二、ますます、厳しさが増す小売業
つい数年前まで、「小売業は、簡単に儲かっていいですね」とか「小売業は、楽でいいですよね」等と言われ、「何故ですか」と聞き返すと、
① 売れている物を安く仕入れて、高く売れば良い
(客は、高ければ値打ちがあると思っているのだから)
② もし売れなければ、値下げして売れば、大半は売れる
(店は、もう、十分儲けているのだから、もっと安くしてよ)
③ 売れ残りは、メーカーに返品すれば良い
(メーカーが絶対売れると言ったけれど、やはり、売れ残ったので返す)
等と言う答えが返ってくる。現在の状況が、嘘のようである。
現在、どの小売業も「業務改革」、「業務の再構築」、「B・P・R」に取り組んでいるが、子会社等からの撤退、部署を廃部、新入社員の削減、高年齢者の早期退職勧奨等、人員削減、人件費削減と言ったことが中心で、実質的な「業務改革」自体は、はかどっていないのが現状である。
業務改革がはかどらない上に、現在の消費不況では、物が売れない、店頭の過剰在庫、利益の低下、資産の目減りと言う、八方塞りの状態に於いてはどうすることもできない。会社が、何も変わらなければ、最悪の状況が訪れることは間違いないだろう。
そこで、業務改革が先行している数社を参考しながら、マーチャンダイジング・サイクル(図表4 ─ 21、4 ─ 22参照)の変革方向の手順を挙げてみると、
① 意識改革(方針・考え方の意思統一)
・ 「お客の立場」で、考え、判断する(会社の立場は二の次)
・ リスクを安易なやり方で回避しない(他社に押し付けない)
・ 与えられた役割は責任を持って遂行する(当たり前のことを当たり前にする)
・ 行動は実行計画を立て、結果を検証する(プロセスも重要・失敗を次に生かす)
・ 地域(商圏)に密着した、品揃えをする(全国統一ではない)
② 業務改革(業務遂行上の矛盾・慣習等の問題点抽出と改善)…顧客と店の関係
・ 売上が伸びなくても、利益を上げる体質
・ 顧客ニーズの先取りではなく、追従して素早く対応
・ 商品経営(お客様中心・売れ筋、死に筋)
・ 業務分担(役割)の明確化(業務分析)
・ 情報の集中化と共有化
③ 組織改革(論理的業務の遂行、業務内容の見直し)…店と本部の関係
・ 業務内容の明確化(業務分析)
・ チーム、リスク、グループ、マーチャンダイジング(量から質へ)
・ 顧客ニーズの対応(情報源を幅広く求める…バイヤーはコーディネイター)
・ 商品経営の深耕(個店対応…スーパーバイザー機能の強化)
・ 単品管理の徹底(本部割付から店発注・販売、売れ筋・死に筋管理)
である。
しかし、意識、業務、組織を改革しても、基本は、顧客ニーズに対応した商品を「売る」のではなく、「売れる商品」を選択するのである。あるいは、開発し、販売すると言うことである。そして、それぞれの業務を牽制する仕組みを目指す必要がある。
ある特定の店舗や特定の部門の業績が悪いと、店舗の担当者がバイヤーに泣きついて数字(リベート等)を操作したり、売上を上げるために店舗で勝手に、安い商品を仕入れたり、決められた範囲外の値下げを行ないながら、管理資料等に計上している。また、月末の仕入を翌月に計上したり、棚卸の時には、シーズン終了後の売れ残り商品(翌年には売れない不良在庫)を正常在庫として処理し、粉飾利益を出す等、店舗、バイヤー間で馴れ合いの部分が多く残っている。
このように、店舗の数値を粉飾した場合、本部では、店舗の実態が見えないので、販売面でのサポート(不振店対策)ができない等の弊害が発生する。その後、実態が判明した時にはもう既に手が着けられず、スクラップ&ビルドもできない状態で放置され、全体の数値に影響を及ぼすようになってから始めて、対策が練られる。しかし、この段階ではほとんど手後れという状態になっている(ガンの発見とその処置と同様である)。
業績を粉飾する原因の一つが、馴れ合いである。そのため、I社グループでは、業績管理(店別部門別損益、部門別店別損益等の金額管理)のために、企画部所属でコントローラーと呼ばれる計数管理者が各部(店舗では、統括マネージャーが代行)に張りついて数値等を管理する制度が従前からあり、各部が相互監視(それ程大袈裟ではないにしても)できる体制を整えていたため、ある意味では不正防止(数値改ざん等)が図られていた。
ただし、このコントローラー制度には、各部部長をサポートする機能やシステム(仕組み)を円滑に運用する、あるいは、予算の作成、その他各種の問題を部門間で調整する役割を持っている。
この仕組みで、経営管理面(ダラー・コントロール)での運用は、効率的に行われていたが、問題は、単品管理面(ユニット・コントロール)にあった。
小売業の商品部組織及び役割を簡単に要約すると、ほとんどの企業が米国の小売業の影響を受けて、職務分担、職責名等も同様に使われている。基本的に商品政策、商品計画(開発)、仕入・納品、販売指導まで一貫して行う人をマーチャンダイザーと呼び、商品について最初から最後までマーチャンダイジング・サイクル全体の面倒をみている。
ただし、店舗への安定供給(配荷)管理を行っている人をディストリビュータと呼び、物流センターに常駐して、店別単品データを分析して、商品を店別に振り分けている。
日本の場合も基本的には、同様で、マーチャンダイザー(MD)、あるいは、バイヤー(BY)と呼んでいる。そして、店舗の発注数を管理し、店に商品を安定供給(ルーチンワーク)する役割を担っている人をディストリビュータ(DB)と呼び、本部、あるいは、地区別に配置され、本部集中管理でマーチャンダイジングを行っている。
商品が売れている時であれば、この組織において大した問題はなかったが、現在のように商品が売れない、利益が上がらない、しかも、急激な環境の変化が起こっている中では、数々の問題が発生している。
21世紀に入り、初めの10年が過ぎようとしていますが、新たの言葉としてファスト・ファションという言葉が生まれた、20世紀には、マクドナルドのハンバーガーをはじめとしたファスト・フードの対抗として衣料の分野に出てきた。
今や、ユニクロ、H&M、そしてフォエバー21と続々とファスト・ファション企業が名乗りをあげている、これらの企業の特長は、製造機能付き小売業である。
21世紀は、製造業と小売業がドッキングして、製造から販売迄、一貫した企業形態になるだろうし、業務改革の手順①まず、改善②そして、価値の追求③さらに、無駄や不要なものを省いた改革というステップになる。
つい数年前まで、「小売業は、簡単に儲かっていいですね」とか「小売業は、楽でいいですよね」等と言われ、「何故ですか」と聞き返すと、
① 売れている物を安く仕入れて、高く売れば良い
(客は、高ければ値打ちがあると思っているのだから)
② もし売れなければ、値下げして売れば、大半は売れる
(店は、もう、十分儲けているのだから、もっと安くしてよ)
③ 売れ残りは、メーカーに返品すれば良い
(メーカーが絶対売れると言ったけれど、やはり、売れ残ったので返す)
等と言う答えが返ってくる。現在の状況が、嘘のようである。
現在、どの小売業も「業務改革」、「業務の再構築」、「B・P・R」に取り組んでいるが、子会社等からの撤退、部署を廃部、新入社員の削減、高年齢者の早期退職勧奨等、人員削減、人件費削減と言ったことが中心で、実質的な「業務改革」自体は、はかどっていないのが現状である。
業務改革がはかどらない上に、現在の消費不況では、物が売れない、店頭の過剰在庫、利益の低下、資産の目減りと言う、八方塞りの状態に於いてはどうすることもできない。会社が、何も変わらなければ、最悪の状況が訪れることは間違いないだろう。
そこで、業務改革が先行している数社を参考しながら、マーチャンダイジング・サイクル(図表4 ─ 21、4 ─ 22参照)の変革方向の手順を挙げてみると、
① 意識改革(方針・考え方の意思統一)
・ 「お客の立場」で、考え、判断する(会社の立場は二の次)
・ リスクを安易なやり方で回避しない(他社に押し付けない)
・ 与えられた役割は責任を持って遂行する(当たり前のことを当たり前にする)
・ 行動は実行計画を立て、結果を検証する(プロセスも重要・失敗を次に生かす)
・ 地域(商圏)に密着した、品揃えをする(全国統一ではない)
② 業務改革(業務遂行上の矛盾・慣習等の問題点抽出と改善)…顧客と店の関係
・ 売上が伸びなくても、利益を上げる体質
・ 顧客ニーズの先取りではなく、追従して素早く対応
・ 商品経営(お客様中心・売れ筋、死に筋)
・ 業務分担(役割)の明確化(業務分析)
・ 情報の集中化と共有化
③ 組織改革(論理的業務の遂行、業務内容の見直し)…店と本部の関係
・ 業務内容の明確化(業務分析)
・ チーム、リスク、グループ、マーチャンダイジング(量から質へ)
・ 顧客ニーズの対応(情報源を幅広く求める…バイヤーはコーディネイター)
・ 商品経営の深耕(個店対応…スーパーバイザー機能の強化)
・ 単品管理の徹底(本部割付から店発注・販売、売れ筋・死に筋管理)
である。
しかし、意識、業務、組織を改革しても、基本は、顧客ニーズに対応した商品を「売る」のではなく、「売れる商品」を選択するのである。あるいは、開発し、販売すると言うことである。そして、それぞれの業務を牽制する仕組みを目指す必要がある。
ある特定の店舗や特定の部門の業績が悪いと、店舗の担当者がバイヤーに泣きついて数字(リベート等)を操作したり、売上を上げるために店舗で勝手に、安い商品を仕入れたり、決められた範囲外の値下げを行ないながら、管理資料等に計上している。また、月末の仕入を翌月に計上したり、棚卸の時には、シーズン終了後の売れ残り商品(翌年には売れない不良在庫)を正常在庫として処理し、粉飾利益を出す等、店舗、バイヤー間で馴れ合いの部分が多く残っている。
このように、店舗の数値を粉飾した場合、本部では、店舗の実態が見えないので、販売面でのサポート(不振店対策)ができない等の弊害が発生する。その後、実態が判明した時にはもう既に手が着けられず、スクラップ&ビルドもできない状態で放置され、全体の数値に影響を及ぼすようになってから始めて、対策が練られる。しかし、この段階ではほとんど手後れという状態になっている(ガンの発見とその処置と同様である)。
業績を粉飾する原因の一つが、馴れ合いである。そのため、I社グループでは、業績管理(店別部門別損益、部門別店別損益等の金額管理)のために、企画部所属でコントローラーと呼ばれる計数管理者が各部(店舗では、統括マネージャーが代行)に張りついて数値等を管理する制度が従前からあり、各部が相互監視(それ程大袈裟ではないにしても)できる体制を整えていたため、ある意味では不正防止(数値改ざん等)が図られていた。
ただし、このコントローラー制度には、各部部長をサポートする機能やシステム(仕組み)を円滑に運用する、あるいは、予算の作成、その他各種の問題を部門間で調整する役割を持っている。
この仕組みで、経営管理面(ダラー・コントロール)での運用は、効率的に行われていたが、問題は、単品管理面(ユニット・コントロール)にあった。
小売業の商品部組織及び役割を簡単に要約すると、ほとんどの企業が米国の小売業の影響を受けて、職務分担、職責名等も同様に使われている。基本的に商品政策、商品計画(開発)、仕入・納品、販売指導まで一貫して行う人をマーチャンダイザーと呼び、商品について最初から最後までマーチャンダイジング・サイクル全体の面倒をみている。
ただし、店舗への安定供給(配荷)管理を行っている人をディストリビュータと呼び、物流センターに常駐して、店別単品データを分析して、商品を店別に振り分けている。
日本の場合も基本的には、同様で、マーチャンダイザー(MD)、あるいは、バイヤー(BY)と呼んでいる。そして、店舗の発注数を管理し、店に商品を安定供給(ルーチンワーク)する役割を担っている人をディストリビュータ(DB)と呼び、本部、あるいは、地区別に配置され、本部集中管理でマーチャンダイジングを行っている。
商品が売れている時であれば、この組織において大した問題はなかったが、現在のように商品が売れない、利益が上がらない、しかも、急激な環境の変化が起こっている中では、数々の問題が発生している。
21世紀に入り、初めの10年が過ぎようとしていますが、新たの言葉としてファスト・ファションという言葉が生まれた、20世紀には、マクドナルドのハンバーガーをはじめとしたファスト・フードの対抗として衣料の分野に出てきた。
今や、ユニクロ、H&M、そしてフォエバー21と続々とファスト・ファション企業が名乗りをあげている、これらの企業の特長は、製造機能付き小売業である。
21世紀は、製造業と小売業がドッキングして、製造から販売迄、一貫した企業形態になるだろうし、業務改革の手順①まず、改善②そして、価値の追求③さらに、無駄や不要なものを省いた改革というステップになる。