を始めたはやぶさに、スラスター・エンジンの異常が起きました。はやぶさはセーフモードに入り、スラスターの燃料消費は止まりましたが、現在そのトラブルへの対応に追われてデータの取得ができない状況にあります。小惑星イトカワ表面に着陸し、サンプル回収を行ったことはほぼ確実ですが、その証拠となるデータが得られるまでには数日かかる見通しです。
26日6:40(探査機時間6:24)に、高度250mから撮影された画像が公開されました。この中には前回20日に放出されてイトカワ地表に着地した、88万人の名前入りのターゲットマーカーが捉えられています。はやぶさの影の左上の明るい点がターゲットマーカーです。
26日午後4時に記者会見が行われました。各報道の内容やその後27日0時までにJAXAが発表した内容などをまとめてみました。
①着陸に向けた降下について
はやぶさは11月20日の着陸後にイトカワから距離100kmまで離れてしまったため、その後姿勢を整えた上で25日までに元の位置にまで戻す作業が行われました。
今回の降下は25日22時頃に始まりました。翌26日6時頃には着陸目標地点であるミューゼスの海上空450mに達し、重力に従って地表に向かってまっすぐ降りる垂直降下へ移りました。
今回はターゲットマーカーが放出されませんでした。ターゲットマーカーを使わなくても目標地点に向けてきちんと誘導できることが、前回の着陸で確かめられたからです。また、降下中に前回放出されたターゲットマーカーが地表に発見されたので、複数個のターゲットマーカーがあるとはやぶさの誘導システムを混乱させる恐れもあり、最後の1つは放出されなかったということです。実際には放出されなかったものの、6:52に仮のターゲットマーカー発射シークエンスが発行されました。
6:53に高度35mでレーザー高度計の使用が停止され、6:55に近距離レーザー距離計の使用が開始されました。午前7時に高度14mで一時的に降下を中止(ホバリング)し、着陸に向けて地表に水平になるように姿勢を整えました。このときから地上との交信が中断されました。ここからはビーコンのみがはやぶさから送られてくる状態となり、速度だけを測定できる状態となりました。
前回は探査機自ら着陸は困難と判断して中止しましたが、今回は着陸中止の条件をゆるくして臨みました。レーザー高度計による高度測定ができなくなった場合、レーザーレンジファインダーの4本のビームのうち2本が距離測定不能になった場合、着陸姿勢に入るための姿勢制御が60度を超えた場合のみにしぼりました。前回着陸中断の原因となった障害物検知の条件は外され、障害物センサーが作動しても着陸は中断されないようにしました。もともとミューゼスの海には大きな岩石は転がっていないので、着陸地点が大きくずれなければ障害物が問題となることはないだろうというのが理由でしょう。
②着陸・サンプル回収について
7:04前後に近距離レーザー距離計が、距離測定モードからサンプラー制御モードに移り、いよいよ着陸態勢に入りました。その後障害物センサーが障害物を検出しましたが、着陸中断条件から外されていたため、着陸は続行されました。もうこの時点で、弾丸を発射せずに上昇に転じることはないようになっていたわけです。
弾丸の発射は、着地によるサンプラーホーンの変形を検出して行われる設計です。縦横両方向への変形が検出できるようになっていて、今回は横方向への変形が検出されたようです。その結果7:35に2発の弾丸が発射されました。着陸地点であるミューゼスの海はレゴリスと呼ばれる細かい砂のような層で覆われており、弾丸を当てても回収できるサンプルの量は多くないと考えられたため、2発打ったということです。着陸は10cm/sで、サンプラーホーンは10cm短縮するので、着地していた時間は約1秒ということになります。その間、2発の弾丸が0.2秒間隔で発射されました。推定ではサンプル量は数百mg程だということです。
弾丸が発射されたといっても、地面に向かって発射されなければサンプルを回収することはできません。そのため着陸時のはやぶさの姿勢が正常だったかどうかがポイントになります。はやぶさが送ってきたテレメトリを分析した結果、どうやら着陸姿勢は正常だったようですが、今後詳しいデータが送られてくれば確認することができるでしょう。また、サンプル回収が正常に行われた場合に発動するはずのシークエンスも実行されたようなので、サンプル回収はほぼ確実だと思われます。
データをダウンロードして解析するまでは確実な証拠は得られませんが、スラスターのトラブルの解決が優先されるので、データの取得にはなお数日間かかる見通しです。
③スラスター・エンジンのトラブルについて
8:35から臼田局へ運用局が移り、データの再生が始まりました。11時前にスラスターに燃料漏れと思われるトラブルが発見されました。降下中にも既に異常が見つかっていたため予備を使っていましたが、その後予備から本来のメイン系統に切り替えてスラスターの噴射を行ったところトラブルが発生したようです。これによりはやぶさの姿勢が不安定となり、地上からのスラスター停止の指令にも反応せず、エンジンを使わないセーフモードへの移行の指令が送信されました。はやぶさは姿勢が乱れたために自動的にセーフモードに入ったようです。その結果燃料消費も止まりました。臼田局での運用が14:50に終了しましたが、その直前にセーフモードへの移行を確認することができ、関係者を安心させました。
スラスターに何が起きたのかはまだ不明ですが、もし燃料漏れだとすると1回目の着地に原因があるかもしれません。また、燃料の消費量は当面の運用には問題のない程度ではあったものの、もともと燃料の残量が問題となっていたので、地球への帰り道で使える燃料がさらに少なくなってしまい、より状況が厳しくなったのは事実のようです。
④今後の運用について
まずはスラスターの問題の解決が優先課題となります。その後2回目の着陸のデータがダウンロードされ、2回目の着陸の詳細がわかることになっています。その後12月初めには地球への帰路につかなければならないので、そのための準備が行われることになります。
着陸、そしてサンプル回収と、ミッションの最大の山場をクリアし、残る課題は地球への帰還とカプセルの回収ということになります。
立川敬二理事長談話と文部科学大臣談話が発表されています。
下は会見での写真撮影の様子です。左から的川泰宣教授、井上一宇宙科学研究本部長、川口淳一郎プロジェクトマネージャー、ミッションアドバイザーの上杉邦憲教授です。難題山積のミッションの成功は、プロマネの川口先生らの適切な判断にかかっているでしょう。
☆;"。*,゜;。:,゜;。`: ,゜ ;。 ', ; .´∴ : ' , ' . (*´◇`*) . ' , ' : ∴´. ; ,' 。; ゜, :`。;゜,:`*:。;゜,*。";☆
(12/14)はやぶさのトラブルの解決にもう少し時間がかかりそうなので、今月中旬のイトカワからの出発が難しくなったため、地球への帰還は2010年6月に延期されました。なお、詳しい情報は後ほど…
(12/8)着陸後の経緯についてまとめます。
11/27 スラスター・エンジンの推力が低くなっていることがわかり、復旧のため姿勢コントロールの指令が送られました。
11/28 前日の指令にも関わらず、はやぶさとの通信ができない状態となりました。
11/29 10時過ぎにようやく低利得アンテナを使ったビーコン通信が再開されました。
11/30 電波の変調をON/OFFし、復旧に向けての運用が始まりました。
12/1 途切れ途切れの回線を使って、8 bit/secでテレメータデータを得ることができるようになりました。その結果、11/27に指令した姿勢コントロールは何らかの原因でうまくいかなかったことがわかりました。これで姿勢が大きく崩れたか、またはその他の原因によって、はやぶさの電力が急に落ちたようです。はやぶさの内部に漏れ出した燃料が気化したことによって、内部が急激に冷やされ、電力低下によりバッテリの放電が起こって各種の機器やシステム全般の電源系が広範囲にわたってリセットされたと考えられました。
12/2 スラスター・エンジンの再起動が試されたものの、推力が弱く、復旧できませんでした。
12/3 高利得アンテナ(Z軸)と太陽・地球方向の間の角度が、20~30度に開いていることがわかりました。
12/4 スラスター・エンジンを使った姿勢コントロールもうまくできなくなったので、イオンエンジン用のキセノンガス噴射を使った姿勢コントロールが試されました。
12/5 Z軸と太陽・地球方向の角度は10~20度にまで戻り、テレメータデータを中利得アンテナで得ることができるようになりました。通信速度も256 bit/secまで戻りました。ただし、はやぶさはゆっくり回転していて6分中1分間しか通信できない状況です。
12/6 イトカワからの距離は視線方向(地球-イトカワ方向)に約550kmで、イトカワから時速5kmで離れつつあります。1つだけ故障せずに残っていたリアクションホイールを再起動し、姿勢コントロールに使い始めました。
①まずは気になるサンプル回収の成否について
その後得られたデータが分析されました。サンプル回収のために弾丸を発射する火工品制御装置の記録を調べた結果、弾丸が発射されたというデータは残っていませんでした。11/27に起こった広範囲のリセットによって、データレコーダーの中に保存されたはずの発射装置のデータが失われてしまったようです。しかし、着陸前に送信されたコマンドを調べることができ、その結果着陸時のシークエンスの中に、弾丸を発射させないよう安全モードに戻せというコマンドが紛れ込んでいたことが分かりました。そのようなコマンドが入っていた原因はわかりませんが、人為的なミスの可能性もあるようです。
ただしその一方で26日の着陸時に、発射装置が高温になっていたことも分かりました。弾丸が発射されて加熱されたとも考えられます。
もし仮に弾丸が発射されていなかったとすれば、26日の着陸ではサンプル回収はできなかったことになります。ただし、20日の着陸では、地表に30分もとどまっていたことから、着陸の衝撃で舞い上がった塵やかけらを少しだけ回収できた可能性もあります。カプセルのふたはもう閉じられていて、弾丸が発射されたかどうかに関わらず、3回目の着陸は行わないそうです。サンプルが回収されていることを信じましょう。
(続きはまた今度書きます…)
(12/7)はやぶさは、サンプル回収に失敗していたかもしれません。今日17時前から記者会見があり、2回目の着陸時のデータを分析した結果や、現在の状況が報告されました。はやぶさは、どうやらサンプル回収のための弾丸を発射していなかったようです。発射するための火薬が爆発していなかったことが、データの分析でわかったということです。着陸の拍子に舞い上がったちりを回収できた可能性はあるかもしれません。成功が伝えられていただけに、非常に残念です。しかし一方で、スラスターのトラブルへの対応のために機器の電源を一時OFFにした際、弾丸発射を示すデータが失われたという可能性もあるようです。
さらに、スラスター・エンジンの故障の問題も解決されていません。ホイールもスラスターも故障してしまい、イオンエンジンを使った姿勢制御も試すようです。
帰還は14日以降。はやぶさは帰って来られるのでしょうか?サンプルは回収されているのでしょうか?
(11/30)はやぶさにトラブルです。28日の運用開始時、通信が回復できなかったようです。29日にはビーコン通信が回復し、テレメトリ回線を回復させるため指令が送られたということです。さらに着陸時から続いているスラスター・エンジンのトラブルの原因も特定できず、解決されていないようです。姿勢の回復に時間がかかったのもエンジンの出力が弱かったためのようです。12月上旬には地球への帰途につかなければいけません。問題解決が急がれています。(なお、はやぶさの状況について昨日15時から会見が開かれました。その内容については後ほど解説いたします。参考:探査機の状況について)
(11/29)昨日の運用ではやぶさはセーフモードから完全に通常のモードに戻り、姿勢の制御ができるようになりました。今日、着陸前後のデータのダウンロードが行われるということです。また、昨日ホームページに的川先生の今回のタッチダウンについてのコメント(こちらです)が掲載されました。(なお、昨日の報道内容については確認をとることができません。)
(11/28)報道によると、26日にはやぶさがサンプル回収に成功したことを確認された、とJAXAが発表したということです。やりましたね!はやぶさ!
(11/27)着陸後に上昇を始めたはやぶさに、スラスター・エンジンの異常が起きました。はやぶさはセーフモードに入り、スラスターの燃料消費は止まりましたが、現在そのトラブルへの対応に追われてデータの取得ができない状況にあります。小惑星イトカワ表面に着陸し、サンプル回収を行ったことはほぼ確実ですが、その証拠となるデータが得られるまでには数日かかる見通しです。
26日6:40(探査機時間6:24)に、高度250mから撮影された画像が公開されました。この中には前回20日に放出されてイトカワ地表に着地した、88万人の名前入りのターゲットマーカーが捉えられています。はやぶさの影の左上の明るい点がターゲットマーカーです。
26日午後4時に記者会見が行われました。各報道の内容やその後27日0時までにJAXAが発表した内容などをまとめてみました。
①着陸に向けた降下について
はやぶさは11月20日の着陸後にイトカワから距離100kmまで離れてしまったため、その後姿勢を整えた上で25日までに元の位置にまで戻す作業が行われました。
今回の降下は25日22時頃に始まりました。翌26日6時頃には着陸目標地点であるミューゼスの海上空450mに達し、重力に従って地表に向かってまっすぐ降りる垂直降下へ移りました。
今回はターゲットマーカーが放出されませんでした。ターゲットマーカーを使わなくても目標地点に向けてきちんと誘導できることが、前回の着陸で確かめられたからです。また、降下中に前回放出されたターゲットマーカーが地表に発見されたので、複数個のターゲットマーカーがあるとはやぶさの誘導システムを混乱させる恐れもあり、最後の1つは放出されなかったということです。実際には放出されなかったものの、6:52に仮のターゲットマーカー発射シークエンスが発行されました。
6:53に高度35mでレーザー高度計の使用が停止され、6:55に近距離レーザー距離計の使用が開始されました。午前7時に高度14mで一時的に降下を中止(ホバリング)し、着陸に向けて地表に水平になるように姿勢を整えました。このときから地上との交信が中断されました。ここからはビーコンのみがはやぶさから送られてくる状態となり、速度だけを測定できる状態となりました。
前回は探査機自ら着陸は困難と判断して中止しましたが、今回は着陸中止の条件をゆるくして臨みました。レーザー高度計による高度測定ができなくなった場合、レーザーレンジファインダーの4本のビームのうち2本が距離測定不能になった場合、着陸姿勢に入るための姿勢制御が60度を超えた場合のみにしぼりました。前回着陸中断の原因となった障害物検知の条件は外され、障害物センサーが作動しても着陸は中断されないようにしました。もともとミューゼスの海には大きな岩石は転がっていないので、着陸地点が大きくずれなければ障害物が問題となることはないだろうというのが理由でしょう。
②着陸・サンプル回収について
7:04前後に近距離レーザー距離計が、距離測定モードからサンプラー制御モードに移り、いよいよ着陸態勢に入りました。その後障害物センサーが障害物を検出しましたが、着陸中断条件から外されていたため、着陸は続行されました。もうこの時点で、弾丸を発射せずに上昇に転じることはないようになっていたわけです。
弾丸の発射は、着地によるサンプラーホーンの変形を検出して行われる設計です。縦横両方向への変形が検出できるようになっていて、今回は横方向への変形が検出されたようです。その結果7:35に2発の弾丸が発射されました。着陸地点であるミューゼスの海はレゴリスと呼ばれる細かい砂のような層で覆われており、弾丸を当てても回収できるサンプルの量は多くないと考えられたため、2発打ったということです。着陸は10cm/sで、サンプラーホーンは10cm短縮するので、着地していた時間は約1秒ということになります。その間、2発の弾丸が0.2秒間隔で発射されました。推定ではサンプル量は数百mg程だということです。
弾丸が発射されたといっても、地面に向かって発射されなければサンプルを回収することはできません。そのため着陸時のはやぶさの姿勢が正常だったかどうかがポイントになります。はやぶさが送ってきたテレメトリを分析した結果、どうやら着陸姿勢は正常だったようですが、今後詳しいデータが送られてくれば確認することができるでしょう。また、サンプル回収が正常に行われた場合に発動するはずのシークエンスも実行されたようなので、サンプル回収はほぼ確実だと思われます。
データをダウンロードして解析するまでは確実な証拠は得られませんが、スラスターのトラブルの解決が優先されるので、データの取得にはなお数日間かかる見通しです。
③スラスター・エンジンのトラブルについて
8:35から臼田局へ運用局が移り、データの再生が始まりました。11時前にスラスターに燃料漏れと思われるトラブルが発見されました。降下中にも既に異常が見つかっていたため予備を使っていましたが、その後予備から本来のメイン系統に切り替えてスラスターの噴射を行ったところトラブルが発生したようです。これによりはやぶさの姿勢が不安定となり、地上からのスラスター停止の指令にも反応せず、エンジンを使わないセーフモードへの移行の指令が送信されました。はやぶさは姿勢が乱れたために自動的にセーフモードに入ったようです。その結果燃料消費も止まりました。臼田局での運用が14:50に終了しましたが、その直前にセーフモードへの移行を確認することができ、関係者を安心させました。
スラスターに何が起きたのかはまだ不明ですが、もし燃料漏れだとすると1回目の着地に原因があるかもしれません。また、燃料の消費量は当面の運用には問題のない程度ではあったものの、もともと燃料の残量が問題となっていたので、地球への帰り道で使える燃料がさらに少なくなってしまい、より状況が厳しくなったのは事実のようです。
④今後の運用について
まずはスラスターの問題の解決が優先課題となります。その後2回目の着陸のデータがダウンロードされ、2回目の着陸の詳細がわかることになっています。その後12月初めには地球への帰路につかなければならないので、そのための準備が行われることになります。
着陸、そしてサンプル回収と、ミッションの最大の山場をクリアし、残る課題は地球への帰還とカプセルの回収ということになります。
立川敬二理事長談話と文部科学大臣談話が発表されています。
下は会見での写真撮影の様子です。左から的川泰宣教授、井上一宇宙科学研究本部長、川口淳一郎プロジェクトマネージャー、ミッションアドバイザーの上杉邦憲教授です。難題山積のミッションの成功は、プロマネの川口先生らの適切な判断にかかっているでしょう。
判る範囲で教えて下さい。
地球に戻ってこれるのでしょうか。
宜しくお願いします。
一昨日の情報では、現在データを取得している段階で、早ければ5日(明日)にもそれが終わるそうです。データを解析してトラブルの原因を突き止め、何らかの解決策を考えなければならないので、せっぱ詰まってますねぇ…
最近忙しくて、なかなか更新できませんが…
今後、着陸の詳しい結果とともに、はやぶさの近況を紹介していきたいと思っています。
楽しみにしています。
SUNのHPにはNASAはユーザーとしても紹介されてたような・・・
それにしても、誤ったコマンドが入ってしまったのは残念でした…
でもいかにして地球に帰還するか、今はそれが最優先課題ですね(-◇-)
お近くへおいでの節は、どうぞ拙宅へもお立ち寄り下さい
→http://blog.q-q.jp/200512/article_77.html
(ご迷惑でしたら、お手数ですがコメント、TBの削除をお願いします)